はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 343 [花嫁の秘密]
あからさまに喜ぶサミーの顔を見て、一緒に喜べるかといえば嘘になる。気に入らないわけではないが、まだハニーに負けていると思うと途端に自信がなくなる。これほど想って尽くしてもまだ足りないというわけだ。
「エリック、今日の予定は?」サミーは手紙を丁寧に封筒に仕舞うと、膝に置いた。大切そうに手の中で指を滑らせている。
「このあと少し出てくる。夕方までには戻るが、何かあるのか?」予定を尋ねたからには何かあるのだろう。ブラックのことか、それともカインのことをもう耳にしただろうか。
「僕も少し出てこようと思う。さすがに<デュ・メテル>は開いていないだろうから、百貨店に行ってくるよ」
手紙の礼にハニーに贈るつもりか。ったく。俺にもこのくらい尽くしてくれないものかね。「様子を見て来てやろうか?店は閉まっているかもしれないが、商品はあるだろう?」
「いや、あの辺もぶらつくからついでに覗いてみるよ。もしも君がかわいい妹のためにチョコレートを見繕いたいというなら、邪魔はしないよ」サミーは揶揄うような笑いをこぼした。
「かわいい妹であり、弟でもある。いつもこっちが優位にいるように見えるだろうが、これでなかなか扱いは大変なんだ。クリスが引き受けてくれて助かったよ」最後の一言は余計だと思ったが、言わずにはいられなかった。別に嘘ではない。いつもそう思っているし、そのおかげでいまがある。
サミーは納得するように頷いたが、顔は一瞬にして陰った。
「朝食は?ここに持ってこさせるか?」エリックは話題を変えた。
「いや、外で適当に食べるよ。今夜のことを思えば、早めに行動しておいた方がいいだろう?」
「別に今夜何があるわけでもない。ただ花火を見て、帰るだけだ」
そのためにわざわざメリッサを呼び寄せた。おそらくジュリエットは苛々して早く帰りたがるだろう。直前のディナーで有意義な時間を過ごせたとしたら余計に。
「人が多いからそんなに簡単な話じゃないだろう?」サミーは混雑する通りを想像してか苦い顔をした。普段一人で過ごしているサミーにとっては、苦痛でしかないだろう。
確かに、人込みから抜け出すだけでも時間は相当かかる。だが計画を練り直したいま、サミーがジュリエットに深くかかわる必要はない。途中で帰ったって別にかまわない。まあ、次の計画は伝えてないし、伝えていたとしてもサミーが言うことを聞くはずもないが。
「昼寝でもして体力を温存しておくんだな」エリックはサミーの手元を見ないように努めた。胸がむかむかして仕方がない。
「僕を馬鹿にしているのか?」サミーは不満そうに言葉を吐いた。
「いいや、心配しているだけだ。田舎の祭りとはわけが違うんだ。人込みに紛れて悪さをするやつもいる。集まるのは上品な連中ばっかりじゃないからな」まるでハニーに言い聞かせているみたいだ。いまこっちにいなくて、本当によかった。たとえクリスがいたとしても、さすがに二人は面倒見切れない。
「どうだかね」サミーは冷ややかな視線をこちらに向けたかと思うと、手紙を手に立ち上がった。「着替えて出掛けるよ」言うだけ言って、さっさと背を向けるとぐずぐずせず部屋から出て行った。
いったい何が気に入らないんだか。まあいい。こっちもぐずぐずせずに行動だ。まずはコートニー邸を開ける手はずを整えに行って、チョコレート屋の様子を見に行くとしよう。
つづく
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「エリック、今日の予定は?」サミーは手紙を丁寧に封筒に仕舞うと、膝に置いた。大切そうに手の中で指を滑らせている。
「このあと少し出てくる。夕方までには戻るが、何かあるのか?」予定を尋ねたからには何かあるのだろう。ブラックのことか、それともカインのことをもう耳にしただろうか。
「僕も少し出てこようと思う。さすがに<デュ・メテル>は開いていないだろうから、百貨店に行ってくるよ」
手紙の礼にハニーに贈るつもりか。ったく。俺にもこのくらい尽くしてくれないものかね。「様子を見て来てやろうか?店は閉まっているかもしれないが、商品はあるだろう?」
「いや、あの辺もぶらつくからついでに覗いてみるよ。もしも君がかわいい妹のためにチョコレートを見繕いたいというなら、邪魔はしないよ」サミーは揶揄うような笑いをこぼした。
「かわいい妹であり、弟でもある。いつもこっちが優位にいるように見えるだろうが、これでなかなか扱いは大変なんだ。クリスが引き受けてくれて助かったよ」最後の一言は余計だと思ったが、言わずにはいられなかった。別に嘘ではない。いつもそう思っているし、そのおかげでいまがある。
サミーは納得するように頷いたが、顔は一瞬にして陰った。
「朝食は?ここに持ってこさせるか?」エリックは話題を変えた。
「いや、外で適当に食べるよ。今夜のことを思えば、早めに行動しておいた方がいいだろう?」
「別に今夜何があるわけでもない。ただ花火を見て、帰るだけだ」
そのためにわざわざメリッサを呼び寄せた。おそらくジュリエットは苛々して早く帰りたがるだろう。直前のディナーで有意義な時間を過ごせたとしたら余計に。
「人が多いからそんなに簡単な話じゃないだろう?」サミーは混雑する通りを想像してか苦い顔をした。普段一人で過ごしているサミーにとっては、苦痛でしかないだろう。
確かに、人込みから抜け出すだけでも時間は相当かかる。だが計画を練り直したいま、サミーがジュリエットに深くかかわる必要はない。途中で帰ったって別にかまわない。まあ、次の計画は伝えてないし、伝えていたとしてもサミーが言うことを聞くはずもないが。
「昼寝でもして体力を温存しておくんだな」エリックはサミーの手元を見ないように努めた。胸がむかむかして仕方がない。
「僕を馬鹿にしているのか?」サミーは不満そうに言葉を吐いた。
「いいや、心配しているだけだ。田舎の祭りとはわけが違うんだ。人込みに紛れて悪さをするやつもいる。集まるのは上品な連中ばっかりじゃないからな」まるでハニーに言い聞かせているみたいだ。いまこっちにいなくて、本当によかった。たとえクリスがいたとしても、さすがに二人は面倒見切れない。
「どうだかね」サミーは冷ややかな視線をこちらに向けたかと思うと、手紙を手に立ち上がった。「着替えて出掛けるよ」言うだけ言って、さっさと背を向けるとぐずぐずせず部屋から出て行った。
いったい何が気に入らないんだか。まあいい。こっちもぐずぐずせずに行動だ。まずはコートニー邸を開ける手はずを整えに行って、チョコレート屋の様子を見に行くとしよう。
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