はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 357 [花嫁の秘密]

「ヒナ、ここきたことあるよ」

どこかで聞き覚えのある声を耳にし、エリックは右後方に顔を向けた。サミーにやったような耳当て付きのもこもこ帽子からのぞくコーヒー色の瞳と目が合った。前回見た時はもう少し明るい色だったが、ここはあの屋敷のような明るさはないので仕方ない。

「まさか一人じゃないよな?」さっと周辺に視線を巡らせる。ここにコヒナタカナデがいるということは、保護者であるジャスティン・バーンズがいるはずだ。

「ジュスとパーシーと一緒」ほらここにと振り返った場所に見たこともない家族がいるのを見て、口を綺麗なОの字に開けた。

「迷子か?ジェームズは一緒じゃないのか?」彼が一緒なら一瞬たりともちょろちょろ動き回る子供から目を離したりしないだろう。ちょうど俺がサミーから目を離さないように。

たったいま、サミーとジュリエットの前にラウールが現れた。ビーは少し離れた場所でファンサービス中だ。サミーはどうするだろう。

「ジャムは遅れてくるって」

ジャム?ああ、ジェームズのことか。「花火まではまだ時間があるからな」

「髪切ったの?」ヒナは好奇心いっぱいの瞳で、エリックのしっぽがあった場所を見上げた。

年齢の割には小柄だがきちんと食事を摂っているのだろうか。贅沢がいくらでもできるような屋敷に住んでいて、栄養不足ということはないだろうが、様子を見る必要があるかもしれない。

「まあな。ヒナは伸ばしているのか?」

「まあね」ヒナはそう言ってふふっと笑った。

「ヒナ!もう、離れちゃだめだって言ったじゃないか。おじいちゃんに会いに奥に行ったんじゃないかって、ジャスティンが探しに行ったよ」駆け寄ってきたパーシヴァル・クロフトがハッと口を閉じる。いかにも口を滑らせてしまった時のような、まずい顔をしている。

「こんばんは、クロフト卿。こんなところで会えるとは思いませんでしたよ」エリックはクロフト卿の失言を聞き流したふりをした。ヒナのおじいちゃんがこの奥に?今夜は乗馬コースと手前の公園しか開放していないが、奥で何かやっているのか?

「こんなところでコートニー君に会えるとはね。ゴシップでも漁りに?」失言したわりに皮肉を言う余裕があるとはね。多少のことでは動じないのは経験豊富がゆえか。

「これだけ人が集まれば、いくらでも面白いネタが見つかるでしょうね」エリックはにやりとした。どうせなら久しぶりにゴシップ記事でも書いてみるか。

「スパイなの?えっと……」エリックを見上げるヒナは、言葉を詰まらせた。

「エリックだ。名乗っていなかったか?」クリスマスイヴのあの日、ヒナと出会ったのはアクシデントのようなもので、名前を名乗る暇はなかった気がする。

「うーん、どうかな」ヒナは思い出そうと試みたがすぐに諦めた。「また、パーシーに用?あ、チョコありがと」今日は持っていないのとエリックの手元を見る。

エリックは思わず頬を緩めた。「食べたか。クロフト卿にヒナにお裾分けするように言っておいたからな」

「お裾分けどころか全部食べちゃったよ。まったくこの子ときたら、僕だって甘いものは大好物なのに」クロフト卿は子供みたいに頬を膨らませた。

「でもジャムからご褒美もらったんでしょ?」ヒナがにやにやしながら言う。

「そりゃあもちろん、ってちが、いや、違わないけど――」

「何が違うんです?ジャスティンはどこへ?こんばんは、エリック」遅れてくると言っていたジェームズが合流した。一週間ぶりに聞いた声は、前と変わらず愛想の欠片もない。

ここで時間をつぶしている場合ではないが、ひと仕事終えたメリッサもやってきた。サミーはどうしているのか確認しようとしたが、場所を移動したのかジュリエットもラウールの姿もそこにはなかった。

つづく


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