はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 254 [花嫁の秘密]
シリル・フロウは戦々恐々としていた。
正直なところ、エリック・コートニーは苦手だ。直接面識はないが、こちらと同じで狙った獲物は逃がさない男だ。以前彼の妹――ほんの小さな子供だが侯爵夫人だ――を公の場で侮辱したご婦人方は社交界からそっぽを向かれ、退場を余儀なくされた。
たかがゴシップ紙のくだらないコラムのせいでだ。筆者は匿名だったが、あれをコートニーが書いたのは間違いない。界隈の知人に聞いたのだから、疑いようのない事実だ。
しかし、怖がったところでどうしようもない。コートニーとリードが繋がっているのは一年前からわかっていたことなのに、今回の賭けを避けなかった。もう賭けは進行中で、今更デレクは引かないだろう。ホワイトもそうだ。
ちょっとしたことで人が落ちていく様を見るのは痛快だが、今回ばかりはそうも言っていられない。油断すると、自分が落ちてしまうかもしれないからだ。
「それで、どう動く?」シリルはデレクに問いかけた。遊びを中断してまでわざわざ個室へあがってきたのだから、何か面白い計画を思いついたのだろう。
「メッセンジャーを出した」デレクは二人の想像力を試すように、シリルとホワイトを見た。
「どこへ?」ホワイトが尋ねる。もう少し考えて言葉を口にできないものかと思うが、ホワイトはこういう男だ。自分の容姿にしか空っぽの頭を動かさない。
学生時代からの長い付き合いでなければ、こうやって一緒に酒を飲むこともなければ、いかに人を不幸にできるかで知恵を絞りあったりはしないだろう。
「それは明日のパーティーに関係があるのか?」シリルが尋ねると、ホワイトが悔しそうな眼を向けてきた。明日は家族の集まりだかでデレクの親父が主催するパーティーに参加できないため、数日前からずっと文句を垂れている。
逆らえないのは父親が財布の紐を握っているからで、大抵の事には目を瞑ってくれるが、家族の集まりを拒否すれば話は変わってくるだろう。ホワイトの親父は何より家族の結束を重んじている。
「ああ、そうだ」デレクはにやりと笑って、お気に入りのウィスキーを口に運んだ。
シリルも同じようにグラスを口につけ、つと、閉じられたドアに目を向けた。誰か来たようだ。一瞬にしてピリッとした空気が流れる。
声をかけてきたのはクラブの従業員で、デレクに急ぎの伝言だと言う。戸口で二人のやり取りを見ながら面倒なことが起きてなきゃいいがと思っていたが、その逆だった。デレクは再度普段使っているメッセンジャーへの指示を言付け、満足げに元のソファに腰をおろし言った。
「どうやら、俺たちはツキに恵まれているようだ」
そう。俺たちはとことんツイている。だから賭け事はやめられないのだ。
つづく
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正直なところ、エリック・コートニーは苦手だ。直接面識はないが、こちらと同じで狙った獲物は逃がさない男だ。以前彼の妹――ほんの小さな子供だが侯爵夫人だ――を公の場で侮辱したご婦人方は社交界からそっぽを向かれ、退場を余儀なくされた。
たかがゴシップ紙のくだらないコラムのせいでだ。筆者は匿名だったが、あれをコートニーが書いたのは間違いない。界隈の知人に聞いたのだから、疑いようのない事実だ。
しかし、怖がったところでどうしようもない。コートニーとリードが繋がっているのは一年前からわかっていたことなのに、今回の賭けを避けなかった。もう賭けは進行中で、今更デレクは引かないだろう。ホワイトもそうだ。
ちょっとしたことで人が落ちていく様を見るのは痛快だが、今回ばかりはそうも言っていられない。油断すると、自分が落ちてしまうかもしれないからだ。
「それで、どう動く?」シリルはデレクに問いかけた。遊びを中断してまでわざわざ個室へあがってきたのだから、何か面白い計画を思いついたのだろう。
「メッセンジャーを出した」デレクは二人の想像力を試すように、シリルとホワイトを見た。
「どこへ?」ホワイトが尋ねる。もう少し考えて言葉を口にできないものかと思うが、ホワイトはこういう男だ。自分の容姿にしか空っぽの頭を動かさない。
学生時代からの長い付き合いでなければ、こうやって一緒に酒を飲むこともなければ、いかに人を不幸にできるかで知恵を絞りあったりはしないだろう。
「それは明日のパーティーに関係があるのか?」シリルが尋ねると、ホワイトが悔しそうな眼を向けてきた。明日は家族の集まりだかでデレクの親父が主催するパーティーに参加できないため、数日前からずっと文句を垂れている。
逆らえないのは父親が財布の紐を握っているからで、大抵の事には目を瞑ってくれるが、家族の集まりを拒否すれば話は変わってくるだろう。ホワイトの親父は何より家族の結束を重んじている。
「ああ、そうだ」デレクはにやりと笑って、お気に入りのウィスキーを口に運んだ。
シリルも同じようにグラスを口につけ、つと、閉じられたドアに目を向けた。誰か来たようだ。一瞬にしてピリッとした空気が流れる。
声をかけてきたのはクラブの従業員で、デレクに急ぎの伝言だと言う。戸口で二人のやり取りを見ながら面倒なことが起きてなきゃいいがと思っていたが、その逆だった。デレクは再度普段使っているメッセンジャーへの指示を言付け、満足げに元のソファに腰をおろし言った。
「どうやら、俺たちはツキに恵まれているようだ」
そう。俺たちはとことんツイている。だから賭け事はやめられないのだ。
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