はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 6 [花嫁の秘密]
屋敷の門の外に広がる、りんごの並木道。
秋になり実がなれば、香ばしいアップルパイが毎日のように食べられる。
そんな木を今まで見る事さえできなかったなんて――
屋敷から並木道を抜け橋を渡れば教会がある。
小さな教会で、少し朽ちかけている。牧師さんは大分年を取った方で、教会の隣に住んでいると母が以前言っていた。
この牧師館を中心に村が広がっているのだという。
アンジェラはとてもわくわくしていた。
初めて屋敷の門の外へ出たのだ。それも一人で。
知らなかった世界だが、案外屋敷の庭と大差ないのね、と今まで外へ出るのを怖いと思っていたことが馬鹿らしくなった。
ちょうど並木が途切れ、細い道と交差している場所までやって来た。
振り返ると、まだ屋敷の門は大きくその目に映った。だが、それでも満足だった。
アンジェラがまた前を向き教会までの道を歩き始めると、交差する道の脇から急に馬が現れた。
驚いたアンジェラは尻もちをついて転んでしまった。その拍子に手から落ちた日傘が転がる。
飛び出してきたと思った馬は、実際はゆっくりと歩み出て来ただけだったのだ。
転んでしまう程驚いてしまったアンジェラは、自分が恥ずかしくなった。
やはり初めての外出には少なからず恐怖心があったようだ。
立ち上がろうとするアンジェラの前に、すっと黒革の手袋に覆われた手が差し出された。
アンジェラは馬に人が乗っていた事にも気づいていなかった。差し出された手に驚き顔を上げると、鮮やかな赤が目に飛び込んできた。
メイフィールド侯爵!
アンジェラは差し出された手は取らなかった。一人で立ち上がり膝を軽く折り侯爵に挨拶をすると、脇に転がる日傘を拾う事も忘れ、そのまま教会に向かって歩き始めた。
打ちつけたお尻が痛かった。
アンジェラが着ているドレスはそんなに膨らみもなく、ドレスの下は下着とペチコートを一枚穿いているだけだ。ほっそりとした身体にはコルセットも不要だった。
もちろんそれらしく見えるように、マーサがドレスを仕立屋に注文した後で補正をしてくれているのだ。
とにかくアンジェラはこの場を早く去ることしか考えていなかった。だから、まさか侯爵に腕を掴まれるなど思いもしなかったのだ。
「お待ちください」
侯爵はアンジェラを振り向かせるように、掴んだその腕を引いた。
アンジェラは怖かった。普通ならこんなことありえないからだ。勝手に身体に触れてくるなど――
アンジェラはすっかり怯えきり何も言えず、侯爵のその手を振り払うことも出来なかった。
つづく
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秋になり実がなれば、香ばしいアップルパイが毎日のように食べられる。
そんな木を今まで見る事さえできなかったなんて――
屋敷から並木道を抜け橋を渡れば教会がある。
小さな教会で、少し朽ちかけている。牧師さんは大分年を取った方で、教会の隣に住んでいると母が以前言っていた。
この牧師館を中心に村が広がっているのだという。
アンジェラはとてもわくわくしていた。
初めて屋敷の門の外へ出たのだ。それも一人で。
知らなかった世界だが、案外屋敷の庭と大差ないのね、と今まで外へ出るのを怖いと思っていたことが馬鹿らしくなった。
ちょうど並木が途切れ、細い道と交差している場所までやって来た。
振り返ると、まだ屋敷の門は大きくその目に映った。だが、それでも満足だった。
アンジェラがまた前を向き教会までの道を歩き始めると、交差する道の脇から急に馬が現れた。
驚いたアンジェラは尻もちをついて転んでしまった。その拍子に手から落ちた日傘が転がる。
飛び出してきたと思った馬は、実際はゆっくりと歩み出て来ただけだったのだ。
転んでしまう程驚いてしまったアンジェラは、自分が恥ずかしくなった。
やはり初めての外出には少なからず恐怖心があったようだ。
立ち上がろうとするアンジェラの前に、すっと黒革の手袋に覆われた手が差し出された。
アンジェラは馬に人が乗っていた事にも気づいていなかった。差し出された手に驚き顔を上げると、鮮やかな赤が目に飛び込んできた。
メイフィールド侯爵!
アンジェラは差し出された手は取らなかった。一人で立ち上がり膝を軽く折り侯爵に挨拶をすると、脇に転がる日傘を拾う事も忘れ、そのまま教会に向かって歩き始めた。
打ちつけたお尻が痛かった。
アンジェラが着ているドレスはそんなに膨らみもなく、ドレスの下は下着とペチコートを一枚穿いているだけだ。ほっそりとした身体にはコルセットも不要だった。
もちろんそれらしく見えるように、マーサがドレスを仕立屋に注文した後で補正をしてくれているのだ。
とにかくアンジェラはこの場を早く去ることしか考えていなかった。だから、まさか侯爵に腕を掴まれるなど思いもしなかったのだ。
「お待ちください」
侯爵はアンジェラを振り向かせるように、掴んだその腕を引いた。
アンジェラは怖かった。普通ならこんなことありえないからだ。勝手に身体に触れてくるなど――
アンジェラはすっかり怯えきり何も言えず、侯爵のその手を振り払うことも出来なかった。
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2011-01-14 00:07
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