はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 422 [花嫁の秘密]
ドアノブを後ろ手にエリック廊下では立ち尽くしていた。
サミーがゆっくり慎重にベッドから出る音が聞こえる。どこか痛むのか、小さく呻き、なにかを叩きつけた。
怒りとやるせなさで胃がむかつきいまに吐きそうだ。サミーが自らマーカス・ウェストの前に身を投げ出したのなら何も言うつもりはない。いまの関係を維持することがどれだけ大変かはわかっているし、サミーの出方次第ではすぐにでも終わりを告げられてもおかしくない。
だがそれとこれとは別だ。マーカス・ウェストは一番手を出してはいけないものに手を出した。サミーがあいつを殺せと言うなら、俺は喜んでそうする。
エリックはドアを閉め階下へおりた。小さな居間ではセシルが窓際の日当たりのよい場所を陣取って、のんきにミートパイにかぶりついている。いつもなら気にならないが、いまこの瞬間においては違う。
セシルがエリックに気づいた。「リック、サミーは?」口をもごもごさせながら言う。パイくずが唇に張りついている。
「少ししたらおりてくる。お前はどこか行ってろ」部屋を横切りながら、有無を言わせぬ口調で言う。
「な、なんで!なんでいつもそうやって僕だけ仲間はずれにするの!」セシルはいきり立ち、椅子から腰を浮かせた。
「冗談で言ってるわけじゃない」エリックはテーブルに手を叩きつけ、セシルを威圧するように上から見おろした。しっかりと聞こえるように、耳に顔を近づける。「いいかよく聞け、サミーはかつて家庭教師をしていた男に身体の自由を奪われて犯された。そんな話をサミーの口から聞きたいか?」
セシルは小さく悲鳴をあげた。恐ろしさに目を見張り、それから怒りをたぎらせゆっくりとフォークを皿に置いた。口の中のパイを温めたりんご酒で喉の奥へと流し込む。
「リックはそんな話をサミーにさせるの?そこまでわかってるのに。もうそいつを追わせてるんでしょ?あのブラックってやつに」セシルは感情を露わにしまいと、歯を食いしばっている。
のんきに食べてばかりいると思ったが、見てはいたのか。ユースタスが予想よりも早く到着したので、すぐにマーカス・ウェストの後を追わせた。罪が判明し次第捕らえる。そのあとどうするかは、考え中だ。
サミーも言っていたが、なにも事細かに知りたいわけじゃない。ブラックから聞いたことの裏付けは必要だし、いつどうやって誰にも気づかれずに侵入できたかも知っておかなければならない。こう易々と外の人間が侵入できる屋敷は、誰が住むにしても相応しくない。当然、サミーをここには置いておけない。
「リック、僕にできることはある?」セシルは目元を手の甲で拭った。
「サミーと二人で話がしたい。あいつはお前にも知る権利があると思っているが、俺はそうは思わない」なによりサミーに触れたい。朝連絡を受けてからサミーの顔を見るまで生きた心地がしなかった。
まず、屋敷着いてサミーの部屋に入る口実に、グラントにココアを用意させた。それを手に眠っているサミーの姿を目にした時、昨日別れた時と何も変わりがないことにホッとした。顔色が悪いのはいつものことだ。目を合わせようとしないのも、素っ気ない態度も、いつものことだ。そう言い聞かせた。
「あとで、なにをすればいいか教えてくれたらそれでいい。僕は図書室へ行ってる。あそこはここより広いし居心地もいいからね。焼き菓子でも運んでもらうよ」セシルはミートパイの皿を持って窓辺を離れた。
「ここにはスープかなんか、食べやすそうなものを運ぶように言ってくれ」エリックはセシルの背に向かって言った。
セシルは振り向かずに頷き、部屋を出て行った。
つづく
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サミーがゆっくり慎重にベッドから出る音が聞こえる。どこか痛むのか、小さく呻き、なにかを叩きつけた。
怒りとやるせなさで胃がむかつきいまに吐きそうだ。サミーが自らマーカス・ウェストの前に身を投げ出したのなら何も言うつもりはない。いまの関係を維持することがどれだけ大変かはわかっているし、サミーの出方次第ではすぐにでも終わりを告げられてもおかしくない。
だがそれとこれとは別だ。マーカス・ウェストは一番手を出してはいけないものに手を出した。サミーがあいつを殺せと言うなら、俺は喜んでそうする。
エリックはドアを閉め階下へおりた。小さな居間ではセシルが窓際の日当たりのよい場所を陣取って、のんきにミートパイにかぶりついている。いつもなら気にならないが、いまこの瞬間においては違う。
セシルがエリックに気づいた。「リック、サミーは?」口をもごもごさせながら言う。パイくずが唇に張りついている。
「少ししたらおりてくる。お前はどこか行ってろ」部屋を横切りながら、有無を言わせぬ口調で言う。
「な、なんで!なんでいつもそうやって僕だけ仲間はずれにするの!」セシルはいきり立ち、椅子から腰を浮かせた。
「冗談で言ってるわけじゃない」エリックはテーブルに手を叩きつけ、セシルを威圧するように上から見おろした。しっかりと聞こえるように、耳に顔を近づける。「いいかよく聞け、サミーはかつて家庭教師をしていた男に身体の自由を奪われて犯された。そんな話をサミーの口から聞きたいか?」
セシルは小さく悲鳴をあげた。恐ろしさに目を見張り、それから怒りをたぎらせゆっくりとフォークを皿に置いた。口の中のパイを温めたりんご酒で喉の奥へと流し込む。
「リックはそんな話をサミーにさせるの?そこまでわかってるのに。もうそいつを追わせてるんでしょ?あのブラックってやつに」セシルは感情を露わにしまいと、歯を食いしばっている。
のんきに食べてばかりいると思ったが、見てはいたのか。ユースタスが予想よりも早く到着したので、すぐにマーカス・ウェストの後を追わせた。罪が判明し次第捕らえる。そのあとどうするかは、考え中だ。
サミーも言っていたが、なにも事細かに知りたいわけじゃない。ブラックから聞いたことの裏付けは必要だし、いつどうやって誰にも気づかれずに侵入できたかも知っておかなければならない。こう易々と外の人間が侵入できる屋敷は、誰が住むにしても相応しくない。当然、サミーをここには置いておけない。
「リック、僕にできることはある?」セシルは目元を手の甲で拭った。
「サミーと二人で話がしたい。あいつはお前にも知る権利があると思っているが、俺はそうは思わない」なによりサミーに触れたい。朝連絡を受けてからサミーの顔を見るまで生きた心地がしなかった。
まず、屋敷着いてサミーの部屋に入る口実に、グラントにココアを用意させた。それを手に眠っているサミーの姿を目にした時、昨日別れた時と何も変わりがないことにホッとした。顔色が悪いのはいつものことだ。目を合わせようとしないのも、素っ気ない態度も、いつものことだ。そう言い聞かせた。
「あとで、なにをすればいいか教えてくれたらそれでいい。僕は図書室へ行ってる。あそこはここより広いし居心地もいいからね。焼き菓子でも運んでもらうよ」セシルはミートパイの皿を持って窓辺を離れた。
「ここにはスープかなんか、食べやすそうなものを運ぶように言ってくれ」エリックはセシルの背に向かって言った。
セシルは振り向かずに頷き、部屋を出て行った。
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2023-09-02 14:41
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