はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 358 [花嫁の秘密]

今夜のディナーの相手がフランス人とはね。しかもわざわざここまで追いかけてきて、僕からジュリエットを奪おうというわけか。

サミーは腹立たしさを押し殺し、悠然とした笑みを顔に張り付けた。物分かりのいい男を演じるのは案外得意だ。

それにしても、この男がエリックの用意した男?帽子から覗く豊かな巻き毛は闇に紛れるのを得意とするような黒髪で、瞳の色は同じく黒。調査員として選びがちな男だが、いい意味で顔が目立ち過ぎる。けど背格好は僕とあまり変わらないし、ジュリエットの好みとは少し違う気がする。

爵位を持っているらしいけど、よくそんなうってつけの人物を見つけてきたものだ。身に着けている装飾品は確かに一級品で、上質のコートだけを見ても腕のいい仕立屋を抱えているのがわかる。

もしも彼が本当に花嫁を探しているのだとしたら、僕はどう出るべきだろう。このまま引くべきだとして、計画はどうなる?

エリックはデレクのくだらない賭けには乗らず、あいつをクラブから追い出すことにした。四人目の男は放置したままでいいのか?今後の計画についてあれこれ話してくれたけど、全部を話しているとは思えないし、話すはずもない。

「ねえ、サミュエル。ラウールが向こうで一緒に花火を見ないかって」ジュリエットの声にサミーは物思いから否応なしに引き戻された。男二人に挟まれジュリエットはごきげんだ。

「実は友人が場所取りをしてくれていて、椅子とテーブルを持ち込んでいるので――ピクニック用の簡易なものですけど――落ち着いて花火を鑑賞できますよ」ラウールは喋ると余計に若く見えた。二十五歳くらいだと思っていたが、もしかするとセシルと同じくらいかもしれない。

「まさか、お邪魔なんてできませんよ。僕たちにも連れがいますし」連れといっても勝手についてきただけだし、いまはどこかへ行ってしまっている。メリッサは仕方ないとして、エリックはいったいどこへ行ったのだろう。

それとなく探すように辺りを見回すが、こう人が多いと唯一の目印を切ってしまったエリックを見つけるのは容易ではない。

「あの人たちはここへ来る前も、来てからも、ずっと姿が見えないじゃない」やけに刺々しいが、ジュリエットの言うことはもっともだ。

それでもサミーはジュリエットに同調するわけにはいかない。「馬車を途中で降りなければいけなかったし、有名人のメリッサと一緒ではなかなか思うように動けないのは仕方がないよ。女優を引退したからといって、彼女は変わらず人気者だからね」

「ええ、そうね。だからこそ別々に行動したらどうかしら?」ジュリエットの言葉の端々から苛立ちが感じられた。サミーの言い方に腹を立てたのは明らかで、この場はジュリエットに従った方が丸く収まるのは目に見えていた。

「ミスター・ラウール。彼女を任せてもいいですか?僕は友人を探しに行ってきます」よく知りもしない男だが、僕が知っていようがいまいがこれもすべてエリックの計画の一部だと思うとどうでもいい。

「ええ、もちろんです」ラウールは即答した。早すぎるほどだ。「ジュリエット、それでかまわない?」

ジュリエットはサミーを見て、それからラウールを見た。どちらについて行くべきか天秤にかけているのだ。

「エリックとメリッサを見つけたら、そっちへ行くよ」サミーはジュリエットが答えを出しやすいように付け加えた。ラウールも納得の提案に、ジュリエットが首を縦に振らないはずなかった

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2


nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。