はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 332 [花嫁の秘密]

サミーに全面的に頼られるのも悪くない。悪くないどころか、とても気分がいい。ついさっきまでひどく腹を立てていたと思ったのに、子供でも飲める程度の酒ですっかりおとなしくなるのだからかわいいものだ。

エリックはグラスをテーブルに戻し、サミーと同じように紅茶を飲むことにした。本当は濃い目のコーヒーと行きたいところだが、これ以上プラットの手を煩わせることもない。あと数時間、夕食まではサミーとゆっくり過ごしたい。さすがにもうこの数時間で問題が起きることはないだろう。

「なあエリック。ブラックを僕にくれないか?」

何の脈絡もなく発せられた言葉に、エリックは固まった。いま何を考えていたのかさえ忘れてしまうほど、強烈なひと言だ。

「なんだって?」とりあえず、訊き返した。

サミーは横目でじろりと睨み、どうしようもないなとばかりに溜息を吐いた。「酔ったのか?」

酔ったのか?まさかサミーにそんなことを言われる羽目になるとは。

「酔ってはいない。お前の言葉の意味が分からなかっただけだ」

「意味が分からない?僕はそんなに難しいことを言ったつもりはないけど」サミーは気だるげにソファの背に寄りかかり、手元のクッションを胸に抱いた。

「どういうつもりかは知らないが、あいつじゃお前を満足させられないぞ」ブラックとサミー?笑わせるな。

「そうかな」サミーはゆっくりと首を傾げた。

そうかな?「俺をからかって遊んでいるんだったら、いますぐやめておいた方がいいぞ」エリックはうなり声を漏らした。

サミーは凍えそうなほど冷ややかな視線をエリックに向けた。「君が何を勘違いしているのか考えたくもないけど、ブラックが頼んだ仕事をきちんとやり遂げたら、引き続き雇いたいと思っただけだ」

「お前が頼んだことなんかしれてるだろう?ブラックがやり損うわけない」サミーの依頼が何であれ、ブラックが出来もしないことを引き受けるはずがない。

「反対なのか?貴重な人材を僕にやるのは惜しい?」それまで強気だったサミーの口調が、途端に自信なさそうなものに変わった。断られるとは全く思っていないのだろう。なんて男だ。

「そうは言っていない」ブラックなら安心してサミーを任せられる。問題はない。だが、まさかサミーの方からブラックをそばに置きたいと言い出すとは予想外だ。

「けど、ブラックが引き受けてくれるとは限らない。だから君が説得してくれると助かるんだけど」

「説得なんかしなくてもブラックは引き受けるだろうよ」なぜそう思うのか考えたら嫉妬のような醜い感情が胸の内に湧きあがり収拾がつかなくなるので、深く考えたくはない。

ブラックにはサミーの近侍という名の監視を任せたが、役目を十分に果たしていたかといえば疑問が残る。俺はサミーに危険が及ばないように見張らせていたのに、ジュリエットに手紙を出すのを手伝い、あげくカウントダウンイベントに行かなきゃならなくなった。

つまりブラックは俺よりもサミーに従ったということだ。もちろんあいつなりに危険はないと判断したからだと思いたいが、今回サミーの仕事を金で引き受けたのも、もしかするとこれから先を見据えてのことかもしれない。

何にせよ、サミーには従者が必要だ。それはブラックを置いて他にはいないだろう。

つづく


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