はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 388 [花嫁の秘密]

アンジェラを無事ラムズデンに送り出す役目を果たしたセシルが、ようやくリード邸に戻ってきた。

「いやあ、まさかここを我が家のように思う日が来るなんてね」セシルは大げさに言って、再会できた喜びのしるしにサミーと軽く抱擁した。

「お前は向こうに戻ってよかったんだぞ」その脇でエリックが言う。駅まで迎えに行っていて一緒に戻ったところだ。

本来なら迎えなど必要ないが、サミーが朝からやけにそわそわしてセシルの帰宅を待っているのだから、適当に馬車を拾って帰って来いと言える状況でもなかった。まあ、ついでに先に話を聞いておこうと思い立たなければ、わざわざ俺が出向くこともなかっただろうが。

「リックこそ、まだここにいるとは思わなかったよ。うちの屋敷は開けたんだよね?」脱いだコートを従僕に手渡し、サミーと並んで居間へ向かう。

「ああ、ロジャーももう少ししたら出てくるだろうし、使用人も揃えておくように言っておいた」エリックは後ろを歩きながら、サミーが昨日までより楽しそうなことに気づいた。まったく、俺よりセシルと一緒の方が生き生きしているとはね。やはりセシルにはのんきな学生生活をやめてもらう必要がある。

「だったら君は向こうに行ったら?」サミーが肩越しに軽く振り向いて、素っ気なく言う。

「俺はあそこに居ついたことはない。たまに顔を出すからいいんだ」元々ひとつの場所にとどまるのは苦手で、十八歳の時にグランドツアーに出てからというもの、生まれ育ったラウンズベリーハウスにさえほとんど戻らなくなった。アップル・ゲートには定期的に行かなければならなかったが、滞在しても一日程度だった。

「そうそう。それでリックが来ると、みんな競ってお茶を出しに来たがるんだ」セシルは楽しげに笑った。兄を揶揄うとはいい度胸だ

「ここでもそうだけどね。でも、メイドはクリスたちがこっちに出てくるまではほとんどが他所にいるから、お茶を出すのはしばらくプラットの役目だけどね」サミーが言った。

いつもの場所に腰を落ち着けた三人は、さっそく情報交換を始めた。昼食を食べた後だったが、セシルの帰還とあって、この屋敷で一番大きなティーポットにたっぷりの紅茶と、焼き菓子数種、エクレアにマフィン、チェリータルトにミルフィーユ、それとアイスクリームがティーワゴンで運ばれてきた。

ほんの二週間いなかっただけでこの歓待ぶりには、呆れずにはいられない。

「ちょっとやらせすぎたかな。新しく菓子担当の料理人を雇ったから、腕前を見ておきたいっていうのもあったんだ」しばらく自分の好きにできるとあってか、サミーは階下の使用人を数人雇い入れている。

「長旅で疲れたから甘いものがちょうどいいや。僕のお昼はハムサンドイッチだけだったから、お腹もまだまだ空いてるしね」セシルはお腹をポンと叩いた。

「向こうを出る時にバスケットを用意してもらわなかったのか?」エリックは尋ねた。ロジャーがそういった準備を怠るはずがない。

「用意してもらったよ。朝早かったから、まあ……」セシルは照れた様子で肩をすくめた。

「ちゃんと食べたんだな、朝に、昼の分も」ったく、育ち盛りの子供じゃあるまいし。

「まあ……そういうことかな。そ、それよりさ、僕がいない間こっちで変わったことはあったの?カウントダウンイベントはどうだった?」セシルはさっそく、マーマレードジャムの練り込まれたマフィンに手を伸ばした。

「人が多くて吐き気がした、くらいかな」サミーは思い出したくないとばかりに身震いをした。

間違いなくサミーは吐きそうな顔をしていたが、そもそも自分で蒔いた種だ。あのくらいで済んでよかったと感謝して欲しいくらいだ。

「それよりも、ハニーの事を話せ」エリックは言って、アイスクリームの器を手に取った。食べるならまずは早くしないと溶けてしまうアイスクリームだろうに。

つづく


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