はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 410 [花嫁の秘密]
さすがにこの状況で、これからも関係を続けようなどと言えるはずがない。
今回一度限りだからこそ、ここまでしている。
抵抗しない者を抱いて楽しいか?その問いへの返事はひとつ、イエスだ。少なくとも今回は自分の意思で相手を選んでいる。
思えばサミュエルと別れてからすべてが変わった。仕事を失ったうえ――半分は遊びだったがそれでも仕事は仕事だ――父は援助を再開しようとはせず行き場を失った。知人のつてをたどり、行き着いたのがアレグリーニ夫人のところだった。この出会いがなければ、今頃は何をしていたやら。
「相変わらず、貧相な身体だな」マーカスはサミーの胸に手を置いた。
冷静で几帳面なサミュエルらしく、心臓はゆっくり規則正しく鼓動している。背は離れてから一〇センチは伸びただろうか。もうあれ以上大きくならないと思っていたが、わからないものだな。そのわりに抱えた感じは軽かったが。
「そっちはずいぶん大きくなったな」挑むような目つき。なにか言い返さないと気が済まないようだ。
こんな状況でさえ生意気な口を利くサミュエルに思わず頬が緩む。おしゃべりなサミュエルも悪くない。
「この方が受けがいいんでね」結婚市場に出るような若い女は男らしさの欠片もないひょろひょろの奴等でもいいだろうが、すべてを知り尽くした女を相手にするには身体は大きくないとやってられない。
「そう。ジュリエットもそうだった?」
「サミュエル、言葉に気をつけろ。言っておくが、俺はあんな女と関係は持っていないからな」マーカスはサミーに馬乗りになった。時間もないし、この辺でおしゃべりは終わりだ。
「別にどっちでもいいけど……彼女はそんなに評判が悪いのか」サミーは考え込むように、目を閉じた。「マーカス、気分が悪い」弱弱しい声で付け加える。
「すぐによくなる」マーカスはサミーの声を無視して、耳のすぐ下に唇を押し当てた。「サミュエル、俺がどうしてクビになったか知っているか?」
「父は、僕が楽しく勉強しているのが気に入らなかったんだ。勉強はつまらないものだからね」
ということは、真実を知らないのか。こっちはいつばらされるかとびくびくしながら生きてきたというのに。侯爵が死んでどれだけホッとしたことか。
「今夜もきっと楽しめる」囁くようにして口づける。昔はあまりしたことなかったが、キスの仕方を教えたのも俺だ。残念ながら、初めての相手ではなかったようだが。いったい相手は誰だろう。そんな相手がいたとはまったく思えないんだが。
マーカスはくだらない感傷を振り払うようにキスを深めた。オールドブリッジを引き上げてから、なぜかやたらと苛々するし、焦燥感のようなものを感じる。なにかに突き動かされるようにここまで来たのも、それが原因だ。
「マーカス……」唇が解放された一瞬の間にサミーが呟いた。
「なんだ?」サミュエルに名前を呼ばれると、みぞおちのあたりがぞわぞわとする。
「言っても無駄かもしれないけど、僕は、したくない」ゆっくりと目を開けて、ひたと見据える。けれど、ぼんやりとしたその瞳にマーカスが映っているかはわからない。
「他に相手がいるのか?」考えもしなかったことだが、あのジュリエット・オースティンとのゴシップが目くらましという可能性もある。俺は男でも女でも別に同じだと思っているが、サミュエルもそうだとは限らない。
「そういうことじゃない、ただ、したくない」半分ほど開かれた唇からこぼれる言葉は、感情のほとんどが取り除かれていて、まるで機械仕掛けの人形のようだ。けどそんなものは俺には通用しない。昔もいまも。
「いつもそう言っていたな。でも、結局最後は俺の言うとおりにする、今夜もな」
つづく
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今回一度限りだからこそ、ここまでしている。
抵抗しない者を抱いて楽しいか?その問いへの返事はひとつ、イエスだ。少なくとも今回は自分の意思で相手を選んでいる。
思えばサミュエルと別れてからすべてが変わった。仕事を失ったうえ――半分は遊びだったがそれでも仕事は仕事だ――父は援助を再開しようとはせず行き場を失った。知人のつてをたどり、行き着いたのがアレグリーニ夫人のところだった。この出会いがなければ、今頃は何をしていたやら。
「相変わらず、貧相な身体だな」マーカスはサミーの胸に手を置いた。
冷静で几帳面なサミュエルらしく、心臓はゆっくり規則正しく鼓動している。背は離れてから一〇センチは伸びただろうか。もうあれ以上大きくならないと思っていたが、わからないものだな。そのわりに抱えた感じは軽かったが。
「そっちはずいぶん大きくなったな」挑むような目つき。なにか言い返さないと気が済まないようだ。
こんな状況でさえ生意気な口を利くサミュエルに思わず頬が緩む。おしゃべりなサミュエルも悪くない。
「この方が受けがいいんでね」結婚市場に出るような若い女は男らしさの欠片もないひょろひょろの奴等でもいいだろうが、すべてを知り尽くした女を相手にするには身体は大きくないとやってられない。
「そう。ジュリエットもそうだった?」
「サミュエル、言葉に気をつけろ。言っておくが、俺はあんな女と関係は持っていないからな」マーカスはサミーに馬乗りになった。時間もないし、この辺でおしゃべりは終わりだ。
「別にどっちでもいいけど……彼女はそんなに評判が悪いのか」サミーは考え込むように、目を閉じた。「マーカス、気分が悪い」弱弱しい声で付け加える。
「すぐによくなる」マーカスはサミーの声を無視して、耳のすぐ下に唇を押し当てた。「サミュエル、俺がどうしてクビになったか知っているか?」
「父は、僕が楽しく勉強しているのが気に入らなかったんだ。勉強はつまらないものだからね」
ということは、真実を知らないのか。こっちはいつばらされるかとびくびくしながら生きてきたというのに。侯爵が死んでどれだけホッとしたことか。
「今夜もきっと楽しめる」囁くようにして口づける。昔はあまりしたことなかったが、キスの仕方を教えたのも俺だ。残念ながら、初めての相手ではなかったようだが。いったい相手は誰だろう。そんな相手がいたとはまったく思えないんだが。
マーカスはくだらない感傷を振り払うようにキスを深めた。オールドブリッジを引き上げてから、なぜかやたらと苛々するし、焦燥感のようなものを感じる。なにかに突き動かされるようにここまで来たのも、それが原因だ。
「マーカス……」唇が解放された一瞬の間にサミーが呟いた。
「なんだ?」サミュエルに名前を呼ばれると、みぞおちのあたりがぞわぞわとする。
「言っても無駄かもしれないけど、僕は、したくない」ゆっくりと目を開けて、ひたと見据える。けれど、ぼんやりとしたその瞳にマーカスが映っているかはわからない。
「他に相手がいるのか?」考えもしなかったことだが、あのジュリエット・オースティンとのゴシップが目くらましという可能性もある。俺は男でも女でも別に同じだと思っているが、サミュエルもそうだとは限らない。
「そういうことじゃない、ただ、したくない」半分ほど開かれた唇からこぼれる言葉は、感情のほとんどが取り除かれていて、まるで機械仕掛けの人形のようだ。けどそんなものは俺には通用しない。昔もいまも。
「いつもそう言っていたな。でも、結局最後は俺の言うとおりにする、今夜もな」
つづく
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