はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 263 [花嫁の秘密]
「パーシーに会いに来たの?」
バーンズ邸には時間ぴったりに到着した。やたら背筋の伸びた執事がクロフト卿を呼びに行っている間、ここ応接室で待つように言われたが、五分ほど経った頃、ふらふらと子供がやってきた。
茶色の長い髪を馬のしっぽのように束ねている。青いリボンが形よく結ばれていて、革紐で適当に縛っただけの自分とは違ってちゃんとした従僕がそばについているのだろう。客が来ると知っていたからか、クラヴァットも完璧なまでに仰々しく結ばれている。
これが例の子供か。エリックは目の前の子供の情報を素早く引き出した。コヒナタカナデ、十五歳、三年前よりバーンズが面倒を見ているが、素性がいまいちはっきりしない。というのも、調べようとしてもどこかで必ず情報が遮断される。
「彼は忙しいのかな?」エリックは当たり障りなく尋ねた。
「暇だと思う。いつもぷらぷらしてるから。ねえ、それなあに?」
自己紹介もまだだったが、手土産に興味を持ったようだ。「実はクロフト卿にお願いがあって、それでこれは賄賂なんだ。彼の好物って聞いたからね」エリックは秘密を打ち明けでもするかのように、ひそひそ声で言った。
「ちがうよ」
違う、だと?クレインのやつ、情報は正確にとあれほど――
「それ、ヒナの好物だよ。パーシーはプロフィトロールが好きなんだから」
「これが何かわかっているのか?」エリックは傍らに置いた紙袋を指さした。クロフト卿の好物はそもそもクレインのリストにはなかった。
「公爵のチョコでしょ。ヒナ知ってる」えへへと笑って、なぜか得意げだ。
公爵のチョコ?御用達ってことか?確かバーンズの父親はランドル公爵だったか。だとしたら当然口にしたこともあるのだろうが、バーンズと父親は不仲だと聞いている。関係が改善したという噂は、今のところ耳にしていない。
「そうか、それで、えーとヒナ、でいいのかな?ここで何をしているんだい?」
「お茶の時間だよ」ヒナはそう言って、ポケットから懐中時計を取り出しエリックに見せつけた。特に時間は確認しないようだ。
「ここで?」エリックは慎重に問い掛けた。もしここで茶を飲む気なら、クロフト卿との面会はどうなる?最初から俺なんかに会う気はないってことか?
自分の世間での評判はよく知っている。職業柄――表向きはっきりと何をしているのか公表したことはないのだが――こちらが会いたいと言っても拒まれることが多い。相手にやましいことがあるからだ。
ペンを握り相手をビビらすことは簡単だが、それは同時に自分の立場も危うくしている。だからこそ常に情報は正確でなければならないし、もし仮に嘘を吐くなら徹底的にだ。
「おやおや、ヒナったらこんなところにいたのかい?ジャスティンが探していたよ、図書室辺りで」優雅な足取りでクロフト卿が応接室へやってきた。
「え、ジュスが?」ヒナは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに思案顔になった。
「おやつを一緒に食べたいんじゃないかな?」と、クロフト卿。
「そうかも。じゃあ、またね。パーシー、チョコ残しておいてね」そう言ってヒナは風のように去って行った。
「さて、コートニー君が僕に何の用だい?」
つづく
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バーンズ邸には時間ぴったりに到着した。やたら背筋の伸びた執事がクロフト卿を呼びに行っている間、ここ応接室で待つように言われたが、五分ほど経った頃、ふらふらと子供がやってきた。
茶色の長い髪を馬のしっぽのように束ねている。青いリボンが形よく結ばれていて、革紐で適当に縛っただけの自分とは違ってちゃんとした従僕がそばについているのだろう。客が来ると知っていたからか、クラヴァットも完璧なまでに仰々しく結ばれている。
これが例の子供か。エリックは目の前の子供の情報を素早く引き出した。コヒナタカナデ、十五歳、三年前よりバーンズが面倒を見ているが、素性がいまいちはっきりしない。というのも、調べようとしてもどこかで必ず情報が遮断される。
「彼は忙しいのかな?」エリックは当たり障りなく尋ねた。
「暇だと思う。いつもぷらぷらしてるから。ねえ、それなあに?」
自己紹介もまだだったが、手土産に興味を持ったようだ。「実はクロフト卿にお願いがあって、それでこれは賄賂なんだ。彼の好物って聞いたからね」エリックは秘密を打ち明けでもするかのように、ひそひそ声で言った。
「ちがうよ」
違う、だと?クレインのやつ、情報は正確にとあれほど――
「それ、ヒナの好物だよ。パーシーはプロフィトロールが好きなんだから」
「これが何かわかっているのか?」エリックは傍らに置いた紙袋を指さした。クロフト卿の好物はそもそもクレインのリストにはなかった。
「公爵のチョコでしょ。ヒナ知ってる」えへへと笑って、なぜか得意げだ。
公爵のチョコ?御用達ってことか?確かバーンズの父親はランドル公爵だったか。だとしたら当然口にしたこともあるのだろうが、バーンズと父親は不仲だと聞いている。関係が改善したという噂は、今のところ耳にしていない。
「そうか、それで、えーとヒナ、でいいのかな?ここで何をしているんだい?」
「お茶の時間だよ」ヒナはそう言って、ポケットから懐中時計を取り出しエリックに見せつけた。特に時間は確認しないようだ。
「ここで?」エリックは慎重に問い掛けた。もしここで茶を飲む気なら、クロフト卿との面会はどうなる?最初から俺なんかに会う気はないってことか?
自分の世間での評判はよく知っている。職業柄――表向きはっきりと何をしているのか公表したことはないのだが――こちらが会いたいと言っても拒まれることが多い。相手にやましいことがあるからだ。
ペンを握り相手をビビらすことは簡単だが、それは同時に自分の立場も危うくしている。だからこそ常に情報は正確でなければならないし、もし仮に嘘を吐くなら徹底的にだ。
「おやおや、ヒナったらこんなところにいたのかい?ジャスティンが探していたよ、図書室辺りで」優雅な足取りでクロフト卿が応接室へやってきた。
「え、ジュスが?」ヒナは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに思案顔になった。
「おやつを一緒に食べたいんじゃないかな?」と、クロフト卿。
「そうかも。じゃあ、またね。パーシー、チョコ残しておいてね」そう言ってヒナは風のように去って行った。
「さて、コートニー君が僕に何の用だい?」
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