はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 378 [花嫁の秘密]

ステフに誘われて紳士クラブ<プルートス>に来たものの、ラウンジに一人置き去りにされて十五分は過ぎただろうか。いや、正確には一人ではなく、ミスター・リードも同じテーブルにいる。席に着いてから、初めて彼が口を開いた。

「君はお兄さんと会ったりしているの?」

ジョンは驚いて、手に持っていたワイングラスを置いた。飲もうかどうしようか悩んで、まだ口をつけていなかった。

「数ヶ月に一度、家の事で顔を合わせます。僕は暇なんですけど、兄は忙しくてなかなか予定が合わなくて」

ジョンの兄コッパー子爵レオナルド・スチュワートは、父の死後、十八歳で爵位を受け継いだ。二つ年上で、一度没落した家を再建するのにいまも苦労している。ジョンも手助けはしているが、無口な兄が何を考えているのかさっぱりわからず、領地運営もうまくいっているのかどうかもわからない。

「そう。でも君はそんなに暇そうには見えないけど」

「いえ、うちの事務所は本当に暇なんです。アルフが、いえ、アルフレッド様が持ってくる案件がなければとっくに潰れていますよ」

S&J探偵事務所を開いて約五年、いまだ自立しているとは言い難い。けどそれも自分だけのような気がする。相棒のステフは父親から譲り受けた鉄道事業の成功で、かなりの資産家だ。表向きそう見せないようにしているのは、僕に気を使っているから。

「エリックがよく仕事を頼んでいるみたいだけど」ミスター・リードはお腹が空いていたようで、飲み物には目もくれずカナッペを端から順に食べている。

ジョンもキャビアの乗ったカナッペに手を伸ばした。今夜はミスター・コートニーのおごりだから、遠慮はしない。

「そうなんです。ミスター・コートニーには、仕事をたくさん持ち込んでもらって助かっています。今度どこかに駅を作ってくれって言っていましたけど、確かフェ――」あ……これは秘密だっただろうか。それとも、ステフにこのクラブの共同経営者になれと言っていた方が秘密だっただろうか。ジョンは強引にカナッペで口を塞いだ。

「駅を作る?どこに?」ミスター・リードから愛想のよさが消えた。おそらく怒っている。

遅かった。どうしよう、ステフに怒られる。ああ、でも早く戻って来て。

ジョンは無心で口を動かした。そうしている間は答えなくていいから。

つづく


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