はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 353 [花嫁の秘密]
気に入らない。何もかも、気に入らない。
エリックはジュリエットがエレベーターから降りて、サミーと合流する様子を二階のバルコニーから見ていた。だがそれも、サミーがジュリエットに触れるまで。
実際には襟巻に触れただけだったが、エリックの許容できる範囲を超えていた。ブライアークリフ卿のパーティーの時も思ったが、サミーはジュリエットに近づきすぎだ。しかもここをどこだと思っている?馬鹿みたいに浮かれ騒ぐ奴らが大勢いるホテルのロビーだぞ。中には見知ったものもいるというのに、計画は終わりだと言ったのを聞いていなかったとしか思えない。
しかも困ったことに、ジュリエットの扱い方がおそらくクリスよりもうまい。身体よりも精神的な結びつきを重視しているからか?もちろんサミーはジュリエットと心も身体も結びつくことはないが。
エリックは急いで緩やかにカーブしている大階段を降りて、三人に合流した。ジュリエットはサミーの手前愛想よく挨拶をし、メリッサは女優のくせにあからさまにホッとした顔を見せた。ジュリエットとの相性の悪さを隠す気はないようだ。
四人は侯爵家の馬車に乗り込み、列をなす人々を尻目にウッドワース・ガーデンズに向かった。ホテルを出てしばらくは順調に進んでいたが、目的地へ近づくにつれ速度は落ちていき、とうとうほとんど動きがなくなってしまった。
サミーが窓の外に目をやる。「渋滞しているようだね。歩く方が早いみたいだ」隣に座るジュリエットに、どうする?と目配せをする。こういった親密な仕草ひとつひとつがエリックを苛立たせた。
「歩くか?ここからだと一〇分かそこらで着くぞ」エリックはジュリエットの返事を待ったりはしなかった。どうせ嫌だと言うに決まっているからだ。
「わたしはいいわよ。出店も出ているみたいだし、色々見ていたらあっという間ね」メリッサはエリックに同調して、向かいの席に座るサミーとジュリエットを見た。
ジュリエットは渋々といった様子でサミーに頷いてみせ、横目でメリッサを睨みつけた。一人馬車に残るわけにもいかないので仕方がない。
「今夜がとびきり寒い日じゃなくてよかったよ」サミーはステッキの柄で天井を二度叩いた。
「こうなるとわかっていて、これを贈ってくれたのかしら?」ジュリエットが襟巻に触れて微笑む。出掛ける直前のディナーの相手のことなどすっかり忘れてしまったようだ。
となると、作戦は失敗だろうか。エリックは馬車を先に降りて、メリッサに手を貸しながら考えに耽った。ラウールの報告には手ごたえを感じていたが、ジュリエットがターゲットを移すまでにはいかなかった、もしくは、どちらも手に入れようとしているかだ。
この欲張りさが、いかにもジュリエットらしい。やはり次の段階へ進むしかないようだ。
つづく
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エリックはジュリエットがエレベーターから降りて、サミーと合流する様子を二階のバルコニーから見ていた。だがそれも、サミーがジュリエットに触れるまで。
実際には襟巻に触れただけだったが、エリックの許容できる範囲を超えていた。ブライアークリフ卿のパーティーの時も思ったが、サミーはジュリエットに近づきすぎだ。しかもここをどこだと思っている?馬鹿みたいに浮かれ騒ぐ奴らが大勢いるホテルのロビーだぞ。中には見知ったものもいるというのに、計画は終わりだと言ったのを聞いていなかったとしか思えない。
しかも困ったことに、ジュリエットの扱い方がおそらくクリスよりもうまい。身体よりも精神的な結びつきを重視しているからか?もちろんサミーはジュリエットと心も身体も結びつくことはないが。
エリックは急いで緩やかにカーブしている大階段を降りて、三人に合流した。ジュリエットはサミーの手前愛想よく挨拶をし、メリッサは女優のくせにあからさまにホッとした顔を見せた。ジュリエットとの相性の悪さを隠す気はないようだ。
四人は侯爵家の馬車に乗り込み、列をなす人々を尻目にウッドワース・ガーデンズに向かった。ホテルを出てしばらくは順調に進んでいたが、目的地へ近づくにつれ速度は落ちていき、とうとうほとんど動きがなくなってしまった。
サミーが窓の外に目をやる。「渋滞しているようだね。歩く方が早いみたいだ」隣に座るジュリエットに、どうする?と目配せをする。こういった親密な仕草ひとつひとつがエリックを苛立たせた。
「歩くか?ここからだと一〇分かそこらで着くぞ」エリックはジュリエットの返事を待ったりはしなかった。どうせ嫌だと言うに決まっているからだ。
「わたしはいいわよ。出店も出ているみたいだし、色々見ていたらあっという間ね」メリッサはエリックに同調して、向かいの席に座るサミーとジュリエットを見た。
ジュリエットは渋々といった様子でサミーに頷いてみせ、横目でメリッサを睨みつけた。一人馬車に残るわけにもいかないので仕方がない。
「今夜がとびきり寒い日じゃなくてよかったよ」サミーはステッキの柄で天井を二度叩いた。
「こうなるとわかっていて、これを贈ってくれたのかしら?」ジュリエットが襟巻に触れて微笑む。出掛ける直前のディナーの相手のことなどすっかり忘れてしまったようだ。
となると、作戦は失敗だろうか。エリックは馬車を先に降りて、メリッサに手を貸しながら考えに耽った。ラウールの報告には手ごたえを感じていたが、ジュリエットがターゲットを移すまでにはいかなかった、もしくは、どちらも手に入れようとしているかだ。
この欲張りさが、いかにもジュリエットらしい。やはり次の段階へ進むしかないようだ。
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