はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 347 [花嫁の秘密]

「とにかく、カインのことを僕に言うのはやめてくれ。気に入らなければクビにすることはできるけど、勝手には動かせない」サミーはこの話をこれ以上するつもりなら、今後一切君とは話をしないと言外に匂わせていた。

さすがのエリックも口を閉じた。
ここにあるものすべてお前のものだろうと言ってもよかったが、この状況では火に油を注ぐだけだ。

カインのことは気に入るも入らないもないと思っていたが、読みを誤ったようだ。こっちで手を回して秘かにことを進めることにしよう。クリスには許可を得るとして、今後の動きも把握しなきゃならんし、例の箱の調査状況についての報告も兼ねて手紙を出すか。

「それで、そこの空白は?」エリックはサミーの走り書きを見ながら尋ねた。

「報酬額はブラックに記入させようかと。君は彼にいくら支払っているのか言わないだろう?」

「相場くらいわかるだろう?」言ってもいいが、こっちの手の内をあまり明かしたくないのが正直なところだ。

「使用人の相場ということならね。たぶんうちの使用人は他所よりも多めに貰ってはいるだろうけど、君の言うところの調査員を雇うのは初めてだからよくわからない。ブラックも僕が支払えない額を記入しないだろうし、僕が納得しなければ契約は結ばないという選択もある」

「ブラックもその辺は弁えているだろう」まったく。サミーはブラックを信用しすぎだ。あいつが吹っ掛けないとも限らないのに。あとでブラックに釘を刺しておくか。

「彼はどこまで僕の言うことを聞いてくれるんだろう。彼は前は何をしていたんだ?」

「そういうことは本人に聞け」

「どうせ調べればわかることなんだから、いま教えてくれてもいいだろう?」

「育ちは悪くない。経歴は、まあ色々だ。忠告しておくが、こういうのはあまり探ったりするもんじゃない。もしどうしても知りたければ契約の項目にでも入れておくんだな」

サミーは一瞬不満そうな顔をしたが、すぐに納得したようでひと息吐こうとようやくペンを置いた。軽く腕を伸ばし、ティーカップを手に取る。

「新しいのを持ってきてもらうか?」エリックは自分のカップを覗き込み尋ねた。

「君が欲しいなら頼んだら?」素っ気なく言って、冷めた紅茶に口を付ける。

俺がいま欲しいのはお前だと言ったら、またカッカするのだろうか。素直になったかと思えば、次の瞬間には冬の湖に吹く風のように冷え冷えとした態度だ。フェルリッジのあの湖はサミーの散歩コースではないだろうが、あそこには近づかないように忠告しておこう。

「そうだな。あとでブラックが出しそうな条件をその紙に書いてやるから、お前も付き合え」

「僕はもうずっと君に付き合っているけど」呆れているのか鬱陶しがっているのか、頬杖をついて手元に置いていたベルを鳴らした。

ほんと素直じゃないが、サミーに振り回されるのは承知の上だ。

つづく


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