はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 261 [花嫁の秘密]

リード邸を出たエリックはステッキを手にのんびりと通りを歩いていた。

今日予定していた用事をすべてキャンセルして――サミーと参加するブライアークリフ卿のパーティーは別として――ひとつ別の用をねじ込んだ。

さて、彼は俺に会ってくれるだろうか?実のところ、よく知らない人物だ。世間一般の評判は知っているが、それ以上の事となると、どうでもいい情報しか得られていない。

車道を横切り、表通りから近道の為裏通りへと入る。足元がぬかるんでいたが気にせず突っ切った。広い通りへ出ると歩を緩め、脇道から出てきた男と肩を並べた。

「どうだった?」エリックは前を向いたまま問い掛けた。

「それが、とても忙しそうでした」

とても忙しそうだと?それで俺にどうしろと?

エリックは立ち止まり、先を行く男を睨みつけた。男は慌てた様子もなく立ち止まると、振り返って言った。

「ちゃんと話はつけてきましたよ。手土産に何か甘いものを持ってくるようにと言われました」

昨夜リード邸に来たときは顔を見ることはなかったが、相変わらず飄々とした様子で、黒い瞳はどこか面白がってさえいる。これではどちらが雇い主なのかわからない。

「クレイン、なぜ甘いものがいる?」エリックは再び歩き出し、苛々と尋ねた。クレインはたまに言葉遊びのようなことをする。暇な時なら付き合ってやるが、生憎今日は遊んでいる暇はない。

「まあ、食べたいからでしょうね」

「へぇー、それで?おすすめは何か聞いてきたのか?」

「もちろん。それが俺の仕事だ」

嫌味には嫌味で応酬か?

クレインがおすすめの菓子をあれこれ挙げている間に、テラスハウスの立ち並ぶ住宅街に入った。通りの中ほどまで来ると、数段の階段を軽やかに駆け上がり、ステッキの柄で玄関を叩いた。

すぐにドアが開き、大家が顔を見せた。大家と言っても家主は自分なので、彼は管理人なのだが、ホテルで働いていただけあって、歳はとっているが背筋はピンと伸び身なりは完璧だ。独身男性向けの住まいのコンシェルジュとしては最適な人物だ。

「これは、エリック様。おかえりなさいませ」

言葉ほどは驚いてはなさそうだ。きっと今日あたり顔を出すと踏んでいたのだろう。それとも待っていたのは毎年恒例のクリスマスプレゼントだろうか?もうそろそろ届いてもいい頃だ。

「やあ、タナー。元気だったかい?」

「おかげさまで、元気にしております。お茶をお持ちしますか?」後ろのクレインを見て言う。

「いや、すぐに出かけるからいい。ああ、そうだ。あとでブーツを磨いておいてくれるかな?」エリックは泥汚れのついたブーツをタナーに見せながら、申し訳なさそうに肩をすくめた。

「お急ぎですか?」タナーは気遣わしげに眉根を寄せた。

「いや、別のを履いて行くから、こいつは時間のある時でいい」

「承知いたしました。ああ、それから、留守の間に届いたお手紙は机の上に置いております」

エリックは礼を言う代わりに手を上げ、階段をのぼって自分の部屋へ入った。部屋は整然としていて、タナーが留守の間しっかりと管理してくれていたことがうかがえる。書き物机の上の手紙を一瞥して、ひとまずコートを脱いだ。

「何か動きはあったか?」

「ジュリエット・オースティンのことでしたら特には。彼には伝えたんですか?」

なぜこいつがサミーのことを気にする?

「いや」エリックは不機嫌に答えた。言ったところで何か解決策があるわけでもないし、となると勝手にこっちで対策を立てるしかない。あの女をサミーに近寄らせたくないが、計画を進めるためにはある程度は仕方ない。ほんの数時間だ。我慢できないことはないだろう。

「追い払えと言うなら、すぐにでもそうしますが」

エリックは警告を込めてクレインを睨みつけた。余計なことはしないとわかってはいるが、クレインは独断で動くことも少なくない。

「危険がないように努めてくれればそれでいい」

何よりまずは買出しだ。

つづく


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