はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 328 [花嫁の秘密]

エリックはいつも通り上品な仕草でティーカップに口をつけるサミーを正面に見据え、ベーコンのキッシュにかぶりついた。

腹が減っている上、腹も立っている。サミーのように上品ぶってられるか。

プラットはものの一〇分ほどで、居間のティーテーブルに望みのものを用意してくれた。サミーは昼食を取っていない。おそらくいつ声を掛けられてもいいように準備していたのだろう。

サミーは窓の外を見るばかりで、紅茶は飲んでも食事には手をつけようとはしない。雨粒を見ながら何を思っているのか。

サミーはマーカス・ウェストのことを言わないつもりだろうか?

デレクとの確執よりも言いたくない過去があるのは知っている。もちろんすべてではないが、ウェストがどういう人間かはわかっている。父親に虐待されていたサミーにとって、ウェストは唯一の救いだったに違いない。

ウェストはなぜサミーに会いに?まったくの予想外で、これは俺の失態だ。

ウェストはサミーにとって過去でしかなく、いまサミーがいる世界には存在しないも同然だった。でも違った。これが事実で現実だ。

「髪はどこで切ったんだ?切った髪は捨てたのか?」サミーはティーカップを置いて、ようやく食事に手を伸ばした。ココットの中の栗にフォークを突き刺す。

「欲しかったのか?」思いもしなかった問い掛けに、エリックは目を見開き笑いをかみ殺した。「うちの管理人に切ってもらったんだ。ほんとタナーは貴重な男だよ」サミーがもしも髪を切りたくなったら、タナーをここに呼ぶか。

「管理人にそんなことまで要求するのか?」サミーは顔をしかめ、今度はきのこを口に運ぶ。栗ときのこの煮込みは気に入ったらしい。

「タナーは手先が器用なんだ。元ホテルマンで大抵の要求には応えてくれる」面倒だから嫌がるだろうが、クラブの支配人に据えてもいいかもしれない。若い従業員をうまく動かしてくれるだろう。

「君の要求に応えるのはさぞかし大変だろうね」

「そうでもない。俺がいない間好きにやってるからな」いつまでもタナーの話をしている場合ではないのに、サミーは一向にあいつの話をしようとしない。おそらく言わないつもりだろうから、諦めてこっちから切り出すか。「それで、ウェストは何しにここへ来た?なぜ会わなかったんだ」

サミーの顔からすべての感情が消えた。一瞬にして二人の間に壁を作り上げ、これまで築き上げた関係を壊した。ここまであからさまな反応をするとは予想以上だ。せいぜいいつものような刺々しさを見せるだけだと思っていた。

まずい質問をしたのはわかっているが、サミーに答えないという選択肢はない。

けど、こうなってしまったサミーの口をどうやって開かせる?

つづく


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