はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 348 [花嫁の秘密]

「いったいいつまで休憩をするつもりだい?」サミーは皮肉をたっぷりと込めて尋ねた。

うっかり焼き立てのスコーンの誘惑に負けて、居間のいつものソファに場所を移してから、もう二時間は経つ。ブラックが僕に突きつけそうな条件を書き出してくれるというのは、いったいどうなったのだろう。

「どうせ夜まで暇なんだ。もう少しここでこうしていたっていいだろう?」そう言うエリックは、焼き立てのスコーンにも淹れなおした紅茶にも興味を示さず、サミーにぴったりとくっついてうたた寝中だ。

ほとんど狸寝入りだろうとサミーは思っているが、無理やり押し退けるほど狭量ではない。

「君は僕の腕を潰す気か?」腕にもたれかかるエリックの頭に目をやるたび、なぜ髪を切ってしまったのか考えてしまう。本当に僕のひと言で切ってしまったのだろうか?僕が何か言えばその通りに?

「暴漢を倒せるくらいには鍛えているんだろう?」エリックはくつくつと笑い身体を起こすと、サミーの腕を掴んで引いた。

すっかり力を抜いていたサミーはエリックの上に倒れ込んだ。「ちょっ、危ないじゃないか。もし僕がいまカップを持っていたらどう――」

「うるさい。持っていたら引っ張ったりしない。いいから少しの間、俺の膝でおとなしくしてろ」

おとなしくね……。いつだって僕はおとなしくエリックに従っているし、エリックも大抵において僕の言うことを聞いてくれる。この関係はそう悪くないような気がするけど、長くは続かないだろう。

サミーは腕が痺れないように、身体をいい位置に動かした。たまには下に敷くのも悪くない。「ところで、君は忙しいんじゃなかったのか?」

用事は夕方までかかると言っていたくせに、昼過ぎにはこっちに合流してきた。おそらくやり残していることがあるはずだが、エリックはそういうことはほとんど口にしない。

「急ぎの用は済ませたから気にするな」エリックの手がサミーの肩に触れる。「今夜はここの使用人もパーティーを開くのか?」

「もう間もなく始めるんじゃないのか。だから僕たちはさっさと夜の支度をして、彼らを開放してやらなきゃ。夕食は適当でいいと言ってあるけど、外で済ませてもいい」予約はしていないが、ホテルのレストランならメリッサも一緒に食事が出来る。悪くない案だ。

「一緒に風呂に入るか?そうすれば時間の節約になる」エリックがニヤリと笑う。冗談めかしているが、半分は本気だろう。他人の屋敷でほんと好き放題する。さすがに僕が誘いに乗るとは思っていないだろうけど。

「手間が増えるだけだ。それとついでに言っておくと、ここの使用人たちには目と耳がついていることをお忘れなく」

「噂になると困るか?」エリックが首を傾げ覗き込んでくる。

この屋敷内での噂などどうでもいいし、それが外に漏れることは絶対にない。けど、簡単に手懐けられたと思われたくない。いまのこの状態では何の説得力もないけど。「なぜ困らないと思う?僕はジュリエットと結婚しなきゃならないのに」

「結婚をすると思わせるだけだ」エリックは強い口調で言い直した。「けど、それももうしなくていい」

どうやらエリックの中で計画の変更があったようだ。何をどう変更したのかは知らないが、デレクとの一件がきっかけだろう。変更した内容を言う気はあるのだろうか?

ジュリエットの事、デレクの事、それからプルートス買収に僕の住まいがどうとか、アンジェラ宛ての物騒な贈り物、ぱっと思いつくだけでも問題は山積みだ。だからこそのブラックの引き抜きなんだけれど、エリックはまったく急ぐ様子もない。

でもまあ、任せておけば僕がひと眠りしている間にでもやっておいてくれるから、いちいち言うまでもないか。

つづく


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