はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 420 [花嫁の秘密]

「それで、なんでお前まで一緒に来るんだ?」

セシルは悠々と座席に腰を落ち着け、列車が動き出すのを待った。兄の嫌味には耳を貸すものか。いや、やっぱりひと言言わないと気が済まない。

「なんで?リックこそ、なんで僕を置いて行こうとしたの?」荷物らしい荷物も用意できずに駅に駆けつけ、朝食さえ食べ損ねたのに、これが怒らずにいられるか。たまたま、ほんの偶然、リックが急遽フェルリッジへ行くという話をプラットから聞かなければ、今頃何も知らずにのほほんと朝食を食べていただろう。

エリックは言い返そうと口を開きかけたが、お腹が空いて不機嫌な弟ほど厄介なものはないと嫌というほど知っているので、黙ってサンドイッチの入った紙袋をセシルに差し出した。

セシルは鼻から大きく息を吐き出しひと息吐くと、紙袋をガサガサ言わせながらサンドイッチを取り出した。スモークチキンと卵のサンドイッチだ。すごく美味しそう

ひとまず腹ごしらえをしてから、いったい何がどうなっているのか質問攻めにすることにした。朝帰りのリックがベッドに入らず列車に飛び乗るほどの何かが起こったのは明らかだけど、もしもサミーに何かあったのだとしたらこんなに冷静でいられるだろうか。

ずっと険しい顔をしているのは、僕が想像もつかないような計画を立てているからだろうけど、大抵は首を突っ込まない方がいいようなことだ。

セシルは紙袋を潰して横に置くと、ポケットからハンカチを取り出して口元を拭った。「サミーに呼ばれたの?」お腹が膨れたらあとは好奇心を満たすだけ。けど何よりサミーの事が心配だ。

「あいつが俺を呼ぶと思うか?」エリックは不機嫌そうにセシルを睨みつけた。疲れているのか寝不足か、目の下にクマができている。

「呼ばないかもしれないけど、行く理由があるんでしょ?いったい何があったの?」セシルは食い下がった。夜中だったらきっと置いて行かれていた。

「俺も詳しいことはわからない」エリックは力なく座席にもたれかかり、目を閉じた。考えをまとめようとしているのがセシルにもわかった。ポケットに突っ込んだ手には何が握られているのだろう。懐中時計か拳銃か。

「サミーは、無事なの?」セシルはおそるおそる尋ねた。答えを聞くのが怖かった。

「ああ、いちおうはな。キャノンが様子を見てくれているから心配はいらない」

「キャノン?」って誰?サミーと一緒に行ったのは、確かブラックっていう名前だったような。

「医者だ」エリックはこれ以上話しかけるなとばかりに、顔を背けた。目はずっと閉じたままだ。

「そう……」セシルはそれきり黙った。食堂車に行ってお茶でも飲んでこようか。チョコレートはなくてもビスケットくらいならあるかもしれない。僕も少し考えごとをしたい気分だ。それには甘いものが不可欠だ。

つづく


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