はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 325 [花嫁の秘密]
“公爵のチョコ”ってなんだろう。きっと<デュ・メテル>のチョコレートのことだろうけど、人気なのは御用達だからなのか。
ゆっくり過ごそうと言っていたエリックは出掛けてしまった。彼はじっとしておけない性分なんだろうけど、本当によく動く。家には着替えでも取りに行ったのだろうか。いや、それなら持って来させれば済むことだし、別の用で出掛けたのだろう。それに家に戻るとも限らない。
慎重にドアをノックする音が聞こえ、プラットが静かに部屋に入ってきた。顔には出ていないが、きっとエリックとの関係を訝しんでいるに違いない。
「プラット、熱い紅茶も頼んでいいかな」プラットが余計なことを口にしないのはわかっているけど、何か言われる前に口を開かずにはいられなかった。
「はい。只今ご用意しております」
プラットは出来る男だが、あまりに気が利き過ぎている。「エリックが用意しろって?」
プラットはテーブルを片付けながら頷き、トレイを手にした。他に用があるなら伺いますといった顔つきだ。
「着替えて下へ降りるから、十五分後に書斎に持ってきて」のんびり過ごそうと思っていたけど、エリックのいない間にやるべきことをやっておこう。
例えば、放置したままのジュリエットに手紙を書くとか。メリッサとはもう会っただろうか。二人がどういうやり取りをするのか直に見てみたい気もするけど、それはカウントダウンの日まで取っておこう。どちらにしても、今日は身体が動かない。
ほんの数日前エリックを部屋に入れないと決めたはずなのに、易々とベッドに潜り込ませて僕はいったい何をしているんだか。
身支度を整え部屋を出ると、プラットが廊下の向こうからやってきているのが見えた。慌ててはないが急いでいる様子。手に何かを持っているが紅茶ではないことは確かだ。
「どうしたプラット」
「お客様がお見えになっています」
「僕に?約束はないけど」いったい誰だろう。いまの僕は着替えたものの、家族以外に見せられるような格好ではない。そんな状態で客を迎えられると?
「はい、この名刺を渡せと手に押し込まれまして」プラットは恐縮したように手の中の紙切れをサミーに差し出した。
通常より小さめの名刺だ。紙を節約しているのだろうか。
サミーは名刺を受け取り、そこに印刷されてある名前に目を落とした。もう一〇年以上目にしていない名だった。
「これを持って来た男は屋敷の中に?」サミーは警戒するように声を低めた。
「いいえ。素性が不明でしたので玄関の外でお待ちいただいております」サミーの緊張を感じ取ってか、プラットの表情も心なしか強張った。判断を間違えていなかったことに、ホッとしたいところだろう。
「いま玄関広間には誰が?カインかな」ちゃんと侵入を阻止できているのだろうか。「とにかく、僕はいないと言って追い返して。それから今後来ても同じように対応して」彼の目的が不明なうちは、会うことは出来ない。
「かしこまりました。そのようにいたします」プラットはきゅっと口元を引き締め踵を返した。
こんな時にエリックもブラックもいないなんて、この間の悪さは誰のせいだろう。「それと、やっぱり紅茶は上に持って来て」サミーもくるりと向きを変え部屋に戻った。
つづく
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ゆっくり過ごそうと言っていたエリックは出掛けてしまった。彼はじっとしておけない性分なんだろうけど、本当によく動く。家には着替えでも取りに行ったのだろうか。いや、それなら持って来させれば済むことだし、別の用で出掛けたのだろう。それに家に戻るとも限らない。
慎重にドアをノックする音が聞こえ、プラットが静かに部屋に入ってきた。顔には出ていないが、きっとエリックとの関係を訝しんでいるに違いない。
「プラット、熱い紅茶も頼んでいいかな」プラットが余計なことを口にしないのはわかっているけど、何か言われる前に口を開かずにはいられなかった。
「はい。只今ご用意しております」
プラットは出来る男だが、あまりに気が利き過ぎている。「エリックが用意しろって?」
プラットはテーブルを片付けながら頷き、トレイを手にした。他に用があるなら伺いますといった顔つきだ。
「着替えて下へ降りるから、十五分後に書斎に持ってきて」のんびり過ごそうと思っていたけど、エリックのいない間にやるべきことをやっておこう。
例えば、放置したままのジュリエットに手紙を書くとか。メリッサとはもう会っただろうか。二人がどういうやり取りをするのか直に見てみたい気もするけど、それはカウントダウンの日まで取っておこう。どちらにしても、今日は身体が動かない。
ほんの数日前エリックを部屋に入れないと決めたはずなのに、易々とベッドに潜り込ませて僕はいったい何をしているんだか。
身支度を整え部屋を出ると、プラットが廊下の向こうからやってきているのが見えた。慌ててはないが急いでいる様子。手に何かを持っているが紅茶ではないことは確かだ。
「どうしたプラット」
「お客様がお見えになっています」
「僕に?約束はないけど」いったい誰だろう。いまの僕は着替えたものの、家族以外に見せられるような格好ではない。そんな状態で客を迎えられると?
「はい、この名刺を渡せと手に押し込まれまして」プラットは恐縮したように手の中の紙切れをサミーに差し出した。
通常より小さめの名刺だ。紙を節約しているのだろうか。
サミーは名刺を受け取り、そこに印刷されてある名前に目を落とした。もう一〇年以上目にしていない名だった。
「これを持って来た男は屋敷の中に?」サミーは警戒するように声を低めた。
「いいえ。素性が不明でしたので玄関の外でお待ちいただいております」サミーの緊張を感じ取ってか、プラットの表情も心なしか強張った。判断を間違えていなかったことに、ホッとしたいところだろう。
「いま玄関広間には誰が?カインかな」ちゃんと侵入を阻止できているのだろうか。「とにかく、僕はいないと言って追い返して。それから今後来ても同じように対応して」彼の目的が不明なうちは、会うことは出来ない。
「かしこまりました。そのようにいたします」プラットはきゅっと口元を引き締め踵を返した。
こんな時にエリックもブラックもいないなんて、この間の悪さは誰のせいだろう。「それと、やっぱり紅茶は上に持って来て」サミーもくるりと向きを変え部屋に戻った。
つづく
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