はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 247 [花嫁の秘密]

プルートスはにぎわっていた。ここで夜を過ごす者、このあと控えているパーティーまでの時間つぶしで来ている者、よく見るとカウンターの隅の席で深刻そうに話をしている者がいる。横顔に見覚えがあったが誰だか思い出せない。

エリックに訊いてみようか。サミーはすぐにその考えを振り払った。なんであれ、エリックを頼りすぎるのはよくないし、得意げにされるのもうんざりだ。

「シャンパンをグラスで二つ。席はあそこにするよ」エリックが給仕係に声をかけ、ラウンジの奥まった席を指さす。柱の陰に隠れて周りを観察するにはいい席だ。

「僕は飲まないよ」遊びではないとさっきも言ったのに、エリックは聞いていなかったのだろうか?

「飲んでいるふりくらいできるだろう?」エリックは軽く受け流し、目当ての席へ向かって奥へと進む。

本当にふりだけで済ませてくれるのだろうかと、疑り深い視線をエリックに向けた。今夜もし酔ってしまったら、きっと僕は取り返しのつかないほどの醜態を晒すだろう。昨日、エリックはこれまでぼかし続けてきた感情をはっきりと示した。それなのに、ついさっき馬車の中でまた険悪になりかけた。何が気に入らなかったのか、急に喧嘩腰になって、僕がアンジェラを好きになっていたかどうかと責め立てた。エリックは返事はいらないと言ったが、きっと僕はアンジェラが女の子でも好きになっていただろう。アンジェラに対しては恋愛とか結婚とかそういうものとは別の感情を抱いていて、それは自分でもうまく言い表すことが出来ない。

ゆったりとした革のソファに腰を落ち着けると同時に、目の前にシャンパングラスが差し出された。サミーは無意識にそれを手に取り、エリックと目を合わせた。特に言葉はなかったので、そのまま一口だけ飲んだ。繊細な泡が口の中ではじけ、喉をするりと降りていく。なんて心地よいのだろう。でもこれ以上はだめだ。

サミーはグラスを置き、エリックを見た。

「あのカウンターの男、見覚えあるか?」エリックの視線の先には、先ほどサミーも気になった人物がいた。

「見覚えはあるけど、思い出せないんだ」まあ、特段思い出したいほど興味はないけれど。

「一人はクラブの支配人、もう一人はブライス卿」エリックの嘲るような口調。どうやら件の人物をよく思っていないようだ。

「ブライス?ああ、彼か」いつもはもっとめかしこんでいる印象だったから気づかなかった。そう言われればあの自惚れの強い横顔はブライスそのものだ。「支配人と何を?」

「ツケを回収されているのさ。ずいぶん借金もかさんでいるようだし」

「金には困ってないだろう?ブライスの家は確かに財産が潤沢とはいいがたいが、妻はあのブルーアー家の娘だ。持参金も相当あっただろうし、尽きたとしても仕送りでもなんでも好きなだけしてもらえるだろう」それが目当てで結婚したようなものだと、誰もが知るところだ。

「娘はかわいいが、夫はかわいくないんだろう」エリックは適当に言って、通りかかった給仕係を呼び止めると、こちらの意見など全く聞かず何品か注文し満足げにソファに背を預けた。「まずは腹ごしらえだな。うまくあいつらが来ればいいが」

「誰かは来るんじゃないかな」確信はなかったが、クリスマス時期は大抵皆浮かれていて、こういう場所に金を使いに来るものだ。そういえば、腹ごしらえで思いだした。「君が僕のために用意した従僕だけど、どこで見つけたんだ?」そもそもどうやってバーンズ邸に潜り込ませた?

「気に入ったか?」エリックはニッと口の端を上げた。いつもの事だが、まったく悪びれる様子はない。

「せめて僕に断ってからにして欲しかったね」おかげでずっとエリックに見張られている気分だった。

「気に入らないならクビにしろ」事も無げに言い、その辺にいるであろう給仕係に指先で空になったグラスを満たすように合図を出した。

いっそ専属で誰かついてもらったらどうかと口を出しそうになったが、ボトルを持って現れた給仕係がおそらくそうなのだろうと、二人の視線の交わし方を見て思った。こいつもエリックの手の者か。

果たしてエリックの手の入っていない場所などあるのだろうか。

つづく


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