はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 267 [花嫁の秘密]

クラブの再開は年明けか。あと一週間ほどで退屈を極めている面々が集うわけだ。

「それで、なぜあの屋敷を手に入れようと?あなたはこの界隈にいくつか住まいをお持ちでしょう?」陰気な顔の男が出て行くなり、ジェームズが口火を切った。

すでにこちらの事は調査済みってことか。エリックは感心せずにはいられなかった。いくつかの住まいのうち公にしている――特に隠していないと言う意味だ――のは二つ、きっとこの男は残りの隠れ家も把握しているのだろう。いったいどんな調査員を雇っているのだろうか。

エリックはコーヒーカップに手を伸ばし、ゆったりとした仕草で口に運んだ。うむ、なかなかいける。

「売りに出ていたからとしか言いようがないな」いったいどんな説明を求めている?こちらの素性は把握しているのだろう?

「そうですか、うまく話がまとまればよいのですが」

敵意を見え隠れさせているジェームズは、これ以上追及するのはやめたようだ。ほっそりとした指先で上品にティーカップの持ち手をつまみあげ、形のいい口元に持っていく。すべてが洗練されていて、ジェームズがどのように育ってきたのかがうかがえた。いつでも自分を律することを優先して、感情をあらわにして無茶な行動を取ることはないのだろう。

だが俺は我慢強く自分を律するなんて御免だ。身分はさておき――誇れるほどでもないので――ジェームズより歳は四つも上だ。多少尊大な態度に出ても、今後に影響することはないだろう。

「ところで、クラブの会員には誰の推薦があればなれるんだ?」コーヒーの横に添えられていた小さな焼き菓子をぽいっと口に投げ込んだ。ジンジャーか。これだとコーヒーより紅茶の方が合うな。

「うちのですか?」ジェームズは目を丸くして心底驚いた顔をした。なかなかお目にかかれない表情だ。

「ああ、君が経営するクラブがスティーニークラブ以外にあるなら別だが」エリックは慇懃に応じた。

「これまででしたら、既存の会員の推薦があれば調査してオーナーが入会を許可するかどうか決めていましたが――」ジェームズは返答に窮して口を閉じてしまった。素早く考えを巡らせているようだが、何と答えるのが正解なのか見極められずにいるのだろう。

「今のオーナーは君だ」決定権がジェームズにあるのかは不明だが。「それに会員の選別も行っていると耳にした。そこに俺が入る余地はあるのか確認しておきたい」

「資産状況などいろいろ調べることになるとは思いますが、その辺はクリアされるでしょう。けれど、あなたの仕事ぶりを見るに安易に許可をすることはできないと思います。それにクラブの趣旨にあなたが賛同されるとは思えませんが」

クラブの趣旨ね。俺が知らないと思って言っているのか、それともすべて承知だと理解して言っているのか、どちらだろうか。
このクラブの面白いところは、会員以外のほとんどが普通の何の変哲もないクラブだと思っているところだ。多少の乱痴気騒ぎなどどこのクラブでもよくあることで、ついこの前も娼婦を大勢招き入れてバカ騒ぎをしたところだ。いったいなんだって、色々な意味で男だけの紳士クラブであんなことをしたのか、無事入会出来たら聞いてみたいものだ。

「案外見る目がないんだな。あと、職業で差別しないでもらいたいね」

「以前うちのクラブにした仕打ちを忘れたとは言わせませんよ」ジェームズは片眉を吊り上げた。

「ちょっとゴシップ記事を載せただけだろう?」別に秘密に触れたわけではないし、ほんの少し世間から叩かれただけで、一番被害を被ったのはバーンズの兄でジェームズに文句を言われる筋合いはない。

「本気で入会を希望するなら審査はしましょう。それと、クロフト卿の屋敷を手に入れたいのなら、あの方と話をしても無駄でしょうね」

それだけは言われなくてもわかっている。でも、とてもいいアドバイスをもらったので、今日の所は引き上げることにしよう。

つづく


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