はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 262 [花嫁の秘密]

三〇分ほどして着替えを済ませたエリックは、クレインのリストを手にとりわけ高級な店の立ち並ぶ通りへ向かった。時期が時期だけに、予約をしておいたから心配ないとはいえ、早く行かなければ売り切れもあると言う。
クリスマスで世間が浮かれる中、なぜチョコレートショップへ行かなきゃならん。あの男がこんなもの欲しがっているとは思えない。

エリックは人混みをすり抜けるようにして通りを進み、目当ての店を見つけた時にはホッとせずにいられなかった。早く用を済ませて屋敷へ戻りたい。もちろんサミーのいる屋敷にだ。

ショーケースに宝石のようにずらりと並ぶチョコレートは美しく、あの男がこれを好む理由がわかった。とにかく洒落た男で美しいものが大好きなのは誰もが知るところ、けれども、男の趣味がいいとは言えない。なんだってあの男はあんなくだらないやつと付き合っていたんだろう。

「ひと粒味見をしていいか?」こういう場所では不適切かもしれないが、美味かったら何箱か屋敷に届けてもらおう。セシルは大喜びするだろうが、サミーはどうだろう。

「ええ、どうぞ」清潔なエプロン姿の売り子が、何粒か乗った陶器の器をエリックの前に差し出した。店主に特に確認しなかったところを見るに、この店の娘だろうか?気前がいいがこれも代金に入っているのだろう。

チョコレートが詰められた箱に赤と緑のリボンが芸術的に結ばれていくのを眺めながら、ひと粒口に放り込んだ。まずまずといったところか。これならサミーも喜ぶだろう。

店を出た時には約束の時間までわずかしかなかった。途中帽子屋の前を通りかかったとき、新しい帽子を注文し忘れていたことを思い出したが、頼み事をするのに遅れていては意味がない。帰りに帽子屋に寄ることを頭の片隅にメモし、道を急いだ。

そう言えば、クレインは正面と裏口とどっちに行けばいいと言っていた?正面は文字通り屋敷の正面玄関だが、屋敷はバーンズのもので彼は今居候だ。裏口とは、屋敷とは反対に入り口がある経営するクラブのことで、今は休業中だが、彼は共同経営者でこっちに行くのが正しいのか?

エリックは悩んだ末、屋敷の正面玄関に通じる通りを選んだ。なぜクロフト卿は自分の屋敷を出て、決して仲がいいとは言えないバーンズのところに居候なんかしているのだろう。借金があるとは聞いていないし、将来のことを考えればクラブの経営に携わる必要などない。

エリックは似たようなことをサミーに勧めようとしていることに気付き、思わず苦笑いした。

サミーに適当な住まいを与え、クラブを買い取り経営の指南をしようとしている。これを本気でやろうとするなら、今回の会見は有意義なものとなるだろう。そうでなければ、午前の予定をキャンセルした意味がない。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。