はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 329 [花嫁の秘密]

いま僕はどんな顔をしているのだろう。

顔から血の気が失せているのを感じていたが、下手な動きを見せればエリックに追及されてしまう。もちろん黙っているのは無理だと最初から分かっていた。けど、もう少し待てなかったのか?僕が喋りたくなるタイミングまで。

エリックはなぜ何でも知りたがるのだろうか。どうせもう知っているくせに、なぜ僕にわざわざ尋ねる?

サミーはゆっくりと息を吐き出した。弱さは見せたくない。

「ここへ来た理由はわからない。会っていないからな」それ以上言うべき言葉はない。

「対応したのはプラットか?」エリックは何も聞き逃すものかといった鋭い目つきで睨んでくる。かろうじて、なぜ会わなかったと訊かないだけの良識はあったか。

「プラット以外に対応できる者はいないよ」主人が不在のこの屋敷には、最低限の使用人しか置いていない。僕もエリックも従者を必要としないので余計に少ない。

「ウェストはプラットに何か言伝なかったのか?」エリックは早口に尋ね、食べかけの皿を脇へ押しやった。

「何も。不在だと言ったら黙って引き下がった。こういう場合、ジュリエットのように金の無心に来たと思うのが普通だと思うけど、となるとまた来るかもしれないね」何もわからない状況で考えられるのは、そのくらいしかない。

「金がらみはいい線だな。けどどこでお前がここにいると知ったんだ」

この疑り深い目つき。エリックはもしかして僕と彼が通じていると思っているのか?

「さあね。でも屋敷は開いているわけだし、クリスか僕がいると思ってもおかしくはないんじゃないのか」

「クリスがいたらあいつはここへ来ていない」エリックは怒気を含ませ断言した。

「マーカスのことをよく知っているような口ぶりだな」訊くまでもないが、訊かずにはいられない。「調べたのか?」声が怒りに震えた。

エリックが調べたのはマーカスか、僕か。答えは明白。デレクとのことは調べてもわからなかったと言っていたくらいだから、僕の周辺を徹底的に調べたのだろう。

「お前の家庭教師だった。そしてやめた後、色々な屋敷を渡り歩いている」エリックは淡々と言って、水差しを手に取りグラスを満たした。ひと息に飲み干し、深く息を吐く。「少し前まではオールドブリッジにいたはずだ」

過去も現在も知っているわけか。マーカスのことを知りたかったら、エリックに訊くのが手っ取り早いようだ。少し前までの僕なら、もっと詳しく話せとエリックをせっついていただろう。当時はどんな気持ちだったのか、いったい何があって僕を置き去りにしたのか、知りたいことは山ほどある。

でもこれまでマーカスを探し出してまで会いたいと思ったことはないし、実際彼がフェルリッジを去ってからは一度見かけたことがあるだけだ。

だが状況が変わったいま、彼の素性を詳しく知っておくべきだろう。

つづく


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