はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 245 [花嫁の秘密]

その頃フェルリッジのリード邸では――

「アップル・ゲートへ行きたい?」クリスは動揺を隠しつつ、たったいまアンジェラが口にした言葉を繰り返した。妻に実家へ帰りたいと言われて動揺しないわけがない。驚いてソファから腰を浮かしたほどだ。

「クリスがラムズデンに行っている間だけよ。一人でここにいるのは寂しいし、お母様とゆっくり話もしたいし、いいでしょう?」隣に座るアンジェラはクリスの手を取った。小さな手に力を込めて説得しようとしているのだ。

クリスはその提案を真剣に考えてみた。
確かにここがいくら安全だと言っても、一人にさせるのは心配だ。アップル・ゲートならマーサもいるし、アンジェラが寂しがることもない上、ソフィアにこの結婚生活の意義を説くこともできる。
とはいえ滞在中は護衛が必要になるだろう。一番頼りになるエリックはサミーとセシルを連れて行ってしまった。連れ戻すか?

「わかった。戻ったら迎えに行くけど、その時ソフィアと話が出来たらいいんだが、ハニーが下準備をしておいてくれるかな?」ひとまず返事をしたものの、年明けまでに護衛を見つけることが可能だろうかとなおも頭を巡らせる。

「もちろんよ。まずはお母様がわたしが男だってことを十分に理解してくれたところで、クリスとの結婚についてしっかり説明するつもりよ」

意気込むアンジェラは生き生きとしていてなんと愛らしいことか。クリスは微笑んだが、懸念を口にせずにはいられなかった。

「そううまくいくかな?」娘が実は息子だっただけでも、その衝撃はすさまじいものだったに違いない。実際それを経験したクリスは天地がひっくり返るほどの衝撃を受けた。そのわりにあっさり受け入れることができたのも、相手がアンジェラだったからだ。

「大丈夫よ。マーサもいるから」

確かに、マーサならソフィアをうまく言いくるめられるに違いない。すでにそうしているかもしれない。

「そういえば、ソフィアはどこへ寄り道するって?」旅程によっては年明けアップル・ゲートにいないかもしれない。計画を立てるなら綿密にしておかなければ、アンジェラを守れなくなる。

「お友達のところですって。それからたぶん、ロジャー兄様のところへ行くわ。お母様はアビーとロジャー兄様が二人でクリスマスを過ごすのを気にしていたから」心配そうに顔を曇らせたアンジェラは、クリスの腕にほっそりとした腕を絡めると肩にそっと寄りかかった。

「結婚前とはいえ、付き添いもついているし問題はないだろう?」結婚を渋っていたアビーの父親――貴族嫌いのバックス大佐――が許可を出し、二人は年明けまでラウンズベリー領で過ごす計画だ。父親が付き添わないのは――そんなものいるとは思えないが――各地を転々としていて日程が合わないのだから仕方がない。

「でも、何もないとは言い切れないでしょ」アンジェラが意味深に言う。もちろんクリスはその意味にすぐに気づいた。

「相手はロジャーだぞ。もちろんキスは別だ。ロジャーは初対面でしてしまったようだしな」

「ふふっ。ロジャー兄様もそういうことしてしまうんだってびっくりしたわ」

「魅力的な唇が目の前にあればキスをしてしまうのも仕方がないさ」ロジャーをやり込めるアビーの唇はさぞかし魅力的だったのだろう。そこから二年かけてようやく結婚までこぎつけた。さらにあと半年も待たなくてはならないのは、なかなか辛そうだ。「なあ、ハニー。せっかく二人きりになれたし、このあとベッドでのんびり過ごすってのはどうだい?」

「ベッドで?」

「そう、ベッドで。それともここで――」クリスはアンジェラを抱き寄せ、膝の上に乗せた。簡素なドレスのおかげでアンジェラのぬくもりが直に感じられる。

「ここで?」アンジェラは頬を真っ赤に染めた。

つい昨日まで家族用の居間はとても賑やかだったが、今は二人だけだ。ほっそりとした首筋に手を這わせあごを取ると、出来ないことなど何もないのだというようにアンジェラに口づけた。アンジェラはくすぐったそうに笑ったが、すぐにクリスの情熱的なキスを受け入れた。

邪魔者がいないだけでこれほど開放的になれるとは、二人で引きこもり生活をする日が待ち遠しい。ロジャーの結婚で先延ばしになってしまったが、あと一年の辛抱だ。

つづく


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