はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 253 [花嫁の秘密]

サミーは客が行き来する様や、従業員が通用口を出入りする様子を通路に出て眺めていた。今夜は賭けもサイコロを振るゲームにも興味は引かれなかった。

「彼らは上へあがったようだね」デレクたちは中央の階段ではなく、入口にほど近い狭い階段を使って三階へ上がったようだ。ここは五階まであるが、最上階はオーナーの私室のあるフロアとなっている。

「お前を殺す作戦でも立てるんじゃないのか?」エリックには、こちらの心情に気を配るというものは存在しないようだ。けれど腹を立てても仕方がない。

「そんなのとっくに済んでいて、あとは実行するだけだろう」ふんと鼻を鳴らし、無遠慮な物言いをするエリックから離れ、ラウンジを見おろせる場所へ移動した。手すりに寄り掛かるようにして、下の様子をうかがう。

四人目の男はいったい誰なのだろう。そもそも今夜来ているとも限らないのに、ここにいる意味があるのだろうか。正体がわかったからといって、何ができるわけでもないのに。

結局エリックにいいように利用されるだけ。
サミーは溜息を吐き、手すりに背を預け上階に目をやるエリックに問いかけた。

「面倒だから、ここを買い取るっているのはどうだい?そうすればいちいちスパイを送り込むこともない。例えば、カウンターの彼。デレクと話した内容を後で君に教えに来るんだろう?」

「買収費用がどれだけかかるか、わかって言っているのか?」エリックは大袈裟に片眉をあげてみせた。どこか面白がっている口調だ。

当て推量だったけど、カウンターの彼のことは否定しないわけか。
エリックほど物知りではないが、情報は常に色々な場所から舞い込んでくる。クラブのオーナーは少し前に妻を娶った。妻は伯爵家の次女で持参金たっぷりとはいかないが美しく聡明で、夫がクラブの経営から手を引くことを望んでいる。理由は何なのだろうか?経営が思わしくないからか、表面化していないクラブの闇の部分を知っているからなのか。

「さあね」もしもに備えてバートランドに相談しておこうか。僕の銀行口座にいくらあるかなんてあいつしか知らないわけだし、資金集めが必要ならうまくアドバイスをしてくれるだろう。

「お前がここを欲しいって言うなら、協力してやってもいいぞ」エリックにからかいの調子は見えなかった。

僕が本気なら、きっとエリックは望みを叶えてくれる。僕はどのくらいここを欲しいと思っているだろうか?今思いついた考えだけど、そう悪くないと思い始めている。クリスにすべてを奪われた僕には何もない。それならクラブのひとつくらい持っていたってかまわないじゃないか。

けど、僕にここを経営していくような能力はないし、人を見る目があるのかもわからない。実際、こんなくだらない男に引っかかっている。

胡散臭いうえに嘘つきだ。けど、彼はアンジェラの兄で、僕が望むものを与えてくれる。望んでもいないものも与えると言うけど、あの言葉を鵜呑みにするほど愚かではない。

お前を愛してやれるのは俺だけだなんて、真顔で言う男を信用できるか?

自分の考えが矛盾していることは承知している。自分のエリックに対する感情が変化していっていることも。無視するはずだっただろうと、戒める声はだんだんと小さくなってどこかへ消えてしまった。

「それなら、カードルームにいるやつらから、たっぷりと巻き上げてやろう」サミーは手摺に手を滑らせ、エリックの熱っぽい視線から逃れるように、その場から離れた。

つづく


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