はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 355 [花嫁の秘密]
エリックは歩調を緩め、サミーと距離を取った。
これが計画のひとつだとわかっていても、ジュリエットと寄り添って歩く姿を眺めていたい気分ではなかった。道を挟んだ向こうにブラックがいるので、そう心配することもない。
「何を考えているのか当ててみましょうか?」メリッサは前を向いたまま軽やかに言った。この状況を楽しんでいるらしい。結構なことだ。
「うるさい。黙ってろ」エリックは刺々しく返した。
「サミーの演技力もたいしたものね。あれでは彼女がその気になってしまうのもわかるわ」メリッサは黙らなかった。せっかくの夜を楽しまない手はない。
「うるさい」エリックは繰り返した。
「あなたは別の事に専念して、彼に任せたらどう?例の贈り物については何かわかったの?」
どうやってもビーは喋るのをやめないらしい。どこかの誰かさんと同じでしつこい。さすが親友だ。エリックは苛々と溜息を吐いた。
「箱についてはいま調べさせている。アンダーソンが刺繍糸とハンカチの出所については特定した。まあ珍しいものではないから、お前が犯人だって可能性もある。刺繍を誰がしたのか特定できればもっと楽なんだがな」
「彼女かしら?」メリッサはエリックの冗談のようなものを無視し、ジュリエットの背中を見ながら淡々と言う。先を行く二人はもう公園の入り口に辿り着いていた。
「指示したのはそうだろうな。決定的ではないが、それもそのうちわかるだろう」刺繍に関しては、その手の専門家に見てもらうようにしているが、アンダーソンのように急かすわけにもいかない。彼女がこれまで関わってきた令嬢やご婦人に該当者がいればいいが、いるとも限らないからこれはある意味賭けだ。
「彼女もなかなかの演技派ね。あなたに会っても顔色ひとつ変えなかったわ。もしかしてアンジェラの兄って知らないのかしら?」
「元恋人の弟に擦り寄るような女だぞ。そんなもの気にするか」エリックもメリッサの冗談のようなものを無視した。
「狭い世界ですもの、そういうことも少なくはないでしょ?」メリッサは振り返った紳士に、にっこりと微笑んだ。
「さあな。俺はそういうのとは無縁だ」ゴシップネタはここしばらくは手を付けていない。金にはなるが面倒だ。
「知らないふりをするのはやめて。あなたが時々そういう記事を書いているのを知っているのよ」
「オークロイドの事なら、書いたのは俺じゃないからな。あんな面白くもない記事」ビーが腹を立てるのもわかるが、俺が書いていたらもっとひどいことになっていただろう。オークロイドがファニー・ブレナンと婚約したことは間違いでしかない。ビーが黙って受け入れたことで手は出さなかったが、こうも八つ当たりされるならやはり手を打つべきか。
「そろそろ合流した方がいいかしら。あなたが目を離している間に、あそこでホットワインを買っているわ」メリッサの視線の先には、出店の前に立つ二人の姿があった。普段乗馬を楽しんでいるコースはちょっとしたお祭り会場になっている。
くそっ!あのバカ!
「ああ、これ以上は好きにさせるものか」エリックはメリッサを置いて、大股で二人の元へ急いだ。
つづく
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これが計画のひとつだとわかっていても、ジュリエットと寄り添って歩く姿を眺めていたい気分ではなかった。道を挟んだ向こうにブラックがいるので、そう心配することもない。
「何を考えているのか当ててみましょうか?」メリッサは前を向いたまま軽やかに言った。この状況を楽しんでいるらしい。結構なことだ。
「うるさい。黙ってろ」エリックは刺々しく返した。
「サミーの演技力もたいしたものね。あれでは彼女がその気になってしまうのもわかるわ」メリッサは黙らなかった。せっかくの夜を楽しまない手はない。
「うるさい」エリックは繰り返した。
「あなたは別の事に専念して、彼に任せたらどう?例の贈り物については何かわかったの?」
どうやってもビーは喋るのをやめないらしい。どこかの誰かさんと同じでしつこい。さすが親友だ。エリックは苛々と溜息を吐いた。
「箱についてはいま調べさせている。アンダーソンが刺繍糸とハンカチの出所については特定した。まあ珍しいものではないから、お前が犯人だって可能性もある。刺繍を誰がしたのか特定できればもっと楽なんだがな」
「彼女かしら?」メリッサはエリックの冗談のようなものを無視し、ジュリエットの背中を見ながら淡々と言う。先を行く二人はもう公園の入り口に辿り着いていた。
「指示したのはそうだろうな。決定的ではないが、それもそのうちわかるだろう」刺繍に関しては、その手の専門家に見てもらうようにしているが、アンダーソンのように急かすわけにもいかない。彼女がこれまで関わってきた令嬢やご婦人に該当者がいればいいが、いるとも限らないからこれはある意味賭けだ。
「彼女もなかなかの演技派ね。あなたに会っても顔色ひとつ変えなかったわ。もしかしてアンジェラの兄って知らないのかしら?」
「元恋人の弟に擦り寄るような女だぞ。そんなもの気にするか」エリックもメリッサの冗談のようなものを無視した。
「狭い世界ですもの、そういうことも少なくはないでしょ?」メリッサは振り返った紳士に、にっこりと微笑んだ。
「さあな。俺はそういうのとは無縁だ」ゴシップネタはここしばらくは手を付けていない。金にはなるが面倒だ。
「知らないふりをするのはやめて。あなたが時々そういう記事を書いているのを知っているのよ」
「オークロイドの事なら、書いたのは俺じゃないからな。あんな面白くもない記事」ビーが腹を立てるのもわかるが、俺が書いていたらもっとひどいことになっていただろう。オークロイドがファニー・ブレナンと婚約したことは間違いでしかない。ビーが黙って受け入れたことで手は出さなかったが、こうも八つ当たりされるならやはり手を打つべきか。
「そろそろ合流した方がいいかしら。あなたが目を離している間に、あそこでホットワインを買っているわ」メリッサの視線の先には、出店の前に立つ二人の姿があった。普段乗馬を楽しんでいるコースはちょっとしたお祭り会場になっている。
くそっ!あのバカ!
「ああ、これ以上は好きにさせるものか」エリックはメリッサを置いて、大股で二人の元へ急いだ。
つづく
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