はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

満ちる月 3 [満ちる月]

望月が任されている店の経営はいたって順調だ。
容の代わりに来たマネージャーは、本社からではなく、共同出資している高塚物産から出向している人だ。

「空さん、今日はどうしたんですか?」
店のマネージャーに向かってこんなことを口にするのもどうかとは思うが、彼が店に顔を出したのはおおよそ三週間ぶりだ。望月がそう口にするのも仕方がない。

望月のその言葉に、空は目を細め微笑んだ。
彼はいつも目を細め微笑んでいる。長い睫に縁どられた茶色い瞳はとても澄んでいて、店の子達は空の笑顔にいつもとろけそうな表情をする。それが仕事へプラスに働くので、毎日でも店に来て欲しいと密かに望月は思っていた。開店当初は毎日のように顔を出していたが、今では二,三週間に一度といったところだろうか。
経営状態がいいため特に口出しされることもなかった。

「君だけだよ、僕が顔を出してそんな風に言うのは」
特に嫌味でもなく呆れたように言う空に、望月は思わず赤面した。

望月は店の店長だが、立場的には空の方が上だ。優しそうだからといって、口のきき方には気を付けなければいけない。

「すみません……」

「いや、別に気にしてないし、本当の事だからね」
恐縮する望月に、空は優しい笑みを向ける。

***

この日を境に、空が頻繁に店に顔を出すようになった。

これが、容だったら――

店のパソコンで経営状態をチェックしている空を横目で見ながら、そんな事を思っていた。
空は容とは全くタイプが違うように見える。
同じように女性の視線を惹きつけるほどの容姿で、背格好も同じくらい、いや、容の方がもっと逞しくて凛々しい。
真っ直ぐな黒髪の容とは対照的に、空の髪は緩くウェーブし、瞳の色と同じように茶色がかっている。それは空の優しい微笑みと同じく柔らかい印象を醸し出している。
歳は十歳以上も違うのに、二人とも自分とは違って堂々としていて、大人を感じさせる。
性格はどうなのだろうか?

「何?」
望月の視線を痛いくらい感じた空が顔を上げた。

「あっ、いえ。随分長い時間チェックされているので…」
もっともらしい言葉を返す。
あまりに綺麗な顔立ちに見惚れ、更には好きな男と比べてましたとは言えない。

「ああ、僕もたまには仕事をしないとね」
そんな望月の心の内など知る由もなく、空は真面目な顔を崩しまた微笑む。

望月はつられて微笑み返した。

つい容の事を考えてしまう。お店での幸せだったひとときはもう終わり、彼はマネージャーから副社長になっている。きっとここへ来ることも無いのだろう。それは意図してかどうかは分からないが。
だが、容の事はもう吹っ切ったのだ。
そう自分に言い聞かせる。
容への長いようで短い片想いは、容の謝罪で終わりを告げた。もう、前へ進む準備は出来ている。

つづく


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