はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 427 [花嫁の秘密]
このどんぐりクッキーなかなかいける。
セシルは指先についた粉糖をぺろりと舐めて、つい溜息を吐いた。ずっと待っているのに、誰も来ない。どうせリックがサミーを離さないからに決まっている。何が起こったのかは聞いたけど、正直わからないことだらけだ。どうして家庭教師をしていた人がサミーを襲うの?
きっとサミーは訊いたら教えてはくれるだろうけど、進んで聞きたいような話ではないし、かといって知らないままなのも足の裏がむずむずするような不快さがある。
「まだ食ってるのか?」声がして、セシルはのろのろと顔を上げた。まだもなにも、ほとんど手をつけていない。
「サミーは?」セシルは言いながら手元のティーポットを掴んだ。いつの間にか空になっている。
「寝た。もうしばらくは影響があるだろうな」エリックは疲れた顔で横に座り、テーブルに肘をついて頭を抱えた。横から覗き込もうとして鋭く睨みつけられる。
「薬の?」セシルは尋ねた。他にも影響があるのはわかっていても、口にしたくはない。
「ああ、よくある類のものだがサミーの身体には合わなかったらしい」エリックは顔を上げて椅子の背に寄りかかった。
よくある類?「それってどういうものなの?襲うときに飲ませたりするものなの?」怒りが言葉になって口をついて出る。
セシルには世の中で流行っている不道徳な遊びも、いたずらに薬を使ってそういうことをする人の気持ちも理解できない。けど、知っておくべきなのかもしれない。世の中の見たくもない裏の部分を。
「いや――お前は知らなくていい」否定したものの、どこか含みのある言い方だ。きっとリックが行くようないかがわしいパーティーではよく使うものなのだろう。弟としては兄はそういうものは使わないと信じるべきだが、信じ切れるかと言えば多少疑問が残る。
「リック、僕はなにをしたらいい?サミーのためになにができる?」僕なんかが役に立つとは思えないけど、できることがあるならなんでもしたい。元家庭教師を追ったブラックに合流してもいい。
「俺は数日したら向こうへ戻る。お前はそばにいてやれ。弟面していればあいつは喜ぶ」
サミーはなかなか認めないけど、きっとそばにいて欲しい相手は僕じゃない。
「リックはなにをするの?具体的な計画を教えてくれる気はないの?」追加でお茶を頼もうか、それともさっきからリックが凝視しているサイドボードの上のボトルを取ってこようか。
エリックはセシルの頭の中を読み取ったかのように立ち上がった。「計画もなにも、あの男を捕まえてそのあとどうするかはサミー次第だ」ドアの横の紐を引っ張る。ひとまずアルコール以外のものにするようだ。
「嘘ばっかり。サミーにどうするかなんて聞かないでしょう?僕だったら――」
「僕だったらなんだ?一発殴るか?俺がそんなもので済まさないことがわかっているなら、それでいいだろう」エリックはまるで巨人が足を踏み鳴らしながら歩くように元の場所に戻って、ドカッと腰をおろした。
淡々とした口調に隠されているのは強い怒りだ。ブラックともう一人呼び寄せていたのは、必ず捕まえて相応の罰を与えるため。あの人、ユースタスって人何者なんだろう。リックが使う人にしては見た目がちょっと派手というか、珍しいタイプだった。印象的だったのはにこりとした目の奥はまったく笑っていなかったこと。
「それじゃあ、こっちにいる間に鍵の付け替えを進めておくね。裏門の修復と、あとなんだっけ?」セシルは指をひとつずつ折りながら、このことを本当にクリスに言わなくていいのだろうかと考えた。義理の兄たちが勝手ばかりするのを、いつまで許してくれるだろう。
元を辿れば、ジュリエット・オースティンがアンジェラを襲ったところから秘密裏に物事は進んでいる。いつまでも隠し通せないのは明らかで、そろそろ家族みんなで話し合うべきではないだろうか。
つづく
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セシルは指先についた粉糖をぺろりと舐めて、つい溜息を吐いた。ずっと待っているのに、誰も来ない。どうせリックがサミーを離さないからに決まっている。何が起こったのかは聞いたけど、正直わからないことだらけだ。どうして家庭教師をしていた人がサミーを襲うの?
