はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 424 [花嫁の秘密]

エリックはソファの座面を手のひらでぐっと押し、クッションがきいていることを確かめると、畳まれたウールケットをそこに置いた。

グラントが空のトレイを手にやってきて、窓際のテーブルを素早く片付けた。声を掛けなくても、次に現れた時にはきちんと欲しいものを用意してくれているだろう。たとえ仕えている家の者を守れなくても、そのくらいはできるはずだ。

ダグラスがいればと思うが、そもそもクリスとハニーがここにいればマーカス・ウェストは侵入することはできなかっただろうし、サミーも襲われずに済んだ。つまり結果として、自分が出した指示のせいでこうなってしまったのは否定できない。

「すべて、俺のせいか……」

「なんの話かは分からないけど。だいたい君が悪い」

ふいに掠れ声が聞こえ顔を上げると、サミーがほとんど目の前まで来ていた。思いのほかしっかりとした足取りで、エリックは安堵のため息を漏らした。

「足腰立たなくなっていると思ったが、お前はそんなにやわじゃないな」

サミーは片眉を吊り上げた。「君が大袈裟に押しかけなきゃ、僕はのんびりベッドで過ごしていたところだ」ソファに座り、ウールケットを膝の上に広げた。

エリックはそれを見て自分も肘掛椅子に腰を下ろした。話を聞く態勢は出来ているが、グラントがまだ食事を運んできていない。サミーの口を開かせたいが、せめてスープくらいは飲ませておきたい。

「よく言う。大袈裟もなにも――」お前が襲われたりするからと言いかけて、口を閉じた。これ以上ふざけるのは自分の首を絞めるようなもので、これから先は真面目に話し合わなきゃならない。

「言いかけてやめるなんて、君らしくないな。わざわざここまで僕を馬鹿にしに来たんだろう?言いたいことを言えばいい」

ベッドにいる時ははっきりと傷ついた様子が伺えたが、いまはもういつものポーカーフェイスに戻っている。何事も起きなかったと言われれば、納得してしまいそうだ。

「ずいぶん元気だな。獣医が役に立ったか」キャノンに会ったのはサミーが撃たれた時以来だが、獣医にしておくのはもったいない男だ。なにより、サミーのことをよく知っている。行動や性格だけでなく、身体の隅々まで。ライバルでなくてよかった。

「キャノンに会ったのか?」サミーはゆっくりと顔を動かし、エリックを見据えた。キャノンが口を滑らせていないか、確認するためだろう。

「いや、俺が来た時にはもういなかった。あいつはなんだって?」もしいたら、質問攻めにしていただろう。サミーから話を聞くより、その方が手っ取り早い。

「別に。たいしたことはないって」エリックが睨んだのを見て、慌てて付け加える。「飲まされたものがたまたま僕の身体には合わなかったらしい。それでひどい吐き気とめまいと――」サミーはふいに口を閉じ、ソファの背に身体を預けた。目を閉じて深く息を吐く。

思い出したくないことを思い出したのか、それとも記憶があいまいなのか、エリックには判断がつかなかった。ブラックが発見したとき、意識は朦朧としていてすぐに気を失ったと。

このままサミーが話してくれないとすれば、俺の勝手にさせてもらう。マーカス・ウェストを捕らえるのは時間の問題だし、どうせなら直接尋ねるのも悪くない。

ただその前に、やはりキャノンに会っておく必要がありそうだ。

つづく


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