はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 401 [花嫁の秘密]

すっかり遅くなってしまった。

サミーは揺れる馬車の中から灰色の空を眺め、雨が降り出すのと屋敷に着くのとどちらが先だろうかと考えた。木々はすでに黒い影となっている。

列車の旅は順調で何も問題はなかったのだが、なにせ駅から屋敷までが遠い。それでも馬車の旅に比べれば格段に早いし、個室は広く快適に過ごせる。今回は荷物も少ないし、この身ひとつでいいのでかなり手間は省けている。

エリックがフェルリッジに専用駅を造れば、列車での移動ももう少し好きになれるだろうが、駅を造るのはあまり現実的ではない。領主だからといって土地を好きにできるわけではないし、きっとクリスは反対するだろう。

もう少し早く出て、時間があればキャノンのところに顔を出したかったが、明日直接屋敷へ来てもらうことにしよう。いまの時期はどうせ暇だろうし、話を聞きながらお茶を飲む時間くらいは作ってくれるはずだ。

屋敷に着くと、ダグラスの代わりにグラントが出迎えた。まだ若く頼りないところもあるが、ダグラスが留守の間、屋敷を任せられるまでになったらしい。

「おかえりなさいませ、サミュエル様」

ただいまと言うのは何かおかしい気もしたが、やはりここは自分の家で、ようやく戻ってきたと実感している。「ただいま、グラント。変わりはないかな?」クリスマスの飾りつけもすっかり片付き、家族みんなで浮かれ騒いでいたのが嘘のようにひっそりとしている。

「はい。旦那様と奥様が出掛けられてからは特に何も」グラントは背筋を伸ばして、サミーの次の言葉を待った。

「大騒ぎで出て行っただろう。まあ、それも仕方ないけどね」ダグラスからどこまで聞いているのかわからず、それ以上口にするのはやめた。本当はクリスの反応やアンジェラの様子を聞きたかったが、どちらにせよグラントでは答えられることに限りがあるだろう。

夕食は簡単なものを用意するように言って、書斎へ向かう。クリスが残した仕事があるだろうから、それを片付けつつ少し調べ物をしよう。遅れてくるブラックが、追加で情報を仕入れてくれているといいんだけど。

エリックがしつこいからブラックを同行させることにしたけど、いまはそうしてよかったと思っている。慌ただしくクリスたちがここを発ってからも、クリスマスの贈り物を玄関に置いた人物を調査員が探していたが、酒場でよそ者を見かけたという証言以外の成果は得られていない。

もちろんこれはエリックの言い分だ。スミス、とか言ったか、何の変哲もない地味なあの男が、雇い主の期待する結果を持たずにのこのこ戻ってきたとは思えない。必ずなにか見つけているはずだ。

明日以降ブラックに調査させれば、エリックが持っている情報と同等のものは手に入れられると確信している。

つづく


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