きっとサミーは訊いたら教えてはくれるだろうけど、進んで聞きたいような話ではないし、かといって知らないままなのも足の裏がむずむずするような不快さがある。
「まだ食ってるのか?」声がして、セシルはのろのろと顔を上げた。まだもなにも、ほとんど手をつけていない。
「サミーは?」セシルは言いながら手元のティーポットを掴んだ。いつの間にか空になっている。
「寝た。もうしばらくは影響があるだろうな」エリックは疲れた顔で横に座り、テーブルに肘をついて頭を抱えた。横から覗き込もうとして鋭く睨みつけられる。
「薬の?」セシルは尋ねた。他にも影響があるのはわかっていても、口にしたくはない。
「ああ、よくある類のものだがサミーの身体には合わなかったらしい」エリックは顔を上げて椅子の背に寄りかかった。
よくある類?「それってどういうものなの?襲うときに飲ませたりするものなの?」怒りが言葉になって口をついて出る。
セシルには世の中で流行っている不道徳な遊びも、いたずらに薬を使ってそういうことをする人の気持ちも理解できない。けど、知っておくべきなのかもしれない。世の中の見たくもない裏の部分を。
「いや――お前は知らなくていい」否定したものの、どこか含みのある言い方だ。きっとリックが行くようないかがわしいパーティーではよく使うものなのだろう。弟としては兄はそういうものは使わないと信じるべきだが、信じ切れるかと言えば多少疑問が残る。
「リック、僕はなにをしたらいい?サミーのためになにができる?」僕なんかが役に立つとは思えないけど、できることがあるならなんでもしたい。元家庭教師を追ったブラックに合流してもいい。
「俺は数日したら向こうへ戻る。お前はそばにいてやれ。弟面していればあいつは喜ぶ」
サミーはなかなか認めないけど、きっとそばにいて欲しい相手は僕じゃない。
「リックはなにをするの?具体的な計画を教えてくれる気はないの?」追加でお茶を頼もうか、それともさっきからリックが凝視しているサイドボードの上のボトルを取ってこようか。
エリックはセシルの頭の中を読み取ったかのように立ち上がった。「計画もなにも、あの男を捕まえてそのあとどうするかはサミー次第だ」ドアの横の紐を引っ張る。ひとまずアルコール以外のものにするようだ。
「嘘ばっかり。サミーにどうするかなんて聞かないでしょう?僕だったら――」
「僕だったらなんだ?一発殴るか?俺がそんなもので済まさないことがわかっているなら、それでいいだろう」エリックはまるで巨人が足を踏み鳴らしながら歩くように元の場所に戻って、ドカッと腰をおろした。
淡々とした口調に隠されているのは強い怒りだ。ブラックともう一人呼び寄せていたのは、必ず捕まえて相応の罰を与えるため。あの人、ユースタスって人何者なんだろう。リックが使う人にしては見た目がちょっと派手というか、珍しいタイプだった。印象的だったのはにこりとした目の奥はまったく笑っていなかったこと。
「それじゃあ、こっちにいる間に鍵の付け替えを進めておくね。裏門の修復と、あとなんだっけ?」セシルは指をひとつずつ折りながら、このことを本当にクリスに言わなくていいのだろうかと考えた。義理の兄たちが勝手ばかりするのを、いつまで許してくれるだろう。
元を辿れば、ジュリエット・オースティンがアンジェラを襲ったところから秘密裏に物事は進んでいる。いつまでも隠し通せないのは明らかで、そろそろ家族みんなで話し合うべきではないだろうか。
つづく
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2023-09-24 16:56
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