はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

満ちる月 2 [満ちる月]

「おい…こっちに来ないか?」
寝ていると思っていた容に声を掛けられ、望月の心臓が跳ねた。
「あのっ…大丈夫ですから……俺は下で眠りますから…」
「そういう意味じゃない」
望月の戸惑いをよそに、容がベッド下の望月に手を伸ばした。
望月はそのままふらりとベッドに上がり、容に絡めとられてしまった。
唇が触れそうなほど顔が近付くが、容は決して望月に唇を渡してはくれなかった。

「んっ…んふ……ぁ……んんっ、あさのさん…んんっ」
望月は今、容の腕に抱えられ、その上で腰を揺り動かしている。
いつの間にこんな状態になったのか、思い出せなかった。ずっと望んでいたことが現実になっているというのに、完全に脳内は麻痺してしまったようだ。

目の前の容を見れば、愛おしそうな目をこちらに向けている。
しかしそれは望月に向いているだけで、決して望月は見ていない。
それでも望月は、いまのこの悦びに身を埋めていた。

容の指をその唇を貪るようにしゃぶると、今にも達してしまいそうだった。
それをなんとか我慢して、容に気持ちよくなって貰いたくて必死に動いた。
容が満足しているのかどうなのかは望月には分からなかった。
自分の方が気持ち良すぎておかしくなっていたからだ。
「あっ、ああっ…もっとっ……」
望月が声を出して求めれば、容が下から思い切り突き上げて、もっと気持ちよくしてくれる。
そして、気が遠のく寸前望月も容もお互いが精を吐き出した。

暫く、望月は気を失っていたように思う。
ふっと気が付き目を開けると、容がベッドから降りて着替えようとしているのが見えた。

急に胸が苦しくなった。
最初から分かっていたのに、行為が終わってしまえば、ここから容が去っていくことは分かっていたのに、それでも言わずにはいられなかった。

「あの…帰るんですか?俺…ずっと浅野さんの事が――」
容はすぐさま望月の言葉を遮った。
「もうここには来ないし、お前も抱かない。一度きりだ」
「別に好きになってもらわなくてもいいんです。ただ何かあった時に俺を思い出してくれれば…」
そう、それでもいい。辛そうな瞳で見つめられながら抱かれても、それで満足してもらえるなら――
望月はそれ以上何かを求める気はなかった。望月の恋の仕方はいつもそうだった。
しかし、容の口からは望月が期待するような言葉は出てこなかった。

「悪いけど――」

そのまま帰って行く容の背を見ながら、失恋した悲しみと抱かれた悦びとの狭間で、結局苦痛に耐える事しか出来なかった。

「キスひとつ許してくれなかったもんな……」
ぽつりと呟いた後、望月は声を押し殺すように枕に顔を埋め咽び泣いた。

それから店が開店するのを見届けて、容は本社勤務に移り、今は副社長となっている。


その次の春、一葉がこの会社に入社してきた。
そして容と同じ社長の息子で容の秘書をしている。
二人の姿を見た瞬間、すぐに分かった。自分を抱いていたときに見せた誰かを愛おしそうに見る目は、一葉に向けられていたものだったことを。
あの時、何があったのかは分からないが、二人の関係は最初から自分が間に入り込めるような隙など少しもなかったことに気付いた。

本社会議があったその日は店休日もあり、社内の飲み会に参加した。
そこで容とあの時以来最も近づくことが出来た。
気付けば隣に座り、酒を注いだりしていた。まさかこんな日が来るとは思いもせず、なんだかおかしくて笑みが零れた。

その時、容があの時の事を謝ってきたのだ。
気持ちにつけこみ、酷いことをした。すまなかったと――

本当は気持ちにつけ込んだのは自分の方なのかもしれない。
あの時、自分は何かを期待していた。身体もそれ以上の繋がりも。

だが、そっと小声で言われた謝罪をそのままありがたく受け取ることにした。
ゆっくりと微笑み、ありがとうございますと答えた。

これでやっと容への気持ちに終止符を打って、前へ進めそうな気がした。

つづく


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