はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 326 [花嫁の秘密]

用を済ませたエリックは通りに出て曇り空を見上げ、このまままっすぐに帰宅するか、少し寄り道をするか束の間考えを巡らせた。もうたいしてすることもないが、少し先回りして手を打っておくのも悪くない。けど、空を見るにひと雨来そうだ。となると、ここは予定通り何もせずにおくのがいいだろう。

エリックはコートの襟を立てた。手に持ったチョコレートを大事に抱え、家路を急ぐ。タナーはいい仕事をしてくれた。タナーの指示でチョコレートを買いに行った下僕も。

メリッサの所にも届けるように言っておいたから、少しは機嫌を直してくれるだろう。サミーの手前ノーとは言わなかったが、本当は人前に出るのは嫌だったはずだ。けどこの仕事を引き受けてよかったと必ず思う時が来る。あのまま田舎にいたらきっとボロボロになって、学校を開くどころじゃなくなっていただろう。

だがあいつが素直に感謝するかどうか。オークロイドの方も何とかしなきゃならんのも、頭の痛い話だ。

アフタヌーンティーの時間までには少し時間があるが、プラットは早めに用意してくれるだろうか。昼食を食べ損ねてさっきからずっと腹が鳴っている。

帰宅したエリックを出迎えたのは、プラットのすぐ下についている従僕のカインだ。メリッサと同じ金髪に緑色の瞳、長身で細身と見た目こそ優男という感じだが、喧嘩はかなり強いらしい。祖父が元刑事でその道へ行かなかったのが不思議でならない。こっちで雇いたいくらいだ。

「やあ、カイン。土産を渡しておいていいか」サミーの分とは別に購入しておいたチョコレートをひと包み渡す。ここの使用人たちへのちょっとした賄賂のようなものだ。

「はい、エリック様」カインは差し出されたチョコレートを受け取り、それが何かわかると口元をほんの少し綻ばせた。

「何か変わったことはあったかい?」のんびりと訊きながらコートを脱ぐ。プラットが顔を出さないのは、休憩中だからかそれとも何か対処中だからか。

「特には……ですが、エリック様が出掛けられて少ししてから訪問者が――」カインは辺りを確認するような仕草を見せた。告げ口しているような気分なのだろう。

「サミーにか?」いや、クリスもあり得るか。フェルリッジを離れたと知った誰かが、当然こっちへ出て来ているものだと思って訪ねてくる。もしくはハニーを狙う誰かという可能性も。

「はい。ですがサミュエル様はお会いになられず、その方は帰られました」カインは囁くように言った。

今日は人に会う気が起きないのも当然だ。誰だか知らないがタイミングが悪すぎた。「名前は?」

「確か……ウェストと」

「そいつはまた来ると言っていたか?」エリックは鋭く訊き返した。ウェストで思いつくやつは何人かいるが、サミーを訪ねてくるやつは一人しかいない。

「応対したのはプラットさんですが、その方は特に何もおっしゃっていませんでした」

「そうか」エリックはコートを突き出すようにして渡すと、サミーのいるであろう場所へ向かった。あいつはきっと怯えて部屋に閉じこもっているはずだ。不意打ちにはとことん弱いからな。

いや、会わなかったことを後悔して、いまにも会いに行こうとしているかもしれない。となるとあの男がどこにいるか知っていることになるが、俺が知らないことをサミーが知っているとは思えない。

もしかして、プラットが姿を見せなかったのはそういうことなのか?俺もブラックも不在、この屋敷で使えそうなのはプラットかカインくらいだ。仮に俺がいたとしても、サミーが素直に頼ってくるとは思えないが、それでもいないよりマシだ。

くそっ!ブラックに目を離すなと言われたのに、なんてざまだ。

つづく


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