はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 259 [花嫁の秘密]
翌朝、エリックはサミーのベッドで目覚めた。前日はサミーが目覚める前に部屋を出たが、今朝はそうしなかった。サミーを腕に抱いて目覚めるのも悪くない考えだと思ったが、残念ながらサミーはもうベッドにいなかった。
昨夜のサミーはやけにおしゃべりで、たまに気もそぞろになっていたが、それでもいつもよりかは素直に抱かれた。告白が効いたのだろうか。それなら何よりだが、そう簡単な男ではないことはエリックがよく知っている。
部屋を出ると、ブラックが外で待っていた。
「何かあったのか?」問いながら自分の部屋へ戻る。
「例の屋敷ですが、貸し出されるそうです」
例の屋敷――サミーの住まいにどうかと思っていた屋敷だ。売りに出されていたがなかなか買い手がつかずにいた。それもそのはず。馬鹿高くて誰が買えるっていうんだ。売る気がないのではと思うほどだ。
「ワンシーズンの賃貸契約ってとこか?」
「そのようです。詳しい報告はまたあると思いますが、押さえておきますか?」ブラックは戸口に立ったまま、いつでも動ける態勢をとっている。こっちに来て着替えを手伝う気はないようだ。
「午前のうちに報告しろと伝えておけ。直接貸主に会いに行く」
クリスマスイヴか……。会えるだろうか?
朝食にありつくため食堂へ行くと、サミーは昨夜の乱れっぷりなど何もなかったかのようにつんと澄ましてココアを飲んでいた。部屋の入り口からはマグの中身は見えなかったが、それがココアだということは疑いようがなかった。セシルは目玉焼きに厚切りベーコンにバターたっぷりのトースト、野菜たっぷりのスープを目の前に並べてご満悦だ。
「リック、まだ寝てたの?」
「起きているからここにいる」そう言って、セシルの隣に座ると、従僕に同じものを頼んだ。とにかく腹が減っている。目の前の誰かさんのせいで。「サミー、朝食は済ませたのか?」まさかココアだけじゃないだろうな。
「いま、その最中なのが見えないのかな?」なんとも厭味ったらしい物言い。もう一度ベッドへ引きずり込んでやろうか?
「せめてトーストかパンケーキくらいは食べろ」
「そんなこと言ったって、サミーは朝が苦手なんだから仕方ないよ」セシルは大口を開けてトーストにかぶりついた。
「朝が苦手?いつからだ?」ハニーと早起きを競うようなやつが朝が弱いだと?
「食事の話で目覚めの話ではないと思うよ。昨日クラブで食べすぎたから、今朝はこれで十分」サミーは淡々と言い、朝から食欲旺盛なセシルににっこりと笑いかけた。
エリックはその瞬間弟の目を潰したくなった。代わりに目玉焼きにフォークを突き刺すだけにしておいたが、ただの当てつけだと頭では理解していても、サミーの貴重な笑顔が自分以外に向けられるのは許せない。狭量だと言われようが関係ない。
「ああ、僕も行けばよかった。ローストビーフがすごく美味しいんだって?」セシルは兄の気持ちなど微塵も気づかず無邪気なもので、何かを期待するような目をエリックに向けた。
「ローストビーフくらい、言えばここの料理人は作ってくれるだろう?なあ、プラット」エリックはなんとかイライラを抑え、部屋の隅に佇む執事に話を振った。
「ええ、もちろんでございます」プラットはそつなく答えた。
「でも、絶品だったって……」セシルが拗ねたように言う。
「今度連れて行ってやるから、今はそのベーコンでも食ってろ」そうでも言わないと、一日中ぶちぶち言われる羽目になる。食べ物の恨みは恐ろしい。
「あ、そうだ。ロジャー兄様から手紙が来てたよ。昨日向こうに届いてたみたい」
「ロジャーから?なんだって?」面倒なことでなければいいが。
「母様が来たってだけ。向こうは賑やかそうだけど、ハニーは寂しくないかな?」
「クリスがいれば別にそれでかまわないだろう。ゆっくり過ごせて結構なことだ」
サミーを見ると、昨日のカードゲームの時のような無表情さで、今朝届いたばかりの新聞に目を落としていた。まったく、なんてわかりやすいんだ。人妻が好きなら好きで勝手に想っておけばいい。
こいつはもう俺のものだ。
つづく
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昨夜のサミーはやけにおしゃべりで、たまに気もそぞろになっていたが、それでもいつもよりかは素直に抱かれた。告白が効いたのだろうか。それなら何よりだが、そう簡単な男ではないことはエリックがよく知っている。
部屋を出ると、ブラックが外で待っていた。
「何かあったのか?」問いながら自分の部屋へ戻る。
「例の屋敷ですが、貸し出されるそうです」
例の屋敷――サミーの住まいにどうかと思っていた屋敷だ。売りに出されていたがなかなか買い手がつかずにいた。それもそのはず。馬鹿高くて誰が買えるっていうんだ。売る気がないのではと思うほどだ。
「ワンシーズンの賃貸契約ってとこか?」
「そのようです。詳しい報告はまたあると思いますが、押さえておきますか?」ブラックは戸口に立ったまま、いつでも動ける態勢をとっている。こっちに来て着替えを手伝う気はないようだ。
「午前のうちに報告しろと伝えておけ。直接貸主に会いに行く」
クリスマスイヴか……。会えるだろうか?
