はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

満ちる月 4 [満ちる月]

<ウナ・フォグリア>が開店して間もなく、空はマネージャーとしてこの店にやって来た。
そして望月に一目惚れをしてしまった。
それは空の人生の中で一度もなかった現象だ。一目惚れなんてものの存在すら否定していた。けれど、実際してしまったのだから認めるしかない。

通常なら相手がノンケかゲイかすぐに見分けられるのに――見分けるというよりも感じると言った方がいい――望月に関しては暫く気が付かなかった。それだけ一瞬のうちにのめり込んでしまっていたのだ。
実際どこに惹かれたのかは分からなかった。一目惚れというからには容姿に惚れたのだろうと思う。とても繊細で綺麗な顔立ち。明るく朗らかな表情なのにそれだけではない何かを感じた。

空はそんな気持ちを隠そうとはみじんも思っていなかった。
望月がゲイだと気付いた時に、すぐさまモーションをかけようとしたが、それと同時に彼には好きな人がいる事に気付いた。

気付きたくなかった。
それはとても苦しそうで見ていられないほどだった。

結局、空はそんな望月に気持ちを伝える事は出来なかった。

相手はどんな子なのだろう?
彼のプライベートは一切わからなかった。店長という立場がそうさせているのだ。休みの日にも店に顔を出すこともあるし、きっと店にいない時も店の事を考えているのだろう。そういう人柄なのだろうと容易に想像できた。

現在、空の会社での立場はとても中途半端な状態だ。
高塚物産ではレストランプロデュースをいくつも任されてきて、実際会社が経営するレストランのほとんどが空の作った店といってもいい。経営状態も上々、グルメ雑誌にも何度も紹介されているし、店だけでなく空も雑誌に何度か載った事がある。

そんな空が、すでに出来上がった店のマネージャーを任された。それも別会社に出向という形で。これは明らかに降格人事だ。この時空は以前何度も考えた独立という道を選ぼうと思ったほど、屈辱的な事だった。けれど、今の社長には到底返せないほどの恩義がある。
それに、ここで望月と出会ってしまった。

だからこの屈辱的な人事も受け入れた。

片想いしてもうすぐ一年、もう諦めようと思っていた時、望月の表情が以前のものとガラッと変わった。
何か吹っ切ったような穏やかな表情に変わっていた。

今がチャンスなのかもしれないと思った矢先、自分の方にも変化が訪れた。

突然降って湧いた引き抜き話。いや、以前にも何度かあった話だ。
独立する事さえ躊躇う程なのに、他の会社へ移るなど全く考えられない事だった。今までは。
けれど、以前とは事情は変わっている。
自分を捨てた会社に痛手を与えられるなら、この引き抜きに応じるのも悪くはないのかもしれない。

それに到底報われそうにもない片想い中なのだ。こちらの方が空にとってはこの引き抜きを受けるか否かの判断材料になっている。
これ以上望月の傍にいても仕方がない。誰かに思いを寄せる望月に自分の気持ちを伝えることすら出来ずにいるのだから。
切ない彼の表情を見る余裕もなく、店に顔を出す回数すら減る始末だ。
まったく、自分らしくない。気持ちひとつ言えず、辛いから傍にいたくないなどと思ってしまうとは、本当に自分はどうしてしまったのか。
もしも、この話を受けてしまえばすべてから解放されるのだろうか?

だが、望月の表情が変わった今なら、彼は僕を受け入れてくれるのではないかと、淡い望みを抱いていた。

つづく


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