はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 333 [花嫁の秘密]
「こんな雨の中どうしたんです?」路地裏のパブのカウンターで一人飲んでいたクレインは、隣に雇い主が座ったのを気配で感じ囁くように言った。
今夜はもう仕事は終わりだと思っていたが、そう甘くはなかったか。
「ひとつ問題が起きた」
やれやれ、この数日問題だらけだ。これ以上何が起こるっていうんだ?
「デレク・ストーンの事でしたら対処中です」クレインは先んじて答えると、カウンターの向こうの給仕にエールのお代わりを頼んで、エリックを横目で確かめた。「髪、どうしたんです?」
「邪魔になったから切っただけだ」外套を羽織ったままのエリックは素っ気なく答え、ジンのソーダ割を注文した。
もう何年も同じ髪型で、いまさら邪魔になったと?どうせサミュエル・リードに何か言われたんだろう。
「寒い時期に切ると風邪を引きますよ」ふいに給仕の手が割って入り、ジョッキを目の前に、最初に頼んでおいた熱々のチーズグラタンを二人の間に置いた。フォークを二本適当に転がし、流れるように次のテーブルへ行ってしまった。常連というほどではないが、連れだということは覚えていたようだ。
「しばらくは風邪も引いていられないほど忙しい」エリックはカウンターの向こうからグラスを受け取ると、ひと口飲んで溜息を吐いた。横顔はいつも以上に険しい。
「それで、何があったんです?」尋ねながらチーズグラタンを口に運ぶ。火傷しそうだが熱々を食べなきゃ意味がない。
「俺が留守にしていた間にサミーの昔馴染みが顔を見せた。マーカス・ウェスト、前に調べてもらったことがあるだろう」
マーカス・ウェスト?ああ、あの男か。レスター卿の五番目の息子で、いまは何をしているんだったか……。確か少し前まではオールドブリッジにいたはずだが、そいつがなぜいまさらリードの前に?
「何か要求を?」まさか金ということはないだろうし、目的はかつての教え子本人か。
「いや、何もわからない。サミーは会っていないし、あの男は伝言すら残していない。おそらくサミー以外には話したくない内容だろうな」エリックはグラスを半分ほど一気に空けると、手元から離れた場所へ押しやった。かなり苛立っているようだ。
「軽く一〇年は会っていないのに、いったい何の用で彼の前に?まさか例の賭けと関係があるとか?」デレク・ストーンの少々行き過ぎたお遊びを、見えない場所から操っているのがウェストだったりするのだろうか。
「それは俺も考えたが、デレクたちとウェストとの間に繋がりがあるとは思えない。どちらかといえば、ジュリエットとの結婚の噂を聞いて訪ねてきたという方がしっくりくる」
目当てはあくまでリードってことか。「それで俺に何を調べて欲しいんです?」
「いや、今回は自分で調べる。レスター卿はまだ生きていたよな」
わざわざ確認するということは、直接乗り込む気かもしれない。あまりいい考えとは思えないが、口を出すほどでもないのでやめておいた。問題が山積の状態で、余計なことは口にするものではない。
「まあ、高齢ですがしばらくは大丈夫でしょうね。お気に入りとは言えない息子の帰宅を喜んでいるのかどうかはわかりませんが」
なかなか面白い案件だと思ったが、手出しは無用って訳か。残念だ。
つづく
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今夜はもう仕事は終わりだと思っていたが、そう甘くはなかったか。
「ひとつ問題が起きた」
やれやれ、この数日問題だらけだ。これ以上何が起こるっていうんだ?
「デレク・ストーンの事でしたら対処中です」クレインは先んじて答えると、カウンターの向こうの給仕にエールのお代わりを頼んで、エリックを横目で確かめた。「髪、どうしたんです?」
「邪魔になったから切っただけだ」外套を羽織ったままのエリックは素っ気なく答え、ジンのソーダ割を注文した。
もう何年も同じ髪型で、いまさら邪魔になったと?どうせサミュエル・リードに何か言われたんだろう。
「寒い時期に切ると風邪を引きますよ」ふいに給仕の手が割って入り、ジョッキを目の前に、最初に頼んでおいた熱々のチーズグラタンを二人の間に置いた。フォークを二本適当に転がし、流れるように次のテーブルへ行ってしまった。常連というほどではないが、連れだということは覚えていたようだ。
「しばらくは風邪も引いていられないほど忙しい」エリックはカウンターの向こうからグラスを受け取ると、ひと口飲んで溜息を吐いた。横顔はいつも以上に険しい。
「それで、何があったんです?」尋ねながらチーズグラタンを口に運ぶ。火傷しそうだが熱々を食べなきゃ意味がない。
「俺が留守にしていた間にサミーの昔馴染みが顔を見せた。マーカス・ウェスト、前に調べてもらったことがあるだろう」
マーカス・ウェスト?ああ、あの男か。レスター卿の五番目の息子で、いまは何をしているんだったか……。確か少し前まではオールドブリッジにいたはずだが、そいつがなぜいまさらリードの前に?
「何か要求を?」まさか金ということはないだろうし、目的はかつての教え子本人か。
「いや、何もわからない。サミーは会っていないし、あの男は伝言すら残していない。おそらくサミー以外には話したくない内容だろうな」エリックはグラスを半分ほど一気に空けると、手元から離れた場所へ押しやった。かなり苛立っているようだ。
「軽く一〇年は会っていないのに、いったい何の用で彼の前に?まさか例の賭けと関係があるとか?」デレク・ストーンの少々行き過ぎたお遊びを、見えない場所から操っているのがウェストだったりするのだろうか。
「それは俺も考えたが、デレクたちとウェストとの間に繋がりがあるとは思えない。どちらかといえば、ジュリエットとの結婚の噂を聞いて訪ねてきたという方がしっくりくる」
目当てはあくまでリードってことか。「それで俺に何を調べて欲しいんです?」
「いや、今回は自分で調べる。レスター卿はまだ生きていたよな」
わざわざ確認するということは、直接乗り込む気かもしれない。あまりいい考えとは思えないが、口を出すほどでもないのでやめておいた。問題が山積の状態で、余計なことは口にするものではない。
「まあ、高齢ですがしばらくは大丈夫でしょうね。お気に入りとは言えない息子の帰宅を喜んでいるのかどうかはわかりませんが」
なかなか面白い案件だと思ったが、手出しは無用って訳か。残念だ。
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