はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 413 [花嫁の秘密]

ブラックがリード邸の正門に到着したとき、すでに雨は止み、屋敷は薄もやに包まれていた。クリスマスの朝もこんな感じだったのだろうか。これなら闇に乗じて玄関先にプレゼントを置くのも簡単に思えた。

ミスター・ヘイズに礼を言い、通用門から中に入った。当然正門は閉じられている。ぬかるみを避けて屋敷の裏手に回った。

時間までは告げてないが、俺がここへ来ることは知らせてあるはずだ。勝手口から入り、入口に外套を引っかけると声のする方へ向かった。

「ブラックさん、ずいぶん早いですね。どうやってここへ?」ちょうど談話室から出てきたグラントが、にこやかにブラックを出迎えた。

グラントとは先日帳簿を取りに来た時に顔を合わせている。ダグラスの足元にも及ばないが、副執事をしていて留守の間の屋敷を任せられているようだ。

「荷物と一緒に運んでもらったのさ。サミュエル様は?」ブラックは荷物と一緒に運ばれてきた自分を思い出して苦笑いをした。かなり窮屈だったが、そう不快な旅でもなかった。

「まだおやすみです。遅くまで調べ物をすると言っていましたけど、朝食はいつも通りの時間で伺っています」いつも通りの時間がいったい何時なのかは知らないが、その時間が来ればグラントが教えてくれるだろう。

とはいえ、到着したことは告げておくべきだろう。本来なら夜のうちに着いて、ここですべきことの話し合いができていたはずだ。けど、そもそもあの人は俺にここで仕事を与えてくれるのだろうか。

「ブラックさん、熱いお茶でもいかがですか?」グラントが談話室へと促す。

「あとでいただくよ。荷物を置いて、サミュエル様に到着を告げてくる。それから、ブラックでかまわない」

階上は静まり返っていた。主人が不在の屋敷の使用人たちの朝はいつもよりものんびりしたものだ。サミュエル様は使用人たちの手を煩わせることもないから余計にだ。

部屋のドアが少し開いている。珍しい、というよりもありえない。もう起きているのだろうか、灯りが漏れている様子はないが。

ブラックはそのままドアを押し、部屋に足を踏み入れた。むっとするような匂い、乱れたベッドに横たわる肢体。娼館の用心棒時代こういう場面はいくらでも見た。

つまり、一人でここへ来たがっていたのはこのためだったというわけだ。相手はもう去った後か。

見慣れているはずの光景でも、嫌悪感を抱かないわけじゃない。エリック様との関係は?そう訊ねたい衝動に駆られたが、黙って引き下がるだけの分別はある。

この男に仕える選択をしたのは間違いだった。

「マーカス……」ふいにかすれ声が聞こえた。顔はベッドの足元側にあって、ブラックの方からは見えない。けれども何と言ったのかは聞き取れた。

まさか相手がよりによってあのマーカス・ウェストとはね。いったいどんな顔で向こうに戻る気だろう。

「み、ず……水を――」呻くように言う。

いくら腹が立っていても、サミュエル・リードは契約上俺の主人だ。水を持って来いと言われれば、持っていく。

部屋を横切りコンソールの上の水差しを手に取りグラスを満たした。部屋にはかすかに酒の甘ったるい香りも混ざっていたが、飲んだのはベッドの上で伸びている主人かすでにこの場にいないマーカス・ウェストか。

ブラックはサミーの目の前にグラスを差し出した。手を伸ばすでもなく、ブラックは仕方なしに口元にグラスをつけた。主人はようやく顔を上げて、そこにいるのがマーカス・ウェストではないと気づいたようだ。

つづく


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