はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 5 [花嫁の秘密]

アンジェラは朝食のときにはココアを飲むことにしている。
甘ったるくてほろ苦いココアは、味はもちろんその香りだけで満足させられる。

ロジャーは先に朝食をとり、セシルも既に済ませて朝の散歩へ出かけてしまっている。ということは母の相手はいつも通り自分がしなければならない。

「お母様、わたし、結婚なんてしたくないわ」
侯爵が屋敷を訪れた後、幾度となく繰り返されている言葉だ。

「大丈夫よ、アンジェラ。何も怖い事なんてないのよ、きっと侯爵様はあなたを大切にして下さるわ」

「どうして急にそんなこと言うの?今まで屋敷の外へ出ることも駄目だったのに、急に知らない場所へ行って、どうやって今までのように暮らせるって言うの?」

「それはね……求婚は急だったのかもしれないけど、婚約したらすぐに結婚という訳でもないんだから、その間に心の準備をすれば大丈夫よ」

アンジェラは手に持っていたカップを思い切りテーブルに叩きつけたい衝動を抑え、なんとか答える。

「わたしはまだ求婚はされてないわ」

「まあ、それは違うわ。わたくしに求婚することをお許し頂きたいと申し出られたのだから、求婚されたも同然よ」
母は嬉しくて仕方がないといった面持ちだ。

もう嫌だ、こんな会話。
お母様はわたしが結婚をして、侯爵家の跡取りを生んで、そしてわたしが社交界の華と謳われることを夢見ている。侯爵のせいで、母は急に変わってしまった。

アンジェラは無意味な会話を早急に切り上げ、朝食ルームを後にした。

部屋へ戻ったアンジェラはクローゼットの中から、適当な外着を探しベッドへ、放り投げる。

「マーサ、外出するわ、準備を手伝って」

「お嬢様、外出されるとは…?」
マーサは困惑気味にアンジェラを見ている。

「この屋敷の敷地から出るのよ。いいえ、どこまで行っても敷地からは出られないけど……とにかく、門の外へ出て、とりあえずは教会へ行きたいの」

「そんなこと奥様がお許しに――」

「許す?わたしは結婚させられようとしているのよ、ここからもうすぐ出されるのに、今外へ出られないなんておかしいわ!」
思わずマーサに八つ当たりのような言葉を浴びせる。
「ごめんなさい、マーサ。本当はお母様ではなく、マーサが反対していたのでしょう?わたしの秘密がばれないように、他の人と接触させないようにしていたのでしょう?」

「……ええ、そうです」
マーサは申し訳なさそうに俯く。

「いいの、責めてはないわ。でも、お願い、教会くらいいいでしょ。ボンネットで顔を隠すわ、ね」

マーサは結局折れた。

タータンチェックのドレスにボタンブーツ、顔をすっぽり隠せるほど大きなボンネットを被って、アンジェラの準備は整った。

マーサも連れ立って屋敷を出ようとする。

「マーサ、一人で行ってくるわ」
「お嬢様、いけません。女性が一人で外を歩くなど」

「ふふっ、わたしは女性でもないし、それに朝早くなら教会に一人で出掛けてもいいって知っているのよ」
そう言ってアンジェラは日傘を手に颯爽と屋敷の門をくぐった。

つづく


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