はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 427 [花嫁の秘密]

このどんぐりクッキーなかなかいける。

セシルは指先についた粉糖をぺろりと舐めて、つい溜息を吐いた。ずっと待っているのに、誰も来ない。どうせリックがサミーを離さないからに決まっている。何が起こったのかは聞いたけど、正直わからないことだらけだ。どうして家庭教師をしていた人がサミーを襲うの?

きっとサミーは訊いたら教えてはくれるだろうけど、進んで聞きたいような話ではないし、かといって知らないままなのも足の裏がむずむずするような不快さがある。

「まだ食ってるのか?」声がして、セシルはのろのろと顔を上げた。まだもなにも、ほとんど手をつけていない。

「サミーは?」セシルは言いながら手元のティーポットを掴んだ。いつの間にか空になっている。

「寝た。もうしばらくは影響があるだろうな」エリックは疲れた顔で横に座り、テーブルに肘をついて頭を抱えた。横から覗き込もうとして鋭く睨みつけられる。

「薬の?」セシルは尋ねた。他にも影響があるのはわかっていても、口にしたくはない。

「ああ、よくある類のものだがサミーの身体には合わなかったらしい」エリックは顔を上げて椅子の背に寄りかかった。

よくある類?「それってどういうものなの?襲うときに飲ませたりするものなの?」怒りが言葉になって口をついて出る。

セシルには世の中で流行っている不道徳な遊びも、いたずらに薬を使ってそういうことをする人の気持ちも理解できない。けど、知っておくべきなのかもしれない。世の中の見たくもない裏の部分を。

「いや――お前は知らなくていい」否定したものの、どこか含みのある言い方だ。きっとリックが行くようないかがわしいパーティーではよく使うものなのだろう。弟としては兄はそういうものは使わないと信じるべきだが、信じ切れるかと言えば多少疑問が残る。

「リック、僕はなにをしたらいい?サミーのためになにができる?」僕なんかが役に立つとは思えないけど、できることがあるならなんでもしたい。元家庭教師を追ったブラックに合流してもいい。

「俺は数日したら向こうへ戻る。お前はそばにいてやれ。弟面していればあいつは喜ぶ」

サミーはなかなか認めないけど、きっとそばにいて欲しい相手は僕じゃない。

「リックはなにをするの?具体的な計画を教えてくれる気はないの?」追加でお茶を頼もうか、それともさっきからリックが凝視しているサイドボードの上のボトルを取ってこようか。

エリックはセシルの頭の中を読み取ったかのように立ち上がった。「計画もなにも、あの男を捕まえてそのあとどうするかはサミー次第だ」ドアの横の紐を引っ張る。ひとまずアルコール以外のものにするようだ。

「嘘ばっかり。サミーにどうするかなんて聞かないでしょう?僕だったら――」

「僕だったらなんだ?一発殴るか?俺がそんなもので済まさないことがわかっているなら、それでいいだろう」エリックはまるで巨人が足を踏み鳴らしながら歩くように元の場所に戻って、ドカッと腰をおろした。

淡々とした口調に隠されているのは強い怒りだ。ブラックともう一人呼び寄せていたのは、必ず捕まえて相応の罰を与えるため。あの人、ユースタスって人何者なんだろう。リックが使う人にしては見た目がちょっと派手というか、珍しいタイプだった。印象的だったのはにこりとした目の奥はまったく笑っていなかったこと。

「それじゃあ、こっちにいる間に鍵の付け替えを進めておくね。裏門の修復と、あとなんだっけ?」セシルは指をひとつずつ折りながら、このことを本当にクリスに言わなくていいのだろうかと考えた。義理の兄たちが勝手ばかりするのを、いつまで許してくれるだろう。

元を辿れば、ジュリエット・オースティンがアンジェラを襲ったところから秘密裏に物事は進んでいる。いつまでも隠し通せないのは明らかで、そろそろ家族みんなで話し合うべきではないだろうか。

つづく


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花嫁の秘密 426 [花嫁の秘密]

サミーは身体が痛いと言ってソファに横になった。膝を貸してやろうとしたが、花柄のクッションを枕にして人の膝は足置きにするあたり、さほど心配はいらないようだ。しかも室内履きを脱いだ足はなぜか靴下をはいていない。真冬になにをしているんだか。

エリックは仕方なしにウールケットを引っ張り上げて、サミーの足を覆った。膝の上で指先がきゅっと丸まったのがわかった。

今朝報告を受けて顔を見るまでは、嫌な考えばかりが頭に浮かび、こうして触れることさえできないかもしれないと危惧していた。サミーは俺には理解できないようなこだわりを持っているし、妙に潔癖なところがある。俺が気にしないことも気にするのがサミーだ。

