はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 234 [花嫁の秘密]

寝間着の上にガウンを羽織っただけのアンジェラは、母の言いつけ通り馬車の車輪が動き出すとすぐに邸内へと入った。外はまだ白み始めたばかりで雪もちらほら残るなか、ソフィアとマーサはフェルリッジを発った。アップル・ゲートへはまっすぐ戻らず寄り道をするのだとか。

「朝食くらい食べて行ったらいいのにね。もう三十分出発を遅らせるだけでいいのに」同じように寝間着にガウン姿のセシルが軽く伸びをしながら言った。もうひと眠りしたそうに、ふわぁとあくびをする。

「ほんと、こんなに急いで帰らなくたっていいのに。わたしもクリスも寝間着姿よ」

クリスがアンジェラの肩を抱く。「このまま着替えて朝食を食べに行くか、ベッドでもう少しだけまどろむか、どっちがいい?」見上げたアンジェラの額に口づけ、返事を待つ。

昨夜は眠りが浅かったし、もうひと眠りするのも悪くないのかもしれない。お母様と短いとはいえきちんと話もできた。気持ちの整理に時間はかかるだろうけど、マーサがきっとうまくやってくれるはず。

「僕は部屋へ戻るよ。でも、朝食はちゃんと食べるから残しておいてね」セシルは言って、のそのそと階段をのぼっていった。

アンジェラとクリスも自然とセシルに続いた。待ちかねていたように背後で使用人が動き出す。アンジェラはクリスの差し出した腕を取り、大それた告白をする前と何ら変わりないことに安堵していた。

「別れなさいって言われると思っていたの」昨日からずっと不安に思っていたことを口にする。言葉にしてしまえばそうなってしまう気がして、胸の内にとどめていた。

「まあ、言ってもおかしくはなかった。冷静になって考えがまとまれば、可能性はある。けど、そうなったら私とハニーのために説得はするつもりだ」

「説得できるかしら?」アンジェラは立ち止まり、クリスを見上げた。

「最悪、ばらすと脅せばどうにかなるんじゃないかな?」いたって真剣な口調だが、口の端に笑みがこぼれている。

アンジェラは思わず笑ってしまった。ばれたらみんな無事では済まないのに、それが最善に思えたからだ。婚姻は無効になっても、二人が一緒にいることは誰にも邪魔できない。

「でも、ばれたらロジャー兄様に殺されちゃうわ。アビーのためにも違う作戦を立てましょう」

「ああ、そうだな。でも、ソフィアはきっとわかってくれる。ハニーは自分が男だって知らずに育ってきたし、私も結婚するまでは知らなかったと聞けば――」ふいに言葉を切る。「いや、待て、知ってて誰も教えてくれなかったと怒るだろうか?」

「その可能性はあるわ。お母様はゴシップが大好きだもの。こんな重大な秘密を家族の中で最後に聞かされるなんて屈辱だと思うわ」

なんだか目が冴えてきた。お母様が朝まで口をきいてくれなかったのは、それが原因かもしれない。もちろん驚きもあったと思う。けどそれ以上に悔しかったのかもしれない。こうなってしまったいきさつと今現在誰が秘密を知っているのか、マーサが伝えてくれて、それが思った以上に知られていることに衝撃を受けたのかも。家族以外で知っている人もいるし。

今以上に気を付けないと、本当に世間に正体がばれてしまうかもしれない。

つづく


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