はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 352 [花嫁の秘密]

預けていたコートと帽子を受け取り、ステッキを手にすると、無防備な状態からようやく解放されたとひと心地着けた。

サミーはロビーでメリッサとジュリエットを待っていたが、エリックがいつ戻ってくるのかに気を取られ、エレベーターが開いて待ち人が姿を現したことに気づいていなかった。

「今夜の君はどこか雰囲気が違うね。そのコートのせいかな?」サミーは不躾にメリッサを上から下まで眺めまわした。純白のコートはフード付きでファーで縁取られている。夜道でもどこにいるかひと目でわかりそうだ。

「エリックからの贈り物よ。何か下心があると思うの」メリッサは内緒話を打ち明けるように声を落として囁くように言った。

確かに、エリックがただで何かするはずない。代償は時に大きく等価交換とはいかないときもある。「エリックに下心がない時があるとは思えないよ。彼はいつだって何か――」

「サミュエル」

名前を呼ばれて顔を少しだけ左へ向けた。ジュリエットは待ち合わせの時間をほんの少し過ぎて現れ、声の響きから苛ついているのが感じられた。暗色のコートの襟元にはサミーが贈ったホワイトフォックスの襟巻が巻かれている。見立て通りジュリエットの赤毛が際立っている。

ただひとつ問題があるとすれば、いまのメリッサとの会話を聞かれていたのだとしたら、エリックはコートを贈り、僕は襟巻ひとつを贈ったという差にジュリエットが何も思わないはずがないということ。

「やあ、ジュリエット。君をメリッサと待っていたんだ。エリックは正面に馬車を回すよう手配しに行っているけど、そろそろ戻ってくるんじゃないかな」サミーは正面玄関の回転ドアに目を向けた。エリックがそこにいるかは知らないけど。

「こんばんは、レディ・オースティン」メリッサはいつも通り礼儀正しく挨拶をした。ホテルで何度か顔を合わせているとはいえ、けっして親しくなれないのはお互い分っている。

「こんばんは、あなたも一緒だったのね。サミュエルはそんなこと言っていたかしら?」ジュリエットは不愉快そうに鼻に皴を寄せた。

「もちろん伝えたと思うよ。エリックとメリッサも一緒だとね。とても似合っているよ」サミーはジュリエットの前に立つと、よく見せてと両手でジュリエットの襟巻に触れた。

ジュリエットは頬をほんのりピンク色に染めて、まつげの隙間からサミーを見上げた。「これがなかなか手に入らないものだって知っているのよ。きっとレディ・セーブルはとても羨ましがるでしょうね」そう言って、挑戦的にメリッサを見た。

つまり張り合っているというわけか。レディ・セーブルがいったい誰かは知らないけど、いまの対戦相手はメリッサのようだ。

「気に入ってくれたならよかった」ここで機嫌を損なわれると、面倒が増えるだけだ。エリックがあれこれ仕掛けているようだけど、今夜は何事もなく終わらせたい。計画はまだ進行中なのだから。

つづく


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