サミーはゆっくり途切れ途切れに昨夜の出来事を語った。記憶が曖昧だと言っていたが、マーカス・ウェストがなにをしたのかははっきりと理解できた。侵入経路はグラントが言っていた通りだろう。田舎の屋敷の戸締りを完璧にしろと言ったところで、この手の屋敷に侵入する方法はいくらでもある。しかも主人が不在とあれば、見回りもおろそかになる。

「君は平気なのか?」サミーの足先がぴくりと動く。

ほらきた。絶対こういうことを聞くと思っていた。実にサミーらしい。愚問過ぎて答える気にもならない。逃げ出さないように捕まえておくだけでも大変なのに、たかが昔の男とやっただけで手放すと思うか?しかもサミーにはまったくその気がなかった。

「なんの話だ?」これ以上このことに関して突っ込んだ話はしたくない。サミーもそれに気づいてくれればいいが。

「別に……それで、君が勝手にブラックを行かせたことについて、僕に言うことはあるのか?」サミーはエリックの期待通り、それ以上追及はしなかった。

「言っただろう?あいつを追わせたと」

「それは聞いた。グラントを使えともね。うちの副執事をどう使うかなんて、君が口出しすることではないだろうに。ついでに聞くけど、どうして君はマーカスの行き先を知っているんだ?」

「事務所に人をやって行き先を聞き出した。まあ、大体の見当はついていたが、ほかにも知りたいことがあったしちょうどよかった」

ウィックファーム駅に到着するまでに、クレインがマーカス・ウェストの事務所に乗り込んで色々情報を仕入れてくれたおかげで、こっちでの仕事がスムーズに運んだ。ひとつはユースタスが予想以上に早くブラックと合流できたこともある。

「なんだか胡散臭い話だな。君が絡むと途端にそうなるのはどうしてなんだろう」サミーは怪訝そうに眉を寄せた。

まあ、もっともな話だが、ちゃんと手順は踏んでいる。「俺は胡散臭い奴を調べているだけだ。それより、お前はこれからどうする?向こうへ戻るなら手配する」

サミーは天井を見つめ、軽く首を振った。「いや、しばらくここにいる。いまは馬車の揺れを想像しただけで吐き気がする。部屋は移ろうと思うけど、君は?僕の無事を確かめたことだし、戻るんだろう?」まるでさっさと帰れと言わんばかりの言い草だ。

「無事なのは最初からわかってる。俺もしばらくはここにいる。おそらくは、セシルもここにいると言うだろうな」エリックは憮然と言い返した。

そう簡単に一人にしてたまるか。俺はいつまでいられるかわからないが、見張り役にセシルを張り付かせておく必要がありそうだ。結果としてセシルを連れてきて――勝手についてきたのだが――正解だったというわけだ。

つづく


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花嫁の秘密 425 [花嫁の秘密]

エリックに気を使われることほど、腹立たしいものはない。腫物を触るような態度で、中途半端なからかいしかできないなら、ここへ来て欲しくなかった。

一人で対処する。できもしないのにそんなことを思う。結局は諦めてエリックのすることを受け入れるしかないのに。

グラントが姿を見せたことで会話はそのまま途切れ、サミーはひとまずスープを手にした。浮き身のひとつも浮いていない透き通ったコンソメスープは、すんなりとひりつく喉を通り胃に染み入った。吐き気は一時的なものだったのか、キャノンの煎じ薬のおかげなのかいったいどちらだったのだろう。

エッグスタンドの卵の頭をエリックがナイフできれいに切り落とし、パンを添えて目の前に置いてくれたが、なぜかどろどろとした半熟卵を見ると胃がむかむかとした。上顎が擦り剝けそうなほどカリカリに焼かれたパンの方が、まだ食べる気が起きる。

エリックが昼食はまだだと言っていたから、てっきりまだ昼を回ったところだと思っていたが、すでに日は傾き始めていて空は薄墨色だ。それとも朝からずっとそうだったのだろうか。昨夜雨が降っていたのは何となく記憶にある。

