はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 350 [花嫁の秘密]
「ジュリエットは戻ってきたって?」
数時間後、ラッセルホテルのラウンジにサミーはエリックといた。待ち合わせの時間まではあと四十五分あるが、メリッサの方はもう間もなく降りてくると侍女から伝言があった。侍女はグウィネスと言い、ちょうどソフィアと同じくらいの年齢だろうか。目端の利くタイプでメリッサにとっては必要不可欠な存在だと、先ほどエリックから聞いたばかりだ。
「ああ、三〇分ほど前に、上機嫌でね」エリックは答え、ドライマティーニを飲み干し、グラスを手元から離した。オリーブは食べないらしい。
「ディナーの相手が誰だか知らないけど、楽しかったようで何よりだ。いっそのことそいつと花火を見に行けばいいのに」まるで嫉妬しているような言い方になってしまった。けどなにか面白くないのは確かだ。作為的なものを感じるからだろうか。
「予定がなけりゃ、そいつと花火を見に行っていたかもしれないな。断られなかっただけマシだと思え」
断られたってかまわないけど、さすがにそれでは情けない。彼女の目当てがいくら金だけだといっても、結婚したいと思わせることもできないようでは、この計画自体無意味になる。
「彼女は今夜に限らず色々な催しに参加している。ディナーに誘われることはいくらでもあるさ」そう言ってココアをひと口飲んだ。もう少し甘いくらいが好みだが、この後の事を思えば苦いくらいがちょうどいい。
「人脈作りには余念がないからな」エリックは二杯目のマティーニに口を付けた。あまり飲み過ぎるなと忠告したところで聞きはしないだろう。これから人の多いところへ行くのに、酔っぱらってもらっては困る。
「人脈か、金脈か……僕の魅力は兄が侯爵でそこそこ資産があるということだけ。それだけでもかなり魅力的だと思うけど、今夜の相手はそれ以上なのかな」
「焦らしているだけという可能性もあるぞ。お前を嫉妬させるのが目的かもしれない」
先日誘いを断ったからだろうか。エリックが断れと言うからそうしたけど、いま思えばエリックの言うことなど無視すればよかった。
「人が増えてきたな」気づけばラウンジは満席になっていた。ロビーに人も集まり始めているし、そろそろウッドワース・ガーデンズに向かうのだろう。早めに行って場所取りはしなくていいのだろうか?それともそれも手配済み?
「ホテルでもカウントダウンのイベントがあるらしいから、それで集まっているんだろう」エリックはのんびりと言って、ピアノを弾いている女性に向かってにこりとした。
サミーはエリックの視線を追った。「君の知り合い?」
「ああ」エリックは短く答えた。
「ふうん」詳しく話す気はないのか?
「ただの知り合いだ。気にするな」お愛想程度に笑って、誤魔化す気のようだ。
「別に気にはしていない。彼女、ここでは見かけたことがないから、今夜特別に呼ばれたのかな」ラッセルには確か専属のピアニストがいたはずだが、今夜に限っていないとはね。そんなことあり得るだろうか。
ピアノの音がやんで一瞬すべての会話も止まった。息を飲み驚嘆し、そしてざわめきが戻った。
メリッサの登場で周囲の空気が一変した。が、それもほんのわずかな時間。彼女の美しさに見惚れても無作法に近づいてくるものはこの場にはいない。
エリックは立ち上がってメリッサを迎えた。抱擁でもするかと思ったが、メリッサの放つ輝きに目がくらんだとでもいうように、流れるような仕草で空いている席に座らせただけだった。
もしかしてすでに何かしらのショーが始まっているのだろうか。
つづく
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数時間後、ラッセルホテルのラウンジにサミーはエリックといた。待ち合わせの時間まではあと四十五分あるが、メリッサの方はもう間もなく降りてくると侍女から伝言があった。侍女はグウィネスと言い、ちょうどソフィアと同じくらいの年齢だろうか。目端の利くタイプでメリッサにとっては必要不可欠な存在だと、先ほどエリックから聞いたばかりだ。
「ああ、三〇分ほど前に、上機嫌でね」エリックは答え、ドライマティーニを飲み干し、グラスを手元から離した。オリーブは食べないらしい。
「ディナーの相手が誰だか知らないけど、楽しかったようで何よりだ。いっそのことそいつと花火を見に行けばいいのに」まるで嫉妬しているような言い方になってしまった。けどなにか面白くないのは確かだ。作為的なものを感じるからだろうか。
「予定がなけりゃ、そいつと花火を見に行っていたかもしれないな。断られなかっただけマシだと思え」
断られたってかまわないけど、さすがにそれでは情けない。彼女の目当てがいくら金だけだといっても、結婚したいと思わせることもできないようでは、この計画自体無意味になる。
「彼女は今夜に限らず色々な催しに参加している。ディナーに誘われることはいくらでもあるさ」そう言ってココアをひと口飲んだ。もう少し甘いくらいが好みだが、この後の事を思えば苦いくらいがちょうどいい。
「人脈作りには余念がないからな」エリックは二杯目のマティーニに口を付けた。あまり飲み過ぎるなと忠告したところで聞きはしないだろう。これから人の多いところへ行くのに、酔っぱらってもらっては困る。
「人脈か、金脈か……僕の魅力は兄が侯爵でそこそこ資産があるということだけ。それだけでもかなり魅力的だと思うけど、今夜の相手はそれ以上なのかな」
「焦らしているだけという可能性もあるぞ。お前を嫉妬させるのが目的かもしれない」
先日誘いを断ったからだろうか。エリックが断れと言うからそうしたけど、いま思えばエリックの言うことなど無視すればよかった。
「人が増えてきたな」気づけばラウンジは満席になっていた。ロビーに人も集まり始めているし、そろそろウッドワース・ガーデンズに向かうのだろう。早めに行って場所取りはしなくていいのだろうか?それともそれも手配済み?
「ホテルでもカウントダウンのイベントがあるらしいから、それで集まっているんだろう」エリックはのんびりと言って、ピアノを弾いている女性に向かってにこりとした。
サミーはエリックの視線を追った。「君の知り合い?」
「ああ」エリックは短く答えた。
「ふうん」詳しく話す気はないのか?
「ただの知り合いだ。気にするな」お愛想程度に笑って、誤魔化す気のようだ。
「別に気にはしていない。彼女、ここでは見かけたことがないから、今夜特別に呼ばれたのかな」ラッセルには確か専属のピアニストがいたはずだが、今夜に限っていないとはね。そんなことあり得るだろうか。
ピアノの音がやんで一瞬すべての会話も止まった。息を飲み驚嘆し、そしてざわめきが戻った。
メリッサの登場で周囲の空気が一変した。が、それもほんのわずかな時間。彼女の美しさに見惚れても無作法に近づいてくるものはこの場にはいない。
エリックは立ち上がってメリッサを迎えた。抱擁でもするかと思ったが、メリッサの放つ輝きに目がくらんだとでもいうように、流れるような仕草で空いている席に座らせただけだった。
もしかしてすでに何かしらのショーが始まっているのだろうか。
つづく
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