はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 402 [花嫁の秘密]

フェルリッジのメイフィールド邸。

ここへ来るのは十年ぶりか、それ以上か。昼と夜、今日二度目の訪問だ。

懐かしさはない。ただあの頃と変わらず、すべてが規則正しく整った姿は、まだ前侯爵が生きているのかと錯覚を覚えるほどだ。

マーカス・ウェストは屋敷の裏手に回り、サンルームのフレンチ窓から中へ侵入した。鍵は掛かっていない。昼間のうちに少し細工をしておいたからだ。

ここには三年いた。正確には三年と五ヶ月か。この十年でみても、これほど長く滞在した場所はない。ひとつの場所に留まるのが苦手というわけではないが、たいていは一年ほどで飽きてしまう。とはいえ、この屋敷に何か特別な思い入れがあるわけではない。

サミュエルの家庭教師として有意義な時間は過ごしたが、ただそれだけ。

それなのになぜ、ここへ舞い戻ったのか。

オールドブリッジでの仕事を終え、実家に戻ったまではよかったが、そこにもやはり自分の居場所はなく鬱屈した日々を送るだけになった。事務所に寝泊まりして仕事漬けになるのも悪くないが、少し休みたかった。だから兄が何を言おうがしばらくは我慢していた。

自分は爵位を継げるからこの先安泰だと思っているのだろう。次男以下は手に職をつけさっさと屋敷から出て行けというのが長兄の考え方だ。
少し前までは父もそうだったが、歳を取って丸くなったのか、ただ単に話し相手が欲しいのかマーカスの帰宅をおおむね歓迎していた。

ある日、ゴシップ紙でサミュエルの名前を見つけた。まさかあのサミュエルがくだらないゴシップの的になるとはね。にわかには信じがたく、少し情報を集めた。兄のクリストファーが結婚したのはもちろん知っている。いつも鬱々としていた侯爵が亡くなって爵位を継いだことも。

葬儀に行こうなどとは考えなかった。父は不満そうだったが、当時なぜ家庭教師を辞めさせられたか知れば誘うことはなかったはずだ。それどころか絶対に顔を出すなと言い放ったことだろう。

目的はサミュエル、どうするかはまだ決めていない。確かめたいことがあって来たが、一度門前払いされているから勝手に入らせてもらったまで。悪いのはサミュエルだ。

マーカスは自身を納得させ、途中静まり返った客間を横切りボトルをひとつ手にした。緊張で喉の奥が詰まったような感覚に襲われた。

心配はいらない。邸内は熟知している。

それにサミュエルは何の抵抗もしないはずだ。なぜなら、できるはずがないからだ。

つづく


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