「エリック、マーカスの事、なにかわかったのか」サミーはスープの器を向こうへ押しやり訊いた。この十数年、マーカスがなにをしていたのか調べてくれる約束だ。

コンサルタントをしているという話は聞いた。具体的にはどんな仕事なのか、そもそもそれは仕事と呼べるものなのか、なぜ肩書のない名刺を置いて行ったのか、疑問だらけだ。

「それはいま報告しなきゃならんことか?」エリックは苛立ちもあらわに訊き返した。

あまりの剣幕にサミーは目をぱちくりとさせ、エリックを見た。瞳が濃いグリーンに変わっている。怒りは僕に向いているのか?気遣っているようで責めるタイミングを計っていたのか。

「なぜそんなに怒る?訊いて当然だろう?僕はあいつに襲われたんだぞ。進んでここに招き入れたとでも思っているのか?」怒りがふつふつと湧き上がる。いや、怒りは最初からあった。マーカスにも、エリックにも、一番は自分自身に。

目を閉じるとマーカス顔が目の前に浮かびあがる。記憶にあったダークグリーンの瞳は暗闇の中で黒くぎらついていた。灯りはあったはずなのに、ほとんどが闇にまぎれたままだ。

「サミー、落ち着け」

遠くでエリックの声がした。なだめるような口調が、なぜか癪に障った。

「そっちこそ落ち着いたらどうだ?」目を開けて言う。最初に声を荒げたのはエリックの方だ。

「落ち着けると思うか?」エリックは切なげな顔で隣に来て、そっと指先で頬に触れた。まるでサミーが拒絶でもするかのように恐る恐る。

「落ち着いて対処したんだろう?ブラックをどこへやった?」隣に座ったエリックに身体を預ける。寄りかかるのはソファの方が柔らく心地いのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった。

つづく


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花嫁の秘密 424 [花嫁の秘密]

エリックはソファの座面を手のひらでぐっと押し、クッションがきいていることを確かめると、畳まれたウールケットをそこに置いた。

グラントが空のトレイを手にやってきて、窓際のテーブルを素早く片付けた。声を掛けなくても、次に現れた時にはきちんと欲しいものを用意してくれているだろう。たとえ仕えている家の者を守れなくても、そのくらいはできるはずだ。

ダグラスがいればと思うが、そもそもクリスとハニーがここにいればマーカス・ウェストは侵入することはできなかっただろうし、サミーも襲われずに済んだ。つまり結果として、自分が出した指示のせいでこうなってしまったのは否定できない。

「すべて、俺のせいか……」

「なんの話かは分からないけど。だいたい君が悪い」

ふいに掠れ声が聞こえ顔を上げると、サミーがほとんど目の前まで来ていた。思いのほかしっかりとした足取りで、エリックは安堵のため息を漏らした。

「足腰立たなくなっていると思ったが、お前はそんなにやわじゃないな」

サミーは片眉を吊り上げた。「君が大袈裟に押しかけなきゃ、僕はのんびりベッドで過ごしていたところだ」ソファに座り、ウールケットを膝の上に広げた。

エリックはそれを見て自分も肘掛椅子に腰を下ろした。話を聞く態勢は出来ているが、グラントがまだ食事を運んできていない。サミーの口を開かせたいが、せめてスープくらいは飲ませておきたい。

「よく言う。大袈裟もなにも――」お前が襲われたりするからと言いかけて、口を閉じた。これ以上ふざけるのは自分の首を絞めるようなもので、これから先は真面目に話し合わなきゃならない。

「言いかけてやめるなんて、君らしくないな。わざわざここまで僕を馬鹿にしに来たんだろう?言いたいことを言えばいい」

ベッドにいる時ははっきりと傷ついた様子が伺えたが、いまはもういつものポーカーフェイスに戻っている。何事も起きなかったと言われれば、納得してしまいそうだ。

「ずいぶん元気だな。獣医が役に立ったか」キャノンに会ったのはサミーが撃たれた時以来だが、獣医にしておくのはもったいない男だ。なにより、サミーのことをよく知っている。行動や性格だけでなく、身体の隅々まで。ライバルでなくてよかった。

「キャノンに会ったのか?」サミーはゆっくりと顔を動かし、エリックを見据えた。キャノンが口を滑らせていないか、確認するためだろう。

「いや、俺が来た時にはもういなかった。あいつはなんだって?」もしいたら、質問攻めにしていただろう。サミーから話を聞くより、その方が手っ取り早い。

「別に。たいしたことはないって」エリックが睨んだのを見て、慌てて付け加える。「飲まされたものがたまたま僕の身体には合わなかったらしい。それでひどい吐き気とめまいと――」サミーはふいに口を閉じ、ソファの背に身体を預けた。目を閉じて深く息を吐く。

思い出したくないことを思い出したのか、それとも記憶があいまいなのか、エリックには判断がつかなかった。ブラックが発見したとき、意識は朦朧としていてすぐに気を失ったと。

