はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
不器用な恋の進め方 8 [不器用な恋の進め方]
クリスに促され書斎へ入ったアーサーは、扉をしっかりと閉めると、たっぷりとウイスキーの注がれたグラスをクリスの手からひったくるようにして、一気に飲み下した。
「アーサー、もう少し落ち着いて飲めよ」
自分がウイスキーでも煽ってと勧めたくせに、あまりに乱暴な飲み方をするアーサーにクリスはとりあえず忠告すると、自分もグラスを口に運んだ。
「お前が俺をロンドンへ呼び出したときよりかはましだろう?」
以前アーサーはクリスに呼び出され、領地からはるばるロンドンまで出て来たことがある。その時、クリスは酒を煽り、酷いありさまだった。
今はすこぶる上手くいっている夫婦だが、一体あの時何に悩んでいたのかは今でもわからない。
特に知りたくもないが……。
クリスはアーサーが喋り出すのを待っていた。
そんなに待ちかまえられると、かえって話し出せないではないかと思いつつ、もったいぶったように口を開いた。
「先ほどテラスでメリッサ嬢と一緒だった」
「それはさっき聞いた。そのために、この舞踏会を開いたようなもんだ。それで、一体何がどうなっている」
「わからない。彼女に新聞記事について何か言って、それでキ…キスをして、いや、まずはキスをしたのか?とにかくパトロンがいるのかと、彼女を蔑むような言葉を吐いた」
目の前の友人が混乱した表情で自分を見ているのに気づいた。
お前のその表情はもっともだと、アーサーは心の中で思いつつ、自分でもどうしてこうなってしまったのか分からず同じように困惑する。
「確認しておくが、確かお前はメリッサ嬢が好きだと俺に言ったよな。結婚したいとも言ったよな」
「ああ、そうだ。それは今でも変わっていない」
「キスは、わかるが、どうして彼女を侮辱するようなことを?」
「そのキスに何も感じて貰えなかったからかもしれない。彼女は、なんというか慣れたふうだった」
「それはしょうがないだろう?実際彼女にパトロンがいるかどうかは知らないが――俺はいないと思うが、そういうのも含めてすべてを受け入れなければ、女優となんて結婚も出来ないし、愛せもしない」
「わかってはいるが……くだらないゴシップだと分かっていても、彼女が他の誰かのものだったらと思うと耐えられなかったんだ」
アーサーはデキャンタを乱雑に掴み、ウイスキーをグラスに注ぐ。
「それは、分かる気がするな……。妻には誰も触れて欲しくないと俺も思う。噂程度でも、きっと髪を逆立て、嫉妬してしまうだろうな」
クリスは落ち着かない表情になっていた。きっと愛する妻を思い浮かべ、すぐにでも会いたくてたまらないのだろう。
それに気付いたアーサーはウイスキーをぐいっと飲み干し、「とにかく今日は帰る。少し頭を冷やして、近々彼女に謝りに行こうと思う」と、弱弱しく言った。
「そうだな、それがいいだろう」
ホッとしたような友人の顔を見て、アーサーは幸せな気持ちになった。
つづく
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「アーサー、もう少し落ち着いて飲めよ」
自分がウイスキーでも煽ってと勧めたくせに、あまりに乱暴な飲み方をするアーサーにクリスはとりあえず忠告すると、自分もグラスを口に運んだ。
「お前が俺をロンドンへ呼び出したときよりかはましだろう?」
以前アーサーはクリスに呼び出され、領地からはるばるロンドンまで出て来たことがある。その時、クリスは酒を煽り、酷いありさまだった。
今はすこぶる上手くいっている夫婦だが、一体あの時何に悩んでいたのかは今でもわからない。
特に知りたくもないが……。
クリスはアーサーが喋り出すのを待っていた。
そんなに待ちかまえられると、かえって話し出せないではないかと思いつつ、もったいぶったように口を開いた。
「先ほどテラスでメリッサ嬢と一緒だった」
「それはさっき聞いた。そのために、この舞踏会を開いたようなもんだ。それで、一体何がどうなっている」
「わからない。彼女に新聞記事について何か言って、それでキ…キスをして、いや、まずはキスをしたのか?とにかくパトロンがいるのかと、彼女を蔑むような言葉を吐いた」
目の前の友人が混乱した表情で自分を見ているのに気づいた。
お前のその表情はもっともだと、アーサーは心の中で思いつつ、自分でもどうしてこうなってしまったのか分からず同じように困惑する。
「確認しておくが、確かお前はメリッサ嬢が好きだと俺に言ったよな。結婚したいとも言ったよな」
「ああ、そうだ。それは今でも変わっていない」
「キスは、わかるが、どうして彼女を侮辱するようなことを?」
「そのキスに何も感じて貰えなかったからかもしれない。彼女は、なんというか慣れたふうだった」
「それはしょうがないだろう?実際彼女にパトロンがいるかどうかは知らないが――俺はいないと思うが、そういうのも含めてすべてを受け入れなければ、女優となんて結婚も出来ないし、愛せもしない」
「わかってはいるが……くだらないゴシップだと分かっていても、彼女が他の誰かのものだったらと思うと耐えられなかったんだ」
アーサーはデキャンタを乱雑に掴み、ウイスキーをグラスに注ぐ。
「それは、分かる気がするな……。妻には誰も触れて欲しくないと俺も思う。噂程度でも、きっと髪を逆立て、嫉妬してしまうだろうな」
クリスは落ち着かない表情になっていた。きっと愛する妻を思い浮かべ、すぐにでも会いたくてたまらないのだろう。
それに気付いたアーサーはウイスキーをぐいっと飲み干し、「とにかく今日は帰る。少し頭を冷やして、近々彼女に謝りに行こうと思う」と、弱弱しく言った。
「そうだな、それがいいだろう」
ホッとしたような友人の顔を見て、アーサーは幸せな気持ちになった。
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2011-06-16 00:01
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