はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 405 [花嫁の秘密]
突然何かが唇に触れたかと思うと、液体が否応なしに喉の奥まで流れ込んできた。溺れる感覚とも違う、ちょうど水面に顔を押し付けられたような、外から力を加えられているような感じ。
サミーはぐずぐず考えたりしなかった。ここがどこで何をしていたのか思い出すのは一瞬で、こんな悪質な悪戯ができるのは一人しかいない。結局ここへくることにしたのかと、アルコールにむせながら見上げると、予想外の人物が目に飛び込んできた。
現実とは思えず、こういう場合に言うべき言葉が何ひとつ思い浮かばなかった。
「マーカス?」アルコールでヒリつく喉から声を絞り出した。
「久しぶりだな、サミュエル」マーカスはこんな状況でも悪びれることなく言う。まるでほんの数日離れていただけのような馴れ馴れしさだ。
けれど、見た目はずいぶん変わった。過ぎた歳月だけ歳を取り、身体はひと回りは大きくなっている。鍛えているのだろうか。だが変わらないのはダークグリーンの瞳。ほのかな灯りの中でもはっきりと見える、あの支配的な目つき。
よくよく考えてみれば、エリックは一度も僕を乱暴に扱ったことはない。荒っぽい時もあるけれど、無理やり酒を飲ませる真似をするはずがなかった。
「どうやってここに?――苦いな、いったい何を飲ませた?」口の中に残るざらついた感触は農家で飲んだ薬草酒を思い出させた。あれは本当に最悪だった。キャノンのすすめる酒は二度と飲むものか。
「ただのブランデーだ。なぜここにいるとは訊かないんだな」マーカスはサミーの顔を覗き込み、にやりとした。
「訊いて欲しいのか?」
名刺ひとつで怯えていたのが馬鹿馬鹿しくなった。マーカスは元来自分勝手な男で、いつでも僕を支配できると思っている。けど、なぜいま?
最初目的は金かと思ったが、調べた限りではマーカスは金に困ってはない。潤沢とは言えないかもしれないが、よくわからないコンサルタントという仕事はそれなりにうまくいっているようだ。
「ずいぶんな口の利き方だな。会わないうちに俺の事を忘れたか?」
マーカスはなんと答えて欲しいのだろう。忘れたことはないと言って欲しいのか?
「それで、何の用?不法侵入してまで僕に会いたかったわけは?」サミーはつっけんどんに訊き返した。むかむかして気分が悪い。
「ちょっと確かめたいことがあってね」マーカスはベッドに横になり、肘をついてゆったりとした姿勢をとった。「お前、あの女と結婚するつもりか?」
「けっ……こん?」あの女?マーカスはいったい何を――「まさか、ジュリエットのことを言っているのか?」
「他にも候補がいるのか?」マーカスは馬鹿にした笑いを漏らした。「なぜあんな女と付き合う?」
「そんなのことを聞くためにわざわざ侵入したのか?こんなことして、見回りが来たらどう説明するつもりだ?」
「この屋敷の主は留守。弟のお前が兄の寝室で何をしていたのかは知らないが、見られたくはないだろう?つまり、見回りなんか来ない」
癪に障るが、すべてマーカスの言うとおりだ。
いますぐこんなくだらない会話をするのはやめて、マーカスを追い出すべきだ。けど、どうやって追い出す?質問に答えたら、こんな時間でも納得して出ていくのだろうか。そもそも、マーカスはどうやってここまで来た?マーカスがやすやすと侵入できたということは、他の誰でも侵入可能だ。
つまりクリスマスの朝、あの箱を届けた人物にとっても容易いことだったはず。その簡単な仕事を請け負ったのは誰か。そいつを見つけるためにここへ来たのに、僕はいったい何をしているんだ。
「僕が誰と付き合おうが関係ないだろ」マーカスを追い出そうと起き上がろうとしたが、身体が思うように動かなかった。飲まされたブランデーの影響かめまいがする。たかがあれだけで酔うはずもないのに。
「サミュエル……サミー、こっちを見ろ。確かに関係はないな。けど、お前が女と付き合えるとは思えない。ましてや結婚なんて――」
マーカスが延々としゃべり続けていたが、いったい何を言っているのかうまく聞き取れない。何かがおかしい。
「マーカス、僕に何を……し、た?」
つづく
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サミーはぐずぐず考えたりしなかった。ここがどこで何をしていたのか思い出すのは一瞬で、こんな悪質な悪戯ができるのは一人しかいない。結局ここへくることにしたのかと、アルコールにむせながら見上げると、予想外の人物が目に飛び込んできた。
現実とは思えず、こういう場合に言うべき言葉が何ひとつ思い浮かばなかった。
「マーカス?」アルコールでヒリつく喉から声を絞り出した。
「久しぶりだな、サミュエル」マーカスはこんな状況でも悪びれることなく言う。まるでほんの数日離れていただけのような馴れ馴れしさだ。
けれど、見た目はずいぶん変わった。過ぎた歳月だけ歳を取り、身体はひと回りは大きくなっている。鍛えているのだろうか。だが変わらないのはダークグリーンの瞳。ほのかな灯りの中でもはっきりと見える、あの支配的な目つき。
よくよく考えてみれば、エリックは一度も僕を乱暴に扱ったことはない。荒っぽい時もあるけれど、無理やり酒を飲ませる真似をするはずがなかった。
「どうやってここに?――苦いな、いったい何を飲ませた?」口の中に残るざらついた感触は農家で飲んだ薬草酒を思い出させた。あれは本当に最悪だった。キャノンのすすめる酒は二度と飲むものか。
「ただのブランデーだ。なぜここにいるとは訊かないんだな」マーカスはサミーの顔を覗き込み、にやりとした。
「訊いて欲しいのか?」
名刺ひとつで怯えていたのが馬鹿馬鹿しくなった。マーカスは元来自分勝手な男で、いつでも僕を支配できると思っている。けど、なぜいま?
最初目的は金かと思ったが、調べた限りではマーカスは金に困ってはない。潤沢とは言えないかもしれないが、よくわからないコンサルタントという仕事はそれなりにうまくいっているようだ。
「ずいぶんな口の利き方だな。会わないうちに俺の事を忘れたか?」
マーカスはなんと答えて欲しいのだろう。忘れたことはないと言って欲しいのか?
「それで、何の用?不法侵入してまで僕に会いたかったわけは?」サミーはつっけんどんに訊き返した。むかむかして気分が悪い。
「ちょっと確かめたいことがあってね」マーカスはベッドに横になり、肘をついてゆったりとした姿勢をとった。「お前、あの女と結婚するつもりか?」
「けっ……こん?」あの女?マーカスはいったい何を――「まさか、ジュリエットのことを言っているのか?」
「他にも候補がいるのか?」マーカスは馬鹿にした笑いを漏らした。「なぜあんな女と付き合う?」
「そんなのことを聞くためにわざわざ侵入したのか?こんなことして、見回りが来たらどう説明するつもりだ?」
「この屋敷の主は留守。弟のお前が兄の寝室で何をしていたのかは知らないが、見られたくはないだろう?つまり、見回りなんか来ない」
癪に障るが、すべてマーカスの言うとおりだ。
いますぐこんなくだらない会話をするのはやめて、マーカスを追い出すべきだ。けど、どうやって追い出す?質問に答えたら、こんな時間でも納得して出ていくのだろうか。そもそも、マーカスはどうやってここまで来た?マーカスがやすやすと侵入できたということは、他の誰でも侵入可能だ。
つまりクリスマスの朝、あの箱を届けた人物にとっても容易いことだったはず。その簡単な仕事を請け負ったのは誰か。そいつを見つけるためにここへ来たのに、僕はいったい何をしているんだ。
「僕が誰と付き合おうが関係ないだろ」マーカスを追い出そうと起き上がろうとしたが、身体が思うように動かなかった。飲まされたブランデーの影響かめまいがする。たかがあれだけで酔うはずもないのに。
「サミュエル……サミー、こっちを見ろ。確かに関係はないな。けど、お前が女と付き合えるとは思えない。ましてや結婚なんて――」
マーカスが延々としゃべり続けていたが、いったい何を言っているのかうまく聞き取れない。何かがおかしい。
「マーカス、僕に何を……し、た?」
つづく
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