このままサミーが話してくれないとすれば、俺の勝手にさせてもらう。マーカス・ウェストを捕らえるのは時間の問題だし、どうせなら直接尋ねるのも悪くない。

ただその前に、やはりキャノンに会っておく必要がありそうだ。

つづく


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花嫁の秘密 423 [花嫁の秘密]

ブラックがエリックに報告した時点でこうなると予想はしていたが、セシルまで巻き込むことは想定していなかった。

セシルとはお互いのそういう話をほんの少しだけしたことがある。確か来週には恋人に会えると言っていた。それなのにこんなところへ連れてきて、エリックはいったい何を考えているんだか。

のろのろとした足取りで居間へ向かいながら、マーカスの事を思った。いったい僕の何がマーカスを怒らせたのだろう。頭がすっきりすると、所々欠けていた記憶がよみがえってきた。つまり、マーカスは僕とジュリエットを結婚させまいとして、あんなことをしたということか?

サミーは頭を振った。

いや、違う。マーカスはたかがゴシップ紙のくだらない記事を真に受けたりはしない。一〇年以上会っていなくても、それは断言できる。それなら家庭教師をクビになったこと?父への恨みだとしたら、とんだとばっちりだ。それとも、僕が居留守を使ったことが気に入らなかったとか?誰でも居留守くらい使うのに、仕返しとしてはやり過ぎだ。

エリックの調査は終わったのだろうか。なにか聞けたらいいけど。

「グラント、それをどこへ?」

目の前を副執事がティーセットを手に横切った。

「サミュエル様」グラントは足を止め、身体ごと向き直った。「図書室のセシル様へ」と短く言う。

図書室?エリックはセシルを追い出したのか。「僕が持っていこう」

「いえ!あ、いえ……」あまりに強く否定しすぎて、グラントはいま出来得る限りで肩を縮めた。

グラントはブラックと一緒に後始末をしたのだから、当然なにがあったのかは知っている。そして責任も感じている。おそらくクリスの耳に入れば、彼はクビになるだろう。

「そうだね、肩が痛むし、任せるよ。出し終わったら居間にも同じものを運んでおいて。セシルに挨拶したらすぐに行くから」

「かしこまりました」グラントは廊下で足止めなど食らわなかったというように再び動き出した。

やれやれ、いまいったいどういう状況なのだろう。エリックがここでも屋敷内を掌握しているのは明らかだけど、少なくともブラックのような使用人は潜り込ませてはいない。

サミーは書斎に寄って書斎机の引き出しに鍵がかかっていることを確かめた。漁った形跡もないということは、目的のものはここにはなかったようだ。そういえば酒を飲まされたがどこから持ってきたのだろう。

図書室へ行くと、セシルはソファにちょこんと座ってぼんやりとしていた。いちおう手にはマドレーヌを持っていて、ひと口はかじったようだ。

「もっと何か持ってきてもらおうか?」声を掛けながら向かいに座る。

「サミー、起きて大丈夫なの?」セシルはサッと顔を上げ、心配顔で尋ねた。

「平気だよ」エリックになにを言われたのか想像はつく。セシルにこんな顔をさせるなんて兄として許せない。

「でも、その……」セシルはもどかしそうに口ごもった。きっと聞きたいことが色々あるに違いない。

「セシルこそ、こっちに来てよかったの?恋人からの連絡待ちなんだよね?」

「もう少し先だし、連絡があればハサウェイが知らせてくれるよ」

「ハサウェイ……ああ、君のところの執事ね」

「うん」セシルは手の中のマドレーヌを見おろした。押し潰されて崩れかけている。

「そういえば、昼食は食べたの?エリックはまだだと言っていたけど、なにかちゃんとしたものを用意させようか?」僕もなにか少しお腹に入れておきたいけど、吐き気が治まったとはいえ固形物は受け付けそうにない。

食欲も少し前に比べて戻ってきていたのに、またしばらくは紅茶と菓子で過ごす羽目になりそうだ。

「来るときに列車と馬車の中で食べたから平気。僕はここでゆっくりお茶してるから、サミーはリックのところへ行ってあげて」セシルはぎくしゃくと笑みを作った。気を使わせまいと気を使っているらしい。

確かに、いまの状態ではセシルに気を使わせるだけだ。それにエリックとは早急に話し合う必要がある。僕の従者をいったいどこへやったのか。いくら元主人とはいえ、勝手なことをされては困る。従うブラックもブラックだ。戻ったら契約について再確認する必要がありそうだ。

