はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 334 [花嫁の秘密]
二日経って、ブラックが名簿を手に戻って来た。カウントダウンイベントはもう明日に迫っている。
名簿にすぐにでも目を通したかったが、エリックが派遣していた調査員も例の箱を持って一緒に戻って来たので、ひとまず後回しにすることにした。
サミーは図書室の一角でプレゼント箱を見下ろしながら、アンジェラがこれを目にした時のことを思い胸を痛めた。
中身はクリスが知らせた通りの物が入っていたが、調べた後なのでただそこにナイフとハンカチがあるだけだ。調査員の報告ではナイフもハンカチも新しいものではなく、村で調達されたものではないとの事。
アンジェラの名前が刺繍されたハンカチには血が付着しているが、これが人のものなのか動物のものなのかは、現時点ではわかっていない。刺繍はアンジェラがしたものではないのは、ひと目見て分かった。もしかするとこれを見て、誰が針を刺したのかわかる者がいるかもしれない。
「誰が置いたか突き止めることはできたのか?」エリックが隣に立つ調査員に訊いた。
彼はスミスという名前らしいが、おそらく偽名だ。なんとなくぼんやりとした容姿で、あまり人の記憶に残らないタイプの男だ。それを思うとブラックは調査員には向いていそうにもないなと、サミーは秘かに思った。
「いいえ。けど、村の酒場に見慣れない男がいたのを確認しています。侯爵の下僕が引き続き調べを進めていますが、どこまで足取りを追えるのかは微妙なところですね」スミスはてきぱきと答えた。
エリックはナイフを手に取り、何か特徴がないかひっくり返してみたりしていたが、どこにでもありそうな安っぽいナイフにしか見えない。
「新しくはないけど古くもないから、それなりに管理されていたものなのかな?引き出しに仕舞われていたままとか」サミーはたまらず口を挟んだ。調べ物は得意ではないが、まったく蚊帳の外に置かれるのはいい気はしない。
「ナイフからわかることはないな。けど、ハンカチの方からは何か調べられそうだ。スミス、これをアンダーソンの所へ持ち込め。詳しく調べてくれるだろう」エリックは箱からハンカチを取って、スミスに渡した。
スミスはエリックに命じられた通り、ハンカチを薄紙で包みすぐに行動に移した。見た目より俊敏なようだ。
「アンダーソンって、仕立屋の?」スミスが行ってしまってから、サミーは尋ねた。アンダーソンは変わり者で有名で、新規の客のほとんどは追い払われてしまう。正直言って、ついている客も変わり者ばかりだ。
「ああ。ハンカチに刺繍糸、どこのものかくらいはわかるだろう。まずはそこから辿る」エリックは箱にナイフを仕舞うと蓋をした。
「君がアンダーソンを贔屓にしているとは知らなかったよ」
エリックはにやりとしただけで答えなかった。あまり深く追求するなと予防線を張っているのだろうか。
「それで?僕たちは何を?」箱の中身に関してはこっちで出来ることはない。となると箱自体の出所を探るのか。
「何も」エリックはのほほんとした口調で短く答えた。
「何も?任せて終わり?」
「ああ、そうだ。お前はお前ですることがあるんだろう?」エリックはサミーに視線を置き、鷹揚に眉を上げた。
気を利かせているのか、足手まといだと除け者にする気なのか。この二日、エリックはどこかへ出掛けていたが、何をしていたのか言う気はないらしい。マーカスのことは任せたのだから口出しは出来ないけど、進捗具合の報告くらいあってもいいだろうに。
でもまあ、時間をくれるというのなら、さっそくブラックが持ち帰った名簿に目を通すことにしよう。
つづく
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名簿にすぐにでも目を通したかったが、エリックが派遣していた調査員も例の箱を持って一緒に戻って来たので、ひとまず後回しにすることにした。
サミーは図書室の一角でプレゼント箱を見下ろしながら、アンジェラがこれを目にした時のことを思い胸を痛めた。
中身はクリスが知らせた通りの物が入っていたが、調べた後なのでただそこにナイフとハンカチがあるだけだ。調査員の報告ではナイフもハンカチも新しいものではなく、村で調達されたものではないとの事。
アンジェラの名前が刺繍されたハンカチには血が付着しているが、これが人のものなのか動物のものなのかは、現時点ではわかっていない。刺繍はアンジェラがしたものではないのは、ひと目見て分かった。もしかするとこれを見て、誰が針を刺したのかわかる者がいるかもしれない。
「誰が置いたか突き止めることはできたのか?」エリックが隣に立つ調査員に訊いた。
彼はスミスという名前らしいが、おそらく偽名だ。なんとなくぼんやりとした容姿で、あまり人の記憶に残らないタイプの男だ。それを思うとブラックは調査員には向いていそうにもないなと、サミーは秘かに思った。
「いいえ。けど、村の酒場に見慣れない男がいたのを確認しています。侯爵の下僕が引き続き調べを進めていますが、どこまで足取りを追えるのかは微妙なところですね」スミスはてきぱきと答えた。
エリックはナイフを手に取り、何か特徴がないかひっくり返してみたりしていたが、どこにでもありそうな安っぽいナイフにしか見えない。
「新しくはないけど古くもないから、それなりに管理されていたものなのかな?引き出しに仕舞われていたままとか」サミーはたまらず口を挟んだ。調べ物は得意ではないが、まったく蚊帳の外に置かれるのはいい気はしない。
「ナイフからわかることはないな。けど、ハンカチの方からは何か調べられそうだ。スミス、これをアンダーソンの所へ持ち込め。詳しく調べてくれるだろう」エリックは箱からハンカチを取って、スミスに渡した。
スミスはエリックに命じられた通り、ハンカチを薄紙で包みすぐに行動に移した。見た目より俊敏なようだ。
「アンダーソンって、仕立屋の?」スミスが行ってしまってから、サミーは尋ねた。アンダーソンは変わり者で有名で、新規の客のほとんどは追い払われてしまう。正直言って、ついている客も変わり者ばかりだ。
「ああ。ハンカチに刺繍糸、どこのものかくらいはわかるだろう。まずはそこから辿る」エリックは箱にナイフを仕舞うと蓋をした。
「君がアンダーソンを贔屓にしているとは知らなかったよ」
エリックはにやりとしただけで答えなかった。あまり深く追求するなと予防線を張っているのだろうか。
「それで?僕たちは何を?」箱の中身に関してはこっちで出来ることはない。となると箱自体の出所を探るのか。
「何も」エリックはのほほんとした口調で短く答えた。
「何も?任せて終わり?」
「ああ、そうだ。お前はお前ですることがあるんだろう?」エリックはサミーに視線を置き、鷹揚に眉を上げた。
気を利かせているのか、足手まといだと除け者にする気なのか。この二日、エリックはどこかへ出掛けていたが、何をしていたのか言う気はないらしい。マーカスのことは任せたのだから口出しは出来ないけど、進捗具合の報告くらいあってもいいだろうに。
でもまあ、時間をくれるというのなら、さっそくブラックが持ち帰った名簿に目を通すことにしよう。
つづく
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