はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

満ちる月 1 [満ちる月]

『満ちる月』あらすじはこちら → 



「やっぱり素敵だなぁ…浅野副社長」
月に一度の本社会議に出席した、イタリアンレストラン『リストランテ ウナ・フォグリア』店長の望月は、容が副社長という肩書になって初めて顔を合わせた。合わせたと言っても、容の視線が望月に向くことはなく、一方的に見つめていただけだったのだが。

容が会社に入社してきて初めて目にして以来、密かに想いを寄せ、新しい店で一緒に働くことになった時は嬉しくて顔は綻び、緊張と興奮で全身が震えるほどだった。
すでに開店準備に追われていた望月は、後からマネージャーとしてやって来た容をサポートする役にまわった。
容は望月が思っていたよりも店作りに真剣に取り組み、他の者と同じく夜遅くまで働いていた。
社長の息子で、マネージャーという役目、それはただの飾りみたいなもので、こんなに真剣に仕事をするとは正直、思っていなかったのだ。

そして、ほぼ開店準備が整ったあの晩、望月は少し休むつもりでソファに座ったまま転寝をしてしまっていた。

*****

「おいっ、何してる?」
店内の奥でテーブルに突っ伏すようにして眠る望月は突然の声に飛び起きた。
「えっ、あっ…すみません。帰ろうと思ってちょっと休んでたら眠っちゃって」
慌てて身を起こし、乱れた髪を直しながら声の主、容を見た。
まさかこんなところを見られるなんて、望月は驚きつつも容がなぜここにいるのか気になった。
「マネージャーこそどうしたんですか?準備ももう落ち着いたし、あとやることといえば社長のチェックが無事済むのを待つだけですよ」
「別に、仕事をしに戻ったわけではない……」
それでは、なぜここに?と聞きたくなるのを我慢し望月は顔を伏せるように容の傍をすり抜けようとした。
「そうですか…じゃあ、俺帰ります…」
すれ違いざま、容をちらっと見た。
背の高さは同じくらい、視線がぶつかり、上気していた頬がもっと熱くなるのを感じた。
「家近いのか?」
その言葉に望月はすぐさま足を止めた。
「ええ、すぐ近くのマンションですけど――」
「少しだけ寝させてくれないか」
容のその言葉の意味が最初は分からなかった。
俺の家に来るということなのだろうか?そういう意味に聞こえたのに、あまりの突然のことに望月は混乱していた。
「えっ、うちでよければ……あの、ぜひっ」
耳まで真っ赤になっているのが分かる。顔も嬉しさのあまりどうしようもなく緩んでいるのも分かった。

それから二人は無言で望月のマンションにたどりついた。
望月は体がふわふわとしてちゃんと歩けているのかさえ分からなかった。
数歩後ろを容がついて来ていると思うと、背中が痺れるように熱くなっていた。

望月はそんなに広くもない単身者用のマンションに住んでいる。
玄関を入り細長いキッチンを抜けて、その先に八畳ほどの部屋がある。
ベッドにパソコンデスク、本をよく読む望月は大きな本棚を置いている。それだけで部屋はほとんど占拠され、思ったよりも狭く感じる。

マネージャーと呼ぶべきなのか、名前を口にしていいものか躊躇う。
「浅野さん、どうぞベッド使ってもらっていいですから」

望月は容にベッドを提供し、自分はすっきりするためシャワーを浴びに行った。
もちろん、特に意味があってそうしたわけではなかった。
ただこの狭いマンションの一室に二人きりという状況が耐えられなかったのだ。
激しく脈打つ心臓の鼓動が静かな室内に響いているのではと疑う程だ。

シャワーを浴びおそるおそる部屋へ戻ると、容はベッドにうつぶせに寝転がっていた。
望月は少し安堵した。今目線を合わせれば、自分の脳内は麻痺してしまいそうだと思ったからだ。

ベッドの下にごろんと横になり、なんとか眠ろうと目を瞑ってみるが、そう思えば思うほど、どんどん興奮してくるのが分かる。
それでも、自分の部屋で、自分のベッドで容が眠っていると思うだけで、その興奮とは裏腹に心が満たされていくのを感じた。
望月はそれで満足だった。ただ一方的に容を想い、傍で働けるだけで幸せだったのだ。

つづく


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あとがき
こんにちは、やぴです。
ちょっぴり健気で思い込みの激しい望月のお話です。
お話は『ひとひら番外編副社長と秘書』の会議後から始まり、
1,2話はひとひら52話のあの夜のお話です。

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