つづく


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花嫁の秘密 422 [花嫁の秘密]

ドアノブを後ろ手にエリック廊下では立ち尽くしていた。

サミーがゆっくり慎重にベッドから出る音が聞こえる。どこか痛むのか、小さく呻き、なにかを叩きつけた。

怒りとやるせなさで胃がむかつきいまに吐きそうだ。サミーが自らマーカス・ウェストの前に身を投げ出したのなら何も言うつもりはない。いまの関係を維持することがどれだけ大変かはわかっているし、サミーの出方次第ではすぐにでも終わりを告げられてもおかしくない。

だがそれとこれとは別だ。マーカス・ウェストは一番手を出してはいけないものに手を出した。サミーがあいつを殺せと言うなら、俺は喜んでそうする。

エリックはドアを閉め階下へおりた。小さな居間ではセシルが窓際の日当たりのよい場所を陣取って、のんきにミートパイにかぶりついている。いつもなら気にならないが、いまこの瞬間においては違う。

セシルがエリックに気づいた。「リック、サミーは?」口をもごもごさせながら言う。パイくずが唇に張りついている。

「少ししたらおりてくる。お前はどこか行ってろ」部屋を横切りながら、有無を言わせぬ口調で言う。

「な、なんで!なんでいつもそうやって僕だけ仲間はずれにするの!」セシルはいきり立ち、椅子から腰を浮かせた。

「冗談で言ってるわけじゃない」エリックはテーブルに手を叩きつけ、セシルを威圧するように上から見おろした。しっかりと聞こえるように、耳に顔を近づける。「いいかよく聞け、サミーはかつて家庭教師をしていた男に身体の自由を奪われて犯された。そんな話をサミーの口から聞きたいか?」

セシルは小さく悲鳴をあげた。恐ろしさに目を見張り、それから怒りをたぎらせゆっくりとフォークを皿に置いた。口の中のパイを温めたりんご酒で喉の奥へと流し込む。

「リックはそんな話をサミーにさせるの?そこまでわかってるのに。もうそいつを追わせてるんでしょ?あのブラックってやつに」セシルは感情を露わにしまいと、歯を食いしばっている。

のんきに食べてばかりいると思ったが、見てはいたのか。ユースタスが予想よりも早く到着したので、すぐにマーカス・ウェストの後を追わせた。罪が判明し次第捕らえる。そのあとどうするかは、考え中だ。

サミーも言っていたが、なにも事細かに知りたいわけじゃない。ブラックから聞いたことの裏付けは必要だし、いつどうやって誰にも気づかれずに侵入できたかも知っておかなければならない。こう易々と外の人間が侵入できる屋敷は、誰が住むにしても相応しくない。当然、サミーをここには置いておけない。

「リック、僕にできることはある?」セシルは目元を手の甲で拭った。

「サミーと二人で話がしたい。あいつはお前にも知る権利があると思っているが、俺はそうは思わない」なによりサミーに触れたい。朝連絡を受けてからサミーの顔を見るまで生きた心地がしなかった。

まず、屋敷着いてサミーの部屋に入る口実に、グラントにココアを用意させた。それを手に眠っているサミーの姿を目にした時、昨日別れた時と何も変わりがないことにホッとした。顔色が悪いのはいつものことだ。目を合わせようとしないのも、素っ気ない態度も、いつものことだ。そう言い聞かせた。

「あとで、なにをすればいいか教えてくれたらそれでいい。僕は図書室へ行ってる。あそこはここより広いし居心地もいいからね。焼き菓子でも運んでもらうよ」セシルはミートパイの皿を持って窓辺を離れた。

「ここにはスープかなんか、食べやすそうなものを運ぶように言ってくれ」エリックはセシルの背に向かって言った。

セシルは振り向かずに頷き、部屋を出て行った。

つづく


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花嫁の秘密 421 [花嫁の秘密]

甘い香りで目が覚めた。

まるでいつもの朝と同じような――こんがりと焼けたトーストにバターがじわりと溶けていく様子や、それにかぶりつくセシルとやけに苦いコーヒーに文句を言うエリック。僕はココアを手にまた騒々しい一日が始まったと素知らぬふりで新聞に目を落とす。

サミーはまばたきをして、香りを辿った。いつもと同じではないことは、目を開ける前から分かっている。キャノン処方の怪しげな薬を飲んだあとは、父の葬儀の時の話をして、それからまた薬を飲んだ。そのおかげか頭痛も治まりぐっすり眠れた。気を失うのとは違う、ちゃんとした睡眠。

身体を起こして枕に背を預ける。誰かいると思ったら、ブラックか。テーブルに食べ損ねた朝食が置いてある。いや、昼食の支度をしてくれているのかもしれない。

「着替えを出してくれ。下で食べる」食欲があればだけど、病気でもないのにベッドで過ごすなんて馬鹿げている。

「今度は俺を従者にするか?」そう言って振り向いたのは、ここにいるはずのないエリックだった。

なぜというのは愚問だろう。ブラックが報告したに違いない。

「カーテンを開けてくれるか?」薄暗いせいで、まったく似ていない二人を見間違えてしまった。それもこれも、エリックがトレードマークの髪を切ったからだ。

「気分はどうだ?」エリックは無表情を装っていたが、奥歯を強く噛み締めているせいで顎がこわばっている。だからか、カーテンを開けてくれという僕の言葉を無視し、椅子を引き寄せベッドわきに座った。

「キャノンのおかげでそう悪くはないよ」サミーは淡々と答えた。軽い口調で返そうとしたが、さすがに何でもないことのようには振る舞えなかった。ブラック相手ならどうにか取り繕えただろう。

「いったいなにがあった」エリックが静かに切り出した。

声に怒りが滲んでいるのは、なにがあったのかもう知っているからでは?そして、その怒りは僕に向いている。

「なにって……ただ、突然やってきて――」どう言えばいい?最初からすべて?僕がクリスのベッドで寝ていたところから?そんなこと言えるはずない。「君はいつここへ?」

僕はどのくらい眠っていた?感覚としてはキャノンが帰ってほんの数時間しか経っていないように思うが、丸一日眠っていた可能性もある。

「少し前に。ちなみに昼食はまだだ。いや、セシルのせいで朝食も食べ損ねたから、昨日の夜からほとんどなにも口にしていないな」

ということは、時間の目測は合っていたようだ。ブラックはすぐさまエリックに報告し、エリックはすぐさまここへ駆けつけた。喜ぶべきか悲しむべきか腹を立てるべきか。「それで君はそんなにひどい顔をしているのか」目の端に捉えたエリックの顔はやつれて見えた。

「お前に言われたくないね。それで、話す気はあるのか?」

エリックは僕に選択肢を与えてはくれない。知りたいことを聞き出すまで絶対に引き下がらないだろう。自業自得はいえ、ブラックの忠誠心をどう判断すべきか迷うところだ。「細かくなにをされたか聞きたいか?それとも――」

エリックはサミーを制した。「サミー、俺はお前にマーカス・ウェストのことを頼まれた。あいつの目的がなんであれ、守ると約束した」

「いや、そんな約束はしていない」馬鹿みたいに怯えていたけど、守って欲しいとかそういうことではなかったはずだ。ただ突如現れたマーカスが不気味すぎて……結局、助けを求めた時点で守って欲しいと言ったようなものか。

けど、この部屋では話したくない。生々しい記憶が断片的にそれでいてはっきりと脳裏に浮かぶ。サミーはベッドの向こうのテーブルに目を向けた。大きめのマグカップにはきっとココアが入っている。温め直されたクロワッサンは、いまはとてもじゃないけど口にできない。

「顔を洗いたい。支度をしたらすぐに降りるから、居間で待っていてくれ」サミーはエリックの顔も見ずに言った。このあと明るい場所で嫌でも顔を突き合わせないといけないと思うと気が滅入る。

「わかった」エリックは立ち上がり言った。「ああ、そうだ。セシルも一緒に来ている。聞かせたくないなら書斎で待っているが、どうする?」

サミーは思わず天を仰いだ。今度は天井の模様がはっきりと見えた。ひとまず意識ははっきりしているらしい。

「セシルが聞きたくないと言えば場所を移すことにするよ」聞きたい内容ではなくても、知りたがりのセシルをのけ者にはできない。判断は彼に任せる。

「それと――」出て行こうとするエリックが、つと足を止めた。

「まだあるのか?」こんな状況だっていうのに、僕をゆっくり休ませる気はないのか?

「ブラックを借りている。しばらくはグラントを使え」エリックはそう言い捨てて、部屋を出て行った。

つづく


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花嫁の秘密 420 [花嫁の秘密]

「それで、なんでお前まで一緒に来るんだ?」

セシルは悠々と座席に腰を落ち着け、列車が動き出すのを待った。兄の嫌味には耳を貸すものか。いや、やっぱりひと言言わないと気が済まない。

「なんで?リックこそ、なんで僕を置いて行こうとしたの?」荷物らしい荷物も用意できずに駅に駆けつけ、朝食さえ食べ損ねたのに、これが怒らずにいられるか。たまたま、ほんの偶然、リックが急遽フェルリッジへ行くという話をプラットから聞かなければ、今頃何も知らずにのほほんと朝食を食べていただろう。

エリックは言い返そうと口を開きかけたが、お腹が空いて不機嫌な弟ほど厄介なものはないと嫌というほど知っているので、黙ってサンドイッチの入った紙袋をセシルに差し出した。

セシルは鼻から大きく息を吐き出しひと息吐くと、紙袋をガサガサ言わせながらサンドイッチを取り出した。スモークチキンと卵のサンドイッチだ。すごく美味しそう

ひとまず腹ごしらえをしてから、いったい何がどうなっているのか質問攻めにすることにした。朝帰りのリックがベッドに入らず列車に飛び乗るほどの何かが起こったのは明らかだけど、もしもサミーに何かあったのだとしたらこんなに冷静でいられるだろうか。

ずっと険しい顔をしているのは、僕が想像もつかないような計画を立てているからだろうけど、大抵は首を突っ込まない方がいいようなことだ。

セシルは紙袋を潰して横に置くと、ポケットからハンカチを取り出して口元を拭った。「サミーに呼ばれたの?」お腹が膨れたらあとは好奇心を満たすだけ。けど何よりサミーの事が心配だ。

「あいつが俺を呼ぶと思うか?」エリックは不機嫌そうにセシルを睨みつけた。疲れているのか寝不足か、目の下にクマができている。

「呼ばないかもしれないけど、行く理由があるんでしょ?いったい何があったの?」セシルは食い下がった。夜中だったらきっと置いて行かれていた。

「俺も詳しいことはわからない」エリックは力なく座席にもたれかかり、目を閉じた。考えをまとめようとしているのがセシルにもわかった。ポケットに突っ込んだ手には何が握られているのだろう。懐中時計か拳銃か。

「サミーは、無事なの?」セシルはおそるおそる尋ねた。答えを聞くのが怖かった。

「ああ、いちおうはな。キャノンが様子を見てくれているから心配はいらない」

「キャノン?」って誰?サミーと一緒に行ったのは、確かブラックっていう名前だったような。

「医者だ」エリックはこれ以上話しかけるなとばかりに、顔を背けた。目はずっと閉じたままだ。

「そう……」セシルはそれきり黙った。食堂車に行ってお茶でも飲んでこようか。チョコレートはなくてもビスケットくらいならあるかもしれない。僕も少し考えごとをしたい気分だ。それには甘いものが不可欠だ。

つづく


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花嫁の秘密 419 [花嫁の秘密]

朝、街灯の明かりがまだ残っている時間。

ミロード夫人の夜会から帰宅したエリックは、玄関前にクレインが立っているのを見て顔をしかめた。周囲に誰もいないとはいえ、こんなふうに待ち伏せされたことはない。それに昨日の夜――いやほんの数時間前、次の仕事の打ち合わせをしたばかりだ。アクストン通りの俺の部屋で休むと言っていたが、まさかタナーに入れてもらえなかったか?

「何の用だ?お願いだから面倒が起きたと言わないでくれよ」煙草の煙で目が痛いし、いまはとにかくベッドに入って休みたい。

「面倒だけならいいがな」クレインが神妙な面持ちで階段下まで降りてきた。顔を寄せ、声を潜める。「タナーから伝言だ。お前のサミーが襲われた。向こうでブラックが電話を待ってる」

なんの冗談だと言い返す前に走り出していた。頭の中にクレインの言葉がこだましている。襲われた?いったい誰に?無事なのか?怪我の程度は?訊きたいことは山のようにあるが、まずはブラックの報告を受けてからだ。もしかするとクレインが大袈裟に言っただけで、たいしたことではないのかもしれない。

そう考えながらも、そんなはずはないとわかっていた。ブラックは何もないのに連絡してきたりはしない。

細い路地を出るとドアの前に目を眠そうに擦るチャーチが見えた。タナーが面倒を見ている使用人見習いだ。

チャーチはエリックの姿を認めると、中に向かって何か叫びドアを全開にして待った。その動きだけで深刻な状況なのは間違いないと確認できた。エリックの胃がキリキリと痛みだす。不安に押し潰されそうになりながら玄関の奥へと進み、通信室へ入った。タナーがそう呼んでいるだけで、ただ書類や手紙が保管されている部屋に過ぎない。

「ブラックにつながっています」タナーが受話器を差し出す。エリックが受け取ると、タナーは部屋を出てドアを閉めた。

「サミーは無事か?」エリックは前置きもなしに尋ねた。まずは生死を確かめないことにはどうにもならない。

一生分ほどの間があり返事があった。『無事です。ですが――』

エリックはブラックの言葉を黙って聞いていた。ブラックはいったい何を言っている?まるで頭を酒瓶で殴られたかのようにガンガンと痛み、目の前が闇で覆われていく。

『――すぐに追いますか?」

ブラックの問いかけにエリックは瞬いた。闇に取り込まれている場合ではない。

「ユースタスが近くにいる、合流させるからそれまで待て。俺もすぐにそっちへ行く」エリックは受話器を戻した。これ以上はブラックを責めずに話していられなかったからだ。それにいまは一分一秒が惜しくてたまらない。

「タナー、フェルリッジへ行く。手配してくれ」それだけ言えば、事足りる。俺は出発までに用を済ませて駅へ行けばいい。

あの男の次の行き先の見当はついているが、いっそ事務所を潰しておくか。サミーの前に姿を見せた時から気に食わなかった。サミーが奴に会わない選択をしたのは当然と言えば当然で、おそらくそれが奴は気に入らなかったのだろう。

部屋を出ると、壁に寄りかかるようにしてクレインが立っていた。

「俺がすべきことがあるなら言ってくれ。何もないなら上で寝る」クレインはわざとらしくあくびをし、エリックの返事を待った。

「では、ひとつ頼まれてくれ」エリックは躊躇いなく言った。何もなければ放っておくつもりだったが、こうなってしまってはもう何をしても許すつもりはない。

マーカス・ウェストからすべてを奪う。

つづく


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花嫁の秘密 418 [花嫁の秘密]

ブラックはキャノンに主人を託し、グラントに屋敷の内外をもう一度詳しく調べるように言って屋敷を出た。グラントは言われるまでもなくそうするつもりだったようで、庭を管理しているモリスに馬車が待機していた場所を調べさせていると言っていた。調べたところで行き先がわかるわけでもないが、いつからそこにいたのか、いつ去ったのかくらいはわかるだろう。

事を荒立てず、いま出来得る限りのことをする。お互い名誉挽回のために必死だ。

まずひとつ、到着が遅れたことは言い訳にならない。そばにいれば守るのは簡単なことだった。そして屋敷を任されているグラントが戸締りを確認しておけば、見回りをしておけば、侵入者などやすやすと追い払えた。

ブラックの最大の失態は、新しい主人を信じていなかったこと。部屋に足を踏み入れた瞬間、主人の無事を確認するどころか前の主人に対して不義理を働いたと決めつけ腹を立てた。

こんなことでは従者など務まらない。

外はまだ暗いが、雨が止んだだけましだ。おかげで村の郵便局までほんの一〇分ほど馬を走らせるだけですんだ。グラントが一番いい馬を用意してくれたようだが、留守の侯爵が後で何も言わなきゃいいが。

ひとつ目の難関、電話を怖がるタナーが素直に出てくれて助かった。エリック様に知らせて折り返してくるまでそう時間はかからないだろう。

ブラックは古びたスツールの腰かけ、電話が鳴るのを待った。郵便局とその隣の雑貨屋を営むジョージ・オペルがマグにたっぷりの紅茶を持ってきてくれた。そこでようやく手はかじかみ、身体は芯まで冷えていることに気づいた。

砂糖をどのくらい入れたのか、やけに甘い紅茶を啜りながらどう説明すればいいのか考える。襲ったのはマーカス・ウェストだと決めつけていたが、サミュエル様が明確にそう口にしたわけではない。俺に向かって、マーカスと呼びかけただけで。

グラントの話から推測するに、侵入者は屋敷の中をよく知っている者で間違いない。主寝室に酒瓶とグラスが放置してあったことから、狙われたのは侯爵夫人だったとグラントは思っているようだが、侵入しようとする者なら不在だと知らないはずない。

となるとやはり侵入者はマーカス・ウェストで間違いないと確信しつつも、このことを伝えた後のエリック様の事を思うと落ち着かない。もしかして、伝えるべきではないのか?

だがもう遅い。タナーに電話した時点で、事は想像以上に大きくなっているに違いない。これほど緊急を要した連絡の取り方をしたことがないのだから、せめてこちらがまともに話し終えるまで冷静でいてくれたらいいが、おそらくそれはあまりに現実的ではないだろう。

情けないことだが、とにかく指示が欲しい。

つづく


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