はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 425 [花嫁の秘密]

エリックに気を使われることほど、腹立たしいものはない。腫物を触るような態度で、中途半端なからかいしかできないなら、ここへ来て欲しくなかった。

一人で対処する。できもしないのにそんなことを思う。結局は諦めてエリックのすることを受け入れるしかないのに。

グラントが姿を見せたことで会話はそのまま途切れ、サミーはひとまずスープを手にした。浮き身のひとつも浮いていない透き通ったコンソメスープは、すんなりとひりつく喉を通り胃に染み入った。吐き気は一時的なものだったのか、キャノンの煎じ薬のおかげなのかいったいどちらだったのだろう。

エッグスタンドの卵の頭をエリックがナイフできれいに切り落とし、パンを添えて目の前に置いてくれたが、なぜかどろどろとした半熟卵を見ると胃がむかむかとした。上顎が擦り剝けそうなほどカリカリに焼かれたパンの方が、まだ食べる気が起きる。

エリックが昼食はまだだと言っていたから、てっきりまだ昼を回ったところだと思っていたが、すでに日は傾き始めていて空は薄墨色だ。それとも朝からずっとそうだったのだろうか。昨夜雨が降っていたのは何となく記憶にある。

「エリック、マーカスの事、なにかわかったのか」サミーはスープの器を向こうへ押しやり訊いた。この十数年、マーカスがなにをしていたのか調べてくれる約束だ。

コンサルタントをしているという話は聞いた。具体的にはどんな仕事なのか、そもそもそれは仕事と呼べるものなのか、なぜ肩書のない名刺を置いて行ったのか、疑問だらけだ。

「それはいま報告しなきゃならんことか?」エリックは苛立ちもあらわに訊き返した。

あまりの剣幕にサミーは目をぱちくりとさせ、エリックを見た。瞳が濃いグリーンに変わっている。怒りは僕に向いているのか?気遣っているようで責めるタイミングを計っていたのか。

「なぜそんなに怒る?訊いて当然だろう?僕はあいつに襲われたんだぞ。進んでここに招き入れたとでも思っているのか?」怒りがふつふつと湧き上がる。いや、怒りは最初からあった。マーカスにも、エリックにも、一番は自分自身に。

目を閉じるとマーカス顔が目の前に浮かびあがる。記憶にあったダークグリーンの瞳は暗闇の中で黒くぎらついていた。灯りはあったはずなのに、ほとんどが闇にまぎれたままだ。

「サミー、落ち着け」

遠くでエリックの声がした。なだめるような口調が、なぜか癪に障った。

「そっちこそ落ち着いたらどうだ?」目を開けて言う。最初に声を荒げたのはエリックの方だ。

「落ち着けると思うか?」エリックは切なげな顔で隣に来て、そっと指先で頬に触れた。まるでサミーが拒絶でもするかのように恐る恐る。

「落ち着いて対処したんだろう?ブラックをどこへやった?」隣に座ったエリックに身体を預ける。寄りかかるのはソファの方が柔らく心地いのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった。

つづく


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