はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 396 [花嫁の秘密]
エリックがちょっとした集まりのいくつかに顔を出して帰宅したのは、午前二時を回った頃だった。
さすがに今夜は何も起こっていないだろうと、まっすぐ自分の寝室へ向かったが、そう甘くはなかったようだ。
エリックはブラックの気配を背後に感じ、足を止めた。今夜はもうくたくただし、これ以上の面倒はごめんだ。
「なんだ?」思った以上に不機嫌さが声ににじみ出た。
「あの方のことで、ひとつ」
「今度はなんだ?」そばにいないときに限って、絶対何か問題が起こる。ブラックがわざわざ耳に入れてくるということは、あの女関連か。
「手紙が届きました」
「内容は?」誰からか聞くまでもない。サミーからの連絡が途絶え、痺れを切らしたジュリエットが再び動き始めたのだ。それでも一週間よく我慢したものだ。
「パーティーの誘いのようでした」勝手に手紙を読んだのか、それともサミーから聞いたのか。ブラックの事だ、サミーに手紙を渡す前に一度開封して何事もなかったかのように元に戻したに違いない。
「返事は?」
「まだです。どうするつもりかまではわかりません」
「わかった」ったく、頭の痛い話だ。サミーはもうかかわらないと断言していたが、どういう行動に出るかわかったもんじゃない。「そうだ、ブラック」エリックは立ち去ろうとするブラックを引き留めた。
「明日からサミーが主人だ」いまブラックを手放せば、こういった情報を耳打ちしてくれる者がいなくなる。けど、サミーには自分の手足となって動く者が必要だ。「言うなと言われたこと以外は報告してくれ。これがお前をサミーに譲る条件だ」
ブラックはそのまま立ち去るかと思ったが、わざわざ戻ってきた。「スパイみたいであまりいい気はしませんが、あの方を守るためですから条件は飲みます。おそらく契約違反にもならないでしょうし」
「どうせ中に目を通してはいないんだろう?」サミーが気にするから形だけ契約書を作ったが、報酬の額以外見るだけ無駄だ。
ブラックは返事をしないまま闇にまぎれた。ここに送り込んだときはまさかこうなるとは思いもしなかったが、結果としては悪くない。警戒心の強いサミーが自ら従者にと望んだ。引きこもりのひねくれものにしては、大した変化だ。
このままサミーのベッドに潜り込もうかと思ったが、今夜はあまりに疲れすぎている。それに疲れているからといって、手紙の返事をどうするのか問い詰めないという保証もない。
自分の部屋に入ると、上着を脱いでソファに身を投げた。あと五時間もすればサミーの機嫌を損ねることなく話を聞き出せるはずだ。朝食の席にはセシルもいるだろうし、焦ることはない。ただこのままひと眠りして、身支度を整えて朝食ルームへ行くだけだ。
エリックは目を閉じた。もう一秒も瞼を持ち上げていられなかった。
つづく
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さすがに今夜は何も起こっていないだろうと、まっすぐ自分の寝室へ向かったが、そう甘くはなかったようだ。
エリックはブラックの気配を背後に感じ、足を止めた。今夜はもうくたくただし、これ以上の面倒はごめんだ。
「なんだ?」思った以上に不機嫌さが声ににじみ出た。
「あの方のことで、ひとつ」
「今度はなんだ?」そばにいないときに限って、絶対何か問題が起こる。ブラックがわざわざ耳に入れてくるということは、あの女関連か。
「手紙が届きました」
「内容は?」誰からか聞くまでもない。サミーからの連絡が途絶え、痺れを切らしたジュリエットが再び動き始めたのだ。それでも一週間よく我慢したものだ。
「パーティーの誘いのようでした」勝手に手紙を読んだのか、それともサミーから聞いたのか。ブラックの事だ、サミーに手紙を渡す前に一度開封して何事もなかったかのように元に戻したに違いない。
「返事は?」
「まだです。どうするつもりかまではわかりません」
「わかった」ったく、頭の痛い話だ。サミーはもうかかわらないと断言していたが、どういう行動に出るかわかったもんじゃない。「そうだ、ブラック」エリックは立ち去ろうとするブラックを引き留めた。
「明日からサミーが主人だ」いまブラックを手放せば、こういった情報を耳打ちしてくれる者がいなくなる。けど、サミーには自分の手足となって動く者が必要だ。「言うなと言われたこと以外は報告してくれ。これがお前をサミーに譲る条件だ」
ブラックはそのまま立ち去るかと思ったが、わざわざ戻ってきた。「スパイみたいであまりいい気はしませんが、あの方を守るためですから条件は飲みます。おそらく契約違反にもならないでしょうし」
「どうせ中に目を通してはいないんだろう?」サミーが気にするから形だけ契約書を作ったが、報酬の額以外見るだけ無駄だ。
ブラックは返事をしないまま闇にまぎれた。ここに送り込んだときはまさかこうなるとは思いもしなかったが、結果としては悪くない。警戒心の強いサミーが自ら従者にと望んだ。引きこもりのひねくれものにしては、大した変化だ。
このままサミーのベッドに潜り込もうかと思ったが、今夜はあまりに疲れすぎている。それに疲れているからといって、手紙の返事をどうするのか問い詰めないという保証もない。
自分の部屋に入ると、上着を脱いでソファに身を投げた。あと五時間もすればサミーの機嫌を損ねることなく話を聞き出せるはずだ。朝食の席にはセシルもいるだろうし、焦ることはない。ただこのままひと眠りして、身支度を整えて朝食ルームへ行くだけだ。
エリックは目を閉じた。もう一秒も瞼を持ち上げていられなかった。
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