朝食にありつくため食堂へ行くと、サミーは昨夜の乱れっぷりなど何もなかったかのようにつんと澄ましてココアを飲んでいた。部屋の入り口からはマグの中身は見えなかったが、それがココアだということは疑いようがなかった。セシルは目玉焼きに厚切りベーコンにバターたっぷりのトースト、野菜たっぷりのスープを目の前に並べてご満悦だ。
「リック、まだ寝てたの?」
「起きているからここにいる」そう言って、セシルの隣に座ると、従僕に同じものを頼んだ。とにかく腹が減っている。目の前の誰かさんのせいで。「サミー、朝食は済ませたのか?」まさかココアだけじゃないだろうな。
「いま、その最中なのが見えないのかな?」なんとも厭味ったらしい物言い。もう一度ベッドへ引きずり込んでやろうか?
「せめてトーストかパンケーキくらいは食べろ」
「そんなこと言ったって、サミーは朝が苦手なんだから仕方ないよ」セシルは大口を開けてトーストにかぶりついた。
「朝が苦手?いつからだ?」ハニーと早起きを競うようなやつが朝が弱いだと?
「食事の話で目覚めの話ではないと思うよ。昨日クラブで食べすぎたから、今朝はこれで十分」サミーは淡々と言い、朝から食欲旺盛なセシルににっこりと笑いかけた。
エリックはその瞬間弟の目を潰したくなった。代わりに目玉焼きにフォークを突き刺すだけにしておいたが、ただの当てつけだと頭では理解していても、サミーの貴重な笑顔が自分以外に向けられるのは許せない。狭量だと言われようが関係ない。
「ああ、僕も行けばよかった。ローストビーフがすごく美味しいんだって?」セシルは兄の気持ちなど微塵も気づかず無邪気なもので、何かを期待するような目をエリックに向けた。
「ローストビーフくらい、言えばここの料理人は作ってくれるだろう?なあ、プラット」エリックはなんとかイライラを抑え、部屋の隅に佇む執事に話を振った。
「ええ、もちろんでございます」プラットはそつなく答えた。
「でも、絶品だったって……」セシルが拗ねたように言う。
「今度連れて行ってやるから、今はそのベーコンでも食ってろ」そうでも言わないと、一日中ぶちぶち言われる羽目になる。食べ物の恨みは恐ろしい。
「あ、そうだ。ロジャー兄様から手紙が来てたよ。昨日向こうに届いてたみたい」
「ロジャーから?なんだって?」面倒なことでなければいいが。
「母様が来たってだけ。向こうは賑やかそうだけど、ハニーは寂しくないかな?」
「クリスがいれば別にそれでかまわないだろう。ゆっくり過ごせて結構なことだ」
サミーを見ると、昨日のカードゲームの時のような無表情さで、今朝届いたばかりの新聞に目を落としていた。まったく、なんてわかりやすいんだ。人妻が好きなら好きで勝手に想っておけばいい。
こいつはもう俺のものだ。
つづく
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