はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 414 [花嫁の秘密]
「ブラック……?」
ああ、そうか。マーカスはもう行ったのか。まだ暗いし、そう時間は経っていないのだろう。鉢合わせはしなかったのか?
サミーは上げた顔を元に戻した。まだ頭がくらくらする。
「起き上がれますか?」丁寧だが声に嫌悪もしくは怒りが滲んでいる。この状況では仕方のないことだ。
サミーはどうにか首を振った。いったい僕はいまどんな格好で横たわっている?ブラックがこんな姿を見せられて契約違反だと言い出さなければいいけど。
何とか腕を持ち上げてグラスを受け取った。ブラックはすぐさま手を引き、その場を離れた。その気持ちはよくわかる。身体をねじって上を向くと、グラスを口につけて無理やり流し込んだ。ほとんどが口の両端から頬を伝ってこぼれたが、それでもヒリつく喉を潤すには充分だった。
「では、何かあれば呼んでください」
返事をするべきだったが、何時間も我慢していた吐き気がとうとう抑えきれなくなった。水なんて飲むべきじゃなかった。
シーツを掴み顔を埋める。胃と胸が痛み喉を伝って出てきたのは飲んだばかりの水だけ。出すものもないのに、それでも吐き気が止まらない。めまいがして気が遠くなる。
「いったい、どうしたんです?」
頭の上でブラックの声がした。まだいるとは思わなかったが、いたとしてもできることはない。せいぜい誰もここに入れるなと命じることくらいだ。
「平気だ。用があればベルを鳴らす」喉が痛み、声を張ることはできなかった。
「そうは見えませんが」ブラックの冷ややかな声。
おそらくブラックの言う通りなのだろう。マーカスは僕を抵抗できなくして、その意志に関係なくかつてのように抱いた。押さえつけ、何度も。身体のあちこちが痛むのはそのせいだ。抱き捨てられ、動けず、ベッドの上で嘔吐し、平気だと言っても何の説得力もない。
なんてざまだ。情けなくて笑わずにはいられない。エリックが知ったらきっと、ほら見たことかと馬鹿にするだろう。いや、絶対に知られてはだめだ。
ブラックにはこの状況の後始末を頼みたいが、説明や言い訳をする前に少し眠りたい。次に目覚めたとき、きっといまより少しは気分もマシになっているはずだ。
サミーは膝を抱えて丸まった。寒くて身体が震え、歯がカチカチと鳴る。
「どうやら楽しんだわけではなさそうですね。動けますか?」
ブラックがまだここにいて何か言っているのはかろうじて認識できたが、あいにくそれに答えることはできなかった。再び胃がせり上がり二度三度とえづく。吐き出してしまえば楽になれるのに、そうさせてくれないのは何かの罰だろうか。
「キャ……ノン」それだけ言って、サミーはまた深い闇に落ちた。
つづく
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ああ、そうか。マーカスはもう行ったのか。まだ暗いし、そう時間は経っていないのだろう。鉢合わせはしなかったのか?
サミーは上げた顔を元に戻した。まだ頭がくらくらする。
「起き上がれますか?」丁寧だが声に嫌悪もしくは怒りが滲んでいる。この状況では仕方のないことだ。
サミーはどうにか首を振った。いったい僕はいまどんな格好で横たわっている?ブラックがこんな姿を見せられて契約違反だと言い出さなければいいけど。
何とか腕を持ち上げてグラスを受け取った。ブラックはすぐさま手を引き、その場を離れた。その気持ちはよくわかる。身体をねじって上を向くと、グラスを口につけて無理やり流し込んだ。ほとんどが口の両端から頬を伝ってこぼれたが、それでもヒリつく喉を潤すには充分だった。
「では、何かあれば呼んでください」
返事をするべきだったが、何時間も我慢していた吐き気がとうとう抑えきれなくなった。水なんて飲むべきじゃなかった。
シーツを掴み顔を埋める。胃と胸が痛み喉を伝って出てきたのは飲んだばかりの水だけ。出すものもないのに、それでも吐き気が止まらない。めまいがして気が遠くなる。
「いったい、どうしたんです?」
頭の上でブラックの声がした。まだいるとは思わなかったが、いたとしてもできることはない。せいぜい誰もここに入れるなと命じることくらいだ。
「平気だ。用があればベルを鳴らす」喉が痛み、声を張ることはできなかった。
「そうは見えませんが」ブラックの冷ややかな声。
おそらくブラックの言う通りなのだろう。マーカスは僕を抵抗できなくして、その意志に関係なくかつてのように抱いた。押さえつけ、何度も。身体のあちこちが痛むのはそのせいだ。抱き捨てられ、動けず、ベッドの上で嘔吐し、平気だと言っても何の説得力もない。
なんてざまだ。情けなくて笑わずにはいられない。エリックが知ったらきっと、ほら見たことかと馬鹿にするだろう。いや、絶対に知られてはだめだ。
ブラックにはこの状況の後始末を頼みたいが、説明や言い訳をする前に少し眠りたい。次に目覚めたとき、きっといまより少しは気分もマシになっているはずだ。
サミーは膝を抱えて丸まった。寒くて身体が震え、歯がカチカチと鳴る。
「どうやら楽しんだわけではなさそうですね。動けますか?」
ブラックがまだここにいて何か言っているのはかろうじて認識できたが、あいにくそれに答えることはできなかった。再び胃がせり上がり二度三度とえづく。吐き出してしまえば楽になれるのに、そうさせてくれないのは何かの罰だろうか。
「キャ……ノン」それだけ言って、サミーはまた深い闇に落ちた。
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