はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 356 [花嫁の秘密]
ウッドワース・ガーデンズには早朝の乗馬で何度かジュリエットと来たことがある。奥の森の方まで足を延ばさなかったのは、二人きりになるということがいかに危険かを知っていたからだ。
ホテルの部屋で二人きりで過ごした時は、まだジュリエットも出方をうかがっていたのでよかったが、いまはもう同じことはできないだろう。
今夜は日常の風景とはずいぶんとかけ離れた光景が広がっている。フェルリッジの夏祭りとたいして変わらないが、わざわざテントを立ててお仕着せを着た従僕を従えている一団がいるのは、ここならではといったところか。
サミーは屋台の売り子からマグカップをふたつ受け取った。スパイスの効いたホットワインはジュリエットのリクエストだ。いちおうホットレモネードを勧めてみたが、あまり好きではないとあっけなく断られた。
まあ、このくらいなら飲んでも何の影響もないだろう。ただエリックがいい顔しないだけで。
「気をつけて持って」カップのひとつをジュリエットに渡しながら言う。襟巻に一滴でもワインがこぼれればとても目立つだろう。
「ありがとう、サミュエル」ジュリエットは受け取ると、白い息を吐き出しながらカップに口を付けた。
寒さはいつもよりもマシだとはいえ、やはり寒い。エリックが用意した耳当て付きの帽子は屋敷に置いてきたが、文句を言わずかぶればよかった。耳も鼻の頭も凍えるほど冷たくなっている。周りを見れば、誰も彼も格好など気にせず重装備だ。毛布を丸ごと巻き付けているような子供までいる。
「夜遅いから大人だけかと思えば、家族連れもいるんだな。子供たちは眠たくないのかな」
「めったにないことですもの。たまの夜更かしくらいなんでもないわ」
ジュリエットの口からこういう言葉が出るとは思わなかった。家族とか子供とか、そういうものには興味ないと勝手に決めつけていたが、そもそも彼女の家族観やどんな子供時代を過ごしたのか、僕は知らない。
エリックは知っているだろうか?最初の結婚相手は随分と年上の男だった。まだ子供といってもいい年齢で結婚しなければならなかったのは、親に売られたからか?
「サミー、何を飲んでる?」追いついたエリックが二人の間に割って入った。子供騙しみたいな飲み物にさえ文句を言わなきゃ気が済まないらしい。
「そろそろ来ると思っていたよ。君たちもどうだい?」カップを掲げて言う。
「もちろん飲みたいわ。ねえ、エリック」メリッサはとびきり甘ったるい声でねだった。
サミーは吹き出しそうになるのを何とか堪え、ホットワインを二杯追加で頼んだ。エリックはこういう酒は酒と認めないだろうし、飲みたくもないだろうけど、今夜ついてきたからには僕のやり方に従ってもらう。心強いことにメリッサは味方だ。
つづく
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ホテルの部屋で二人きりで過ごした時は、まだジュリエットも出方をうかがっていたのでよかったが、いまはもう同じことはできないだろう。
今夜は日常の風景とはずいぶんとかけ離れた光景が広がっている。フェルリッジの夏祭りとたいして変わらないが、わざわざテントを立ててお仕着せを着た従僕を従えている一団がいるのは、ここならではといったところか。
サミーは屋台の売り子からマグカップをふたつ受け取った。スパイスの効いたホットワインはジュリエットのリクエストだ。いちおうホットレモネードを勧めてみたが、あまり好きではないとあっけなく断られた。
まあ、このくらいなら飲んでも何の影響もないだろう。ただエリックがいい顔しないだけで。
「気をつけて持って」カップのひとつをジュリエットに渡しながら言う。襟巻に一滴でもワインがこぼれればとても目立つだろう。
「ありがとう、サミュエル」ジュリエットは受け取ると、白い息を吐き出しながらカップに口を付けた。
寒さはいつもよりもマシだとはいえ、やはり寒い。エリックが用意した耳当て付きの帽子は屋敷に置いてきたが、文句を言わずかぶればよかった。耳も鼻の頭も凍えるほど冷たくなっている。周りを見れば、誰も彼も格好など気にせず重装備だ。毛布を丸ごと巻き付けているような子供までいる。
「夜遅いから大人だけかと思えば、家族連れもいるんだな。子供たちは眠たくないのかな」
「めったにないことですもの。たまの夜更かしくらいなんでもないわ」
ジュリエットの口からこういう言葉が出るとは思わなかった。家族とか子供とか、そういうものには興味ないと勝手に決めつけていたが、そもそも彼女の家族観やどんな子供時代を過ごしたのか、僕は知らない。
エリックは知っているだろうか?最初の結婚相手は随分と年上の男だった。まだ子供といってもいい年齢で結婚しなければならなかったのは、親に売られたからか?
「サミー、何を飲んでる?」追いついたエリックが二人の間に割って入った。子供騙しみたいな飲み物にさえ文句を言わなきゃ気が済まないらしい。
「そろそろ来ると思っていたよ。君たちもどうだい?」カップを掲げて言う。
「もちろん飲みたいわ。ねえ、エリック」メリッサはとびきり甘ったるい声でねだった。
サミーは吹き出しそうになるのを何とか堪え、ホットワインを二杯追加で頼んだ。エリックはこういう酒は酒と認めないだろうし、飲みたくもないだろうけど、今夜ついてきたからには僕のやり方に従ってもらう。心強いことにメリッサは味方だ。
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