はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 255 [花嫁の秘密]

エリックはいつになく機嫌のいいサミーを連れて早々と帰宅した。
セシルはまだ帰っていないようで、土産話をしたくてうずうずしているサミーは残念そうに自室へ戻って行った。

サミーがあそこまでカードゲームに強いとは思わなかった。いつだったか、前にハニーも含めて遊んだときは手加減をしていたに違いない。まったく。表情は顔に出さないし、おそらくあいつはカードを数えているか記憶している。本当にあそこで買収費用を調達しかねない。

プルートスの買収か。

悪くない、とエリックは思った。何も持たないサミーが、ようやく自分の物を手にする。

だが、プルートスは安くない。それがなんだ?サミーに居場所を与えられるなら、安いものだ。

とはいえ、それは今じゃない。目の前の問題が片付いたら、計画を進めることにしよう。もちろん褒美はたっぷりいただく。

エリックはひとり図書室へ向かった。そろそろ報告が来るはずだ。

暖炉の前の椅子に深く腰掛け、目を閉じる。四人目は姿を見せなかった。存在するのかさえ疑わしく思い始めたが、必ずもう一人いる。そう思ったきっかけは何だっただろうかと記憶を巡らす。知恵と金の両方を授け、あとの三人を思うように動かす。いや、デレク・ストーンはプライドが高く、指示されて動くなど冗談じゃないというタイプだ。動かされているとは思いもしないのだろう。

「いいタイミングだ。何かわかったか?」エリックは部屋の隅に気配を感じ、静かに問いかけた。

「ええ、メッセンジャーを捕まえて色々聞き出しましたよ」陰から姿を見せた男は、また別の陰に身を潜めた。手にはしっかりグラスが握られていた。中身は言わずもがな。

こいつのこういう遠慮のないところを気に入っている。

「それで?あいつはどこにメッセンジャーを送った?」

「ストーン邸からラッセルホテルへ」

ラッセルホテル?嫌な予感がする。メッセージを受けたストーン邸の誰かが――おそらくデレクがいつも使っている使い走りだろう――ホテルへ行けと指示を出したということか?

「もったいぶってないで続けろ」

「相手はジュリエット・オースティン。内容は――」

エリックは軽く手を上げ、男の言葉を遮った。「聞かなくてもわかる。明日のパーティーに招待したんだろう?」

「ご名答」

「ジュリエットはいつロンドンに出てきた?」サミーが田舎に戻っていると言っていたが、こっちで確認しておくべきだった。なぜジュリエットが田舎でおとなしくしていると思ったのだろう。サミーの動向は逐一チェックしているに違いないのに。

「昨日出て来たようです。ストーンも知らなかったようで、ごたついていましたね。結局ストーンはジュリエット・オースティンを田舎から引っ張ってこなくて済んで、ラッキーだったわけですが」

「お前も田舎まで行かなくて済んでよかったな」皮肉でも言わなきゃやってられるか。サミーになんて説明する?うまく対処するように助言をしてもいいが、おそらく反発して終わりだ。

「おかげさまで」そう言って男は、現れた時同様に静かに姿